辛坊治郎「この趣旨の判決には大きな意味」 原発事故の東電株主訴訟で旧経営陣に13兆円賠償命令

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キャスターの辛坊治郎が7月13日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演。福島第1原発事故をめぐる東京電力の株主代表訴訟について言及した。

辛坊治郎「この趣旨の判決には大きな意味」 原発事故の東電株主訴訟で旧経営陣に13兆円賠償命令

【原発事故、13兆円賠償命令】東京電力福島第1原発事故を巡る株主代表訴訟の判決後、東京地裁前で「株主勝利」などと書かれた紙を掲げる原告ら=2022年7月13日午後 写真提供:共同通信社

福島第1原発の事故をめぐって、東京電力の株主が旧経営陣5人に対し約22兆円の損害賠償を求めた株主代表訴訟の判決が13日、言い渡された。東京地裁は、旧経営陣4人について経営責任を認め、13兆3210億円の損害賠償を命じた。原発事故をめぐり、旧経営陣の民事上の責任を認めた司法判断は初めて。

辛坊)このニュースは、原発事故で被害に遭った人たちが「賠償しろ」と言って訴えた裁判の判決のように聞こえてしまう人もいるかもしれません。そうした裁判は過去にたくさん起こされていて、まだ最終的に確定してないものもありますが、概ね確定しています。東京電力自体の責任は証明済みであり、東電は既に合計10兆円くらいを被害に遭った住民らに支払っています。原発事故を起こすと、どれほど高額な賠償金が必要になるかが分かります。

しかし、今回判決が出た裁判は、そうした類のものではありません。どういう裁判かというと、東電の株主が当時の経営陣を訴えたものです。といっても、「原発事故が起きたせいで株価が下がった。どうしてくれるんだ。損失を賠償しろ」という訴えでもありません。そもそも、株式は基本的に有限責任といって、その株価を上限に責任を負うという法律的な位置付けですから、経営の失敗で株価が下がったとしても、それは投資家の判断ミスということになります。

一方、経営陣に明らかな違法行為があり、それにより株主が損害を被った場合、会社は経営陣に対して訴えを起こせます。会社は株主が持っているものですからね。つまり、本来であれば東電という会社として旧経営陣に損害賠償を請求しなければならなかったのに怠っていたので、株主として会社に代わって損害賠償を請求したという裁判なんです。果たしてその訴えが認められるかどうかということで大変に注目されていたわけですが、その判決が出ました。

訴えられていたのは当時の会長、社長、副社長2人に常務を合わせた旧経営陣5人だったのですが、判決では常務を除いた残りの4人に対し合計約13兆円超の支払いを命じました。とはいっても、実際には支払える額ではないでしょう。東電幹部ならそれなりの報酬をもらっていたはずですが、さすがに無理でしょうね。実効性はない判決といえるのですが、こうした判決が出たことに意味があるんです。

ちなみに、旧経営陣4人が賠償額を支払えるとしても、その賠償額は東電に対して支払われます。そうすると、会社としてとても儲かるので株主の配当も増えるという形では、訴えを起こした株主にメリットがあるかもしれません。しかし、訴えを起こした株主に直接、お金が入るわけではありません。そう考えると、かなり思想的、政策的な意味のある裁判であり、訴えであり、判決であるということがいえます。つまり、「旧経営陣は原発事故を防げたはずだが、それを怠った」という趣旨の判決なので、影響は大きいです。

というのも、当時の経営陣は刑事的な責任の有無も問われています。その刑事裁判は、1審で無罪判決が出ていますが、2審の判決はまだ出ていません。今回の判決は、こうした中でのタイミングで出されたものですから、判決の趣旨が持つ意味はものすごく大きいといえます。もちろん、民事裁判と刑事裁判で同じ傾向の判決が出るとは限りませんから、今回の判決が刑事裁判の判決に直結するわけではありません。

日本の上級審による過去の判決傾向からすると、今回の判決も2審ではひっくり返るのではないかと予想します。しかし、仮に2審でひっくり返らずに最高裁で確定したとしたら、旧経営陣4人は賠償責任を負うことになります。といっても、現実的には支払えませんから、基本的には破産することになるのでしょう。

あくまでも私見ですが、1審だから出せた判決ではないでしょうか。日本の裁判では、2審以上は保守的という言い方が正しいのか常識的という言い方が正しいのか判断が難しいところですが、上級審でひっくり返るというのが常ではありますからね。今回、1審で「原発事故は旧経営陣がしっかりしていたら防げたはずだ」という趣旨の判決を出したことに最大の意味があります。

番組情報

辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!

月~木曜日 15時30分~17時30分 

番組HP

辛坊治郎さんが政治・経済・文化・社会・芸能まで、きょう一日のニュースの中から独自の視点でズームし、いま一番気になる話題を忖度なく語るニュース解説番組です。
[アシスタント]増山さやかアナウンサー(月曜日~木曜日)、飯田浩司アナウンサー(木曜日のみ)

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