アルカイダ・ザワヒリ容疑者が殺害されても変わらないアフガニスタン 米軍撤退から間もなく1年

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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が8月12日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。バイデン大統領が発表したアルカイダのザワヒリ容疑者殺害について解説した。

アフガニスタン東部ジャララバードに入った反政府勢力タリバンの戦闘員ら。=2021年8月15日 AFP=時事 写真提供:時事通信

米軍のアフガニスタン撤退から間もなく1年 ~ウクライナ戦争が起き、ペロシ氏が訪台し、それに中国が過剰反応

8月30日で米軍のアフガニスタン撤退が完了してから1年が経とうとしているが、アメリカのバイデン大統領は8月1日、国際テロ組織アルカイダの指導者アイマン・ザワヒリ容疑者をドローン攻撃で殺害したと明らかにした。ザワヒリ容疑者はアルカイダの指導者であったウサマ・ビンラディン容疑者が米軍に殺害されたあと、11年間にわたってアルカイダの国際的シンボルとして存在感を保っていた。

飯田)アフガニスタンから撤退したのは去年(2021年)のこの時期です。

宮家)この1年で一体何が起きましたか? 米軍がアフガニスタンから撤退して、米露首脳会談があったにもかかわらず、ウクライナ戦争が起きた。欧州でまったく終わりが見えない上にアジアではペロシ下院議長が台湾に行って、中国がそれに過剰反応する。この一連の動きに因果関係があるとは言わないけれども、これは1つの流れだと見ています。

飯田)1つの流れだと。

宮家)アメリカがアフガニスタンから出ていくということは、当然、インド太平洋地域に中国の脅威があるからです。プーチンさんはそれを見ていて「そうか、そろそろアメリカも中東から出ていくのか。しかし、アメリカには二正面作戦、三正面作戦を行う力はないだろう。となるとアフガニスタンにも力の真空ができるし、それは東欧にも、つまりロシアの正面にあるNATO方面にも真空ができるだろう。ならば1991年のソ連崩壊以来、ずっと我慢してきた歴史的屈辱を今こそ晴らそう。NATOが拡大してウクライナまで取る? 冗談ではない」という気持ちになってもおかしくないと思います。

世界の政治指導者が判断ミスを犯す ~これからさらに難しい判断ミスが繰り返される可能性も

宮家)いつも思うのですが、こういう状況は1930年代に似ていて、世界の政治指導者たちが間違いを犯す。勢いと偶然と判断ミスを繰り返す。それが始まってしまったと思うのです。

飯田)世界の政治指導者たちが犯す間違いが。

宮家)典型的な例が米軍のアフガン撤退です。もっとも決めたのはバイデンさんではなく、トランプさんですが。米軍が20年戦って戦果がないのだから、出て行くのは当たり前なのだけれども、その意味では、この1年は「まずい1年」だったなと思うのです。これは序の口で、これからもっと難しい判断ミスが繰り返されるのではないかと恐れています。

ザワヒリ容疑者が殺害されてもアフガニスタンは変わらない ~テロはこれからも続く

宮家)私はよく「力の真空」理論という言葉を使います。どこかの地域でパワーがなくなると力の真空ができます。そうすると、周りの得体の知れない人たちがそこに入っていく。

飯田)獲りにいこうとする。

宮家)同じようにアフガニスタンから米軍が撤退すれば、当然、力の真空が生まれます。そこでタリバンがそれを埋めたわけです。

飯田)真空に。

宮家)しかし、タリバンは全土をしっかりと統治することはできません。だからまだアルカイダが残っているわけです。今回のアメリカのやり方がいいか悪いかという議論はあると思いますけれども、これが何を象徴しているかと言えば、やはり「アフガニスタンは変わらない」ということですよ。

飯田)変わらない。

宮家)この地では間違いなく「力の真空」状態が続きますから、世界中のテロリストからすれば聖地、もしくは聖域になります。当然のことながら、アルカイダは生き残る。アイマン・ザワヒリ容疑者はエジプト人ですけれども、この人がいなくなったことで、アメリカの「テロとの闘い」は象徴的には終わったかも知れません。しかし、アルカイダは生き残ります。

飯田)そうすると、ここで訓練した新たなテロリストたちが。

宮家)どこかでテロを起こすと思います。ただ、2001年の……。

飯田)9.11。

宮家)あのときに比べたら、アメリカ側も国内でいろいろな情報網や防御システムをつくっていますから、2001年のようなことが繰り返される可能性は低いかも知れません。しかしテロは絶対に続きます。残念ですけれどもね。

アメリカを過小評価してはいけない

飯田)この判断ミスとテロが続くというところで、アメリカはジワジワと力を落としていく形になるのですか?

宮家)モグラ叩きのようなもので、全部同時に叩くわけにはいかないから、1個ずつ対応していかざるを得ない。アメリカの力が衰えたということは、相対的に中国の力が高まっているのかも知れません。しかし、アメリカの力を過小評価するのはよくないと思います。あんなに資源の多い大陸に、たった3億人しか住んでいないのですから。その力は絶対に過小評価すべきではないと思います。

飯田)むしろ過小評価して挑戦しようとすると……。

宮家)それは1930年代に日本がやったことでしょう。中国は同じことを繰り返そうとしているわけではないだろうけれども、図らずも繰り返そうとしているとしたら、悲劇ですよね。そうならないようにしなければいけません。

「普遍的な価値」と「力による現状変更の拒否」を頑張って維持していく

飯田)日本としては、そうならないように動く。

宮家)抑止する。同時に私は「国際社会の1丁目1番地」とよく言いますけれども、「普遍的な価値」と「力による現状変更の拒否」、この2つを頑張って唱え続けるしかありません。それは日本が生き残る唯一の方策だと思います。

飯田)「自由で開かれたインド太平洋」を維持していく。

宮家)日本は海洋国家であり、貿易立国なのですから、自由で開かれた場所が多いほど有利ということです。

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