数量政策学者の高橋洋一が8月24日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。日華懇会長の訪台、また中国経済の実情について解説した。
古屋日華懇会長が台湾訪問、蔡総統と会談
超党派の議員連盟「日華議員懇談会」会長の自民党・古屋圭司衆議院議員が台湾を訪れ、8月23日に蔡英文総統と会談した。会談では中国による台湾近海の軍事演習が台湾や地域の脅威だとの認識で一致し、日台の協力を深める必要性を確認した。
飯田)ペロシ下院議長の訪台があり、それを受けて中国が軍事演習を行いました。日本の排他的経済水域にもミサイルが撃ち込まれましたから、日台で協力を深めるということは、当然と言えば当然ですが。
高橋)中国国内で言うと北戴河会議があって、あとは共産党大会が控えています。
飯田)10月の終わりなのか、11月なのかと言われています。
高橋)中国のスケジュールはわかりません。北戴河会議もやっているのかやっていないのかわからないですしね。
飯田)公式には何の発表もないですからね。
中国共産党大会を控えたこの時期に各国が台湾へのサポートをアピールするのは効果的 ~習近平氏の3期目となれば、「台湾統一」が必然となる
高橋)そういう時期だからこそ、各国の議員が行くということに中国は神経質になっているのです。逆に言うと、中国からすればいい口実であり、習近平さんは3選されることになるのではないでしょうか。
飯田)そうですか?
高橋)こういう状況になると、ある程度、対決になるのは仕方がないでしょう。そうなると習近平さん以外は出てこないと思います。「共産党大会が終わったあと、どうなるのだろう」とは思いますが。本当に「台湾統一」という話にしないと、習近平さんも大変になるでしょうからね。
飯田)国内的に突き上げられる。
高橋)そうでしょうね。ですから、ますます大変になります。この時期にいろいろな国が連携して台湾をサポートするのは、よろしいのではないでしょうか。
飯田)アメリカはインディアナ州の州知事が訪台したり、いろいろなレベルで交流しています。
有事の場合、アメリカが本当に来るのか懐疑的な台湾世論 ~日本には期待
高橋)アメリカがどこまで台湾にコミットするかどうか、不透明なところがある。太平洋の西ですからね。有事となれば当然、日本がまず行くことになるでしょう。
飯田)台湾の世論調査などを見ると、アメリカに対してコミットの部分で懐疑的なところがある一方、日本に対する期待が相当高いということです。
高橋)アメリカは太平洋を挟んで距離が遠いから、本当に来るのかどうか不安なのでしょう。ウクライナのように全然関係がないわけではないけれど、ウクライナとアメリカのことと、台湾とアメリカのことというのは……。
飯田)まったく違うわけではない。
アメリカのウクライナへの支援を見ている台湾
高橋)似ていますよね。アメリカはウクライナに対して武器支援はするけれど、それ以上のサポートはしていません。しかも均衡するような武器支援しかしないですよね。だから台湾もそういうことを恐れているのかも知れません。
飯田)そうなると長期戦になって、いたずらに台湾側の犠牲も増えてしまうのではないかと。
高橋)台湾には親中の人も多いですから。
飯田)内側から突き崩される可能性もある。
高橋)そういう可能性もありますよね。
アメリカと同盟関係ではない台湾の不安
飯田)肯定的にとらえればウクライナとは違って、台湾との間には台湾関係法という法律があります。「曖昧戦略」と言いながら、バイデン大統領は台湾防衛の軍事的な関与について「イエス」と言ったと。
高橋)そうですね。だから違うと言えば違うのだけれど、ウクライナについても武器貸与法があるでしょう。同盟関係がないという意味では、似ていると言えば似ているのです。台湾から見れば同盟関係がないから、不安なところもあるのではないですかね。
台湾有事の場合、「まず日本が頑張れ」という考えのアメリカ
飯田)他方、そこに日本というアクターが絡んできます。かつて安倍元総理が「台湾有事は日本有事である」と言った。日本有事となった場合には、アメリカの関わり方は当然変わってくるわけですよね。
高橋)変わってくるでしょうが、まずは「日本が頑張れ」という方針でしょう。日本人の代わりにアメリカ人が血を流すことはしないと思います。
飯田)日本が前に出るのであれば、我々も前に出るという感じ。
「長射程の巡航ミサイル」でもあった方が抑止力になる
高橋)今回の防衛費に関して、1000発くらいの「スタンド・オフ・ミサイル」の話がありますよね。
飯田)長射程の巡航ミサイル保有について。
高橋)あった方が抑止力にはなりますね。向こうは2000発ほど持っているわけですから。おまけに核弾頭付きのものをね。
飯田)しかも向こうは弾道ミサイルです。
高橋)長射程とは全然違い、弾道ミサイルはあっという間に来ますからね。こちらの長射程の巡航ミサイルは撃ち落とされる確率が高いです。
飯田)こちらの巡航ミサイルは。
高橋)ゆっくりですから、普通の飛行機とほとんど一緒ですよ。
飯田)弾道ミサイルのように大気圏外まで行って落ちてくるようなものではない。
高橋)全然違います。しかし、ないよりはいいのかも知れません。1000発持って、「いざというときには習近平を狙うぞ」という形のものがあった方が、抑止力が働くのではないでしょうか。
飯田)巡航ミサイルでも。
高橋)中国は台湾統一の野望を消しません。「5つの核心的利益」というものがあって、ウイグル、チベット、南シナ海、香港、そして台湾と尖閣です。5つのうち、3つに関しては実行したのですから、残り2つも対応するでしょうね。台湾と尖閣は、中国から見るロジックとしては台湾の一部が尖閣だということです。ですから、攻めるときには同時に来ます。
中国経済は成長していない ~中国の2022年上半期の輸入統計はマイナス
飯田)他方、足元の中国の経済状況なのですけれども、利下げが発表されたばかりです。
高橋)中国の統計はどこまでが本当の数字かわかりません。数量政策学者としては非常につらいのです。統計がすべて信じられず、唯一信じられるのは輸入統計だけなのです。輸入統計は輸出統計の世界があるから、それと照らし合わせると、それほど嘘ではないことがわかります。
飯田)輸入統計だけは。
高橋)でも輸入量を見ていると、7月は少しプラスだったのですが、その前はずっとマイナスです。6月も少しプラスかな。でも上半期はマイナスです。
飯田)上半期はマイナス。
高橋)輸入統計がマイナスということは、外国産のものに対する消費が少ないという意味で、国内産の消費は消費になるのです。外国産の消費は輸入に反映します。そこから考えると、国内所得はあまり高くないと予測することができる。そうすると、GDPは伸びていません。
飯田)内需が相当冷え込んでいると。
高橋)冷え込んでいるから輸入が落ちるのです。これは経済理論なので、そこからある程度は逆算できます。そう考えると、中国経済は成長していません。
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