「ポストコロナ」についていけない日本 ~いま何をするのがベストかは政治が決めること

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慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授の土屋大洋が8月25日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。岸田総理が表明した新型コロナの全数把握の見直し、また入国時の陰性証明免除について解説した。

【新型コロナ・豊中市保健所】新型コロナの対応に追われる職員ら=2022年8月24日午後、大阪府豊中市の同市保健所 写真提供:産経新聞社

岸田総理、コロナ全数把握の見直しと入国時の陰性証明の免除を表明

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岸田総理)発熱外来や保健所業務が相当にひっ迫した地域においては、緊急避難措置として、自治体の判断で患者届け出の範囲を高齢者、入院を要する者、重症リスクがあり治療薬投与等が必要な方などに限定することを可能といたします。

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飯田)全数把握の見直しについて、8月24日に総理官邸で行われたオンライン取材に答える岸田総理のコメントでした。自治体の判断で届け出の範囲を高齢者らに限定することを可能とする点。それから水際対策については、日本への入国、帰国時に求めている72時間以内の検査に関して、ワクチンを3回接種済みであることを条件に免除する方針が出てきています。以前から報道されていたことですが、総理からの表明となりました。この点をどうご覧になりますか?

土屋)保健所や、入力作業をしなければいけない病院の先生たちに、かなりの負担がかかっているのは事実だと思います。研究者としては、本当は全数把握を続けて欲しいところがあります。後年、「新型コロナとは何だったのか」ということを検証するときには、正確な数字を残しておきたいという気持ちはあります。

「この瞬間に何をすることがベストか」を政治が決めるべき

土屋)ただ、そんな研究者のマインドよりも命を救うことの方が重要ですから、いま病院が回らないということであれば、致し方ないことだと思います。これは政治が決めなければいけない決断だったのではないかと思います。

飯田)政治判断で。

土屋)いい側面、悪い側面があると思いますが、「この瞬間にいま何をすることがベストか」ということを考えなければいけない。それは政治が決めることだと思うのです。岸田総理がこの状況を総合的に判断して、そうせざるを得ないということであれば、それは必要なことなのだと思います。

全数把握疾患でありながら、「ほとんど陽性者には保健所は関わっていない」のが現実

飯田)現場の声も届いております。千葉県茂原市の“スー”さんから。「保健所で働いています。新型コロナは全数把握疾患でありながら、ほとんど陽性者には保健所は関わっていないのです。と言うのも、国からHER-SYS(オンライン上での患者の登録、管理をするという仕組み)で通知が入り、ショートメールで療養についての説明がいきます。HER-SYSで健康観察ができている人に関しては、保健所から連絡をしていません。というよりも、患者さんが多くてできないというのが現状です。高齢者など体調を崩した方の入院調整に時間が掛かるため、その業務に追われています。また、高齢者施設などではクラスターが発生していて、感染拡大防止の指導に追われているのが現状です」といただきました。今回の方針の変更は、こうなっている現状にある意味、合わせていくという側面もあったわけですかね。

土屋)パンデミックが起こることを前提に保健所はつくられていません。もう2~3年経ったのですから、それに対応しておけという意見もあるかも知れませんが、保健所でいま働きたいという人はなかなかいないわけです。

保健所のキャパシティも限界にきている

土屋)人員の補充もできていない。現状の人員で対応しなければいけないことを考えると、キャパシティが限界にきているという感じはします。

飯田)「人が足りないのであれば、増やせばいいではないか」という意見もあるかも知れませんが、感染症専門でやるとなると、代わりを立てにくい。人は一朝一夕では育たないですよね。

土屋)それに、感染した方々からすると、いま瞬間的に何とかして欲しいから電話を掛けてくるわけです。そういう人たちはなかなか電話がつながらず、イライラしてしまっていて、その怒りをぶつけられてしまうこともある。対応している保健所の方々も、親切に素早くというのは大変だと思うのです。こういう危機のとき、人間の心を落ち着かせることは難しいですから、保健所で働き続けたい、いま働きたいという人はなかなか出てこないと思うのです。

海外から見ると日本はポストコロナについていけていない

飯田)水際対策に関して、“カンカン”さんという方からメールをいただいております。アフリカのケニアに駐在して5年目という方です。「先々週、3年ぶりに日本に一時帰国しました。6年ぶりに親戚のいるタイにも訪問したのですが、この短期間に3ヵ国を経験し、『日本がポストコロナから置いていかれているな』ということを痛感しました。私が住んでいるケニアでは、今年(2022年)の初めごろから新型コロナはほぼ風邪扱いです。マスクのない生活が当たり前で、ワクチン3回接種のみが入国の制限となっています。欧米からの観光客もかなり戻ってきています。タイも8月頭から、ほぼ入国制限のない状態で、有名観光地のカオサン通りは外国人観光客でどんちゃん騒ぎでした。日本のみがPCR、陰性証明を求められていて、テレビのニュースを見ていても未だにコロナ関連がヘッドライン扱い。このままだとポストコロナについていけず、経済が停滞してしまいます」といただきました。土屋さんも海外との行き来が学術関係ではありますよね。

土屋)私は研究調査ということではなく、大学の業務で何回かコロナ禍での出張がありました。アメリカにも行きましたし、ヨーロッパやシンガポールにも行きました。いまのお話にあった通り、欧米諸国はマスクを取ってしまっています。

飯田)欧米では。

土屋)私も相手の大学を訪問したりすると、「日本人が来た」と言って、向こうも「マスクはどこだっけ」とマスクをつけてくれるのです。しかし、普段の彼らはまったくつけない状態で授業を行っていますし、活動しているわけです。

飯田)日本人が来たからマスクをしろと。

土屋)シンガポールは別で、ホテルで会議があったのですが、「みんなマスクをしてください」と欧米から来た人たちにもマスクを義務付けていました。国によって状況が違うのだと思います。シンガポールは衛生に関する感度が高い国ですから、割と日本に似ていると思います。日本の場合は、皆さん本当に衛生意識が高いですし、感染対策の徹底をずっと言われてきましたから、多くの方が徹底したのでしょう。その結果、集団免疫につながるプロセスに時間が掛かっているのだと思います。

飯田)集団免疫につながるプロセスに。

土屋)でも、みんな対策をいい加減にして、もっとたくさんの方が亡くなってもよかったのかと言うと、そんなことはないと思います。日本のよい行いが、時間が掛かる方向に動いてしまっているとは思うのです。

海外では空港の近くに検査するところがない

土屋)ただ、海外に行っている人たちが帰ってくるときには、本当に72時間以内の検査を行うのは大変だったのです。最初のうちはいろいろなところで検査してくれたのですが、いまは検査するところが外国にはほとんど残っていません。日本人が「こういう基準で検査してもらわないと帰国できないのです。飛行機に乗れないのです」と言うと、「ああ、日本人ね」と言われたりしました。

飯田)検査するところがもうあまり残っていない。

土屋)最初のうちは、日本政府の特殊なフォーマットで「これにサインしてもらわないとダメだ」と言われましたが、いまは少し緩んでいます。そういうものがなくなれば、行き来は確実に増えると思います。また、1日に入国できる人数の制限が今後緩むということですけれども、まだ上限があるわけですから、完全に前のようには戻ってこないと思います。そこは少しずつ広がっていくのでしょう。

飯田)そうですね。

土屋)本当に苦しんでいる皆さんからすると、「なぜいまここで緩めるのだ」という声もあるかと思いますが、一方では広げていかなければいけない状況もあるわけです。私と研究を一緒にやっているアメリカ人の方も、「日本に来て調査、研究をしたいのに3年できていない。もういい加減にしてくれ」ということを、毎週のようにメールで送ってきます。「アメリカと日本では状況が違う」と一生懸命説明しているのですが、諸外国からすると日本はやりすぎのように見えているとは思います。

飯田)その辺りの整合性をどうつけるかは、まさに政治決断なわけですね。

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