ロシア国内の平穏な生活を見て怒る「前線から戻った右派の人」たち ~プーチン大統領が戦争をエスカレーションさせる可能性も

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地政学・戦略学者の奥山真司が9月6日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。ウクライナ情勢の今後について解説した。

ロシア国内の平穏な生活を見て怒る「前線から戻った右派の人」たち ~プーチン大統領が戦争をエスカレーションさせる可能性も

ウクライナ南東部マリウポリに展開するロシア兵たち(ウクライナ・マリウポリ)=2022年5月18日 AFP=時事 写真提供:時事通信

ウクライナのゼレンスキー大統領が3ヵ所の集落を奪還したと宣言

ウクライナのゼレンスキー大統領は9月4日のビデオ演説で、ウクライナ軍が南部と東部ドネツク州でロシア軍から計3ヵ所の集落を奪還したと宣言した。ウクライナ軍は8月29日にへルソン州など南部の領土奪還に向け反転攻勢に乗り出しており、戦果を強調することで士気を鼓舞する狙いがあるとみられる。

新行)一方でロシア国内はどうなっているのでしょうか?

「敵はゼレンスキーではなくEU、アメリカと戦っているのだ」という論調に変わってきているロシア国内

奥山)ロシア国内のメディアを見続けている研究者の方が、いいレポートを書いています。その方々の話では「ロシアの国内世論も含めて、識者の論調が変化してきている」という興味深い話をしている人がかなりいます。

新行)論調が変わってきている。

奥山)記事によると、侵攻当初は「ウクライナを懲らしめろ」という意見が多かったわけです。ところが3ヵ月ほどしてからロシア国内での意見が変わり、「西側との文明を掛けた戦いだ」という論調になってきた。「文明を掛けた戦い」ということは、第二次大戦のときにヨーロッパやアメリカが使っていた「シビライゼーションを掛けた戦いだ」という論調と同じです。

新行)第二次世界大戦での。

奥山)最終的には、「いまの敵はゼレンスキーではない」と。ブリュッセル(EU)やワシントンD.C.(アメリカ)と戦っているのだ、という話が出てきています。ここ1ヵ月くらいは「核兵器を使うのだ」という物騒な話も出ています。

新行)そんな話が出てきているのですね。

奥山)ロシア国内の識者側、オピニオンリーダーの人たちは「どんどんやれ」ということになっているのですが、プーチン大統領自身は事態をなるべくエスカレートさせないように、国民に対して「平常生活を送ってくれ」と言っているのです。動員もしていますが、「ステルス動員」という形でなるべく外に見えなくしています。国民には平常生活を送ってもらいたいけれど、戦争もやりたいということです。

ロシア国内の平穏な生活を見て怒る右派の人たち

奥山)そんななかで、右派の人たちが怒っているそうです。現地に行って戦っている人たちが一旦、休暇のような形でモスクワに帰ってきます。そうすると、ロシア国内の生活は普通なのですよ。

新行)ロシア国内の生活は。

奥山)特にモスクワの人たちは、戦争が起きているとは思えないような生活を送っています。「俺たちは命を賭けて戦っているのに、モスクワの人たちは普通の生活を送っている」と。「電動スクーターに乗ってラズベリーフラペチーノを飲んでいるチャラい奴がいる」ということで、右派の人たちが怒っているらしいのです。そこにジレンマがあるのではないかと言われています。

危機感を持つ右派に押され、プーチン大統領がエスカレーションする可能性が潜在的にある厳しい状況

新行)現場の兵士の方と、ロシア国内の国民たちとの間で感覚のズレがあるということですか?

奥山)それに対し、右派側がとても危機感を持っていて、「このままだと俺たちは負けるかも知れない」と感じ始めているのです。

新行)右派の人たちが。

奥山)そのため、「国民に対して世論を喚起していこう」ということになると、プーチン大統領もまずいと思って「エスカレートさせようか」となり、戦争がエスカレートする可能性が潜在的にあるということです。なかなか厳しい状況になっています。

消耗戦となり、長い戦いになる ~ウクライナがロシア側に大きなダメージを与えているわけではない

新行)ゼレンスキー大統領が「3ヵ所の集落を奪還した」と宣言しましたが、ここまでの状況をどうご覧になりますか?

奧山)南部の方で反攻していると言われていますが、奪還した場所は3ヵ所です。1週間くらい前に始まった反攻ですけれども、それほどうまくいっているわけではないようです。

新行)うまくいっているわけではない。

奥山)現状では、後方の基地や補給基地を叩くような状況が続いているだけで、それほどロシア側にダメージを与えられているわけではないと思います。

新行)現状では。

奥山)こうなると完全に消耗戦になります。やはり消耗戦だった独ソ戦の場合を考えると、当時は4年くらい戦っています。「短期的に終わるとは思えない」というのが正直な感想です。

ロシア側が事態をエスカレーションさせて核兵器を使うことが最も怖い

新行)ウクライナに対し、各国がどう支援していくかというのも気になります。

奧山)我慢比べの状態が続いていますが、最も怖いのはロシア国内の世論が吹き上がり、事態をエスカレートさせて「核兵器を使ってしまおう」となることです。

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