ロシア併合のクリミア半島 「ウクライナが奪還をあきらめることはない」防衛研究所幹部

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防衛省防衛研究所防衛政策研究室長の高橋杉雄氏が9月1日、ニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演し、辛坊と対談。2014年にロシアが一方的に併合したクリミア半島について、「ウクライナが奪還をあきらめることはない」との見解を示した。

ロシア併合のクリミア半島 「ウクライナが奪還をあきらめることはない」防衛研究所幹部

ロシアが実効支配するウクライナ南部クリミア半島の町を移動するロシア軍の装甲車両(タス=共同) 撮影: 2022年2月24日 写真提供:共同通信社

辛坊)2014年にロシアが制圧したウクライナの南部のクリミア半島で武器庫の爆発などが起きているので、ウクライナが実質的に攻め込んでいるような気もします。ウクライナはどこまで本気でクリミア半島を取り返すつもりなのでしょうか。

高橋)ウクライナは30年かかろうか50年かかろうが、クリミア半島の奪還をあきらめることはないと思います。ただ、今年中の軍事作戦で奪還しようとすれば、それは物理的に不可能なので、やらないと思います。しかし、この戦争が仮に終わることを考えると、ウクライナは戦争を終える条件としてクリミア半島の返還をまず出しますね。それをロシアが受け入れるかは別の話ですが。

辛坊)ウクライナが今、かろうじて戦えているのは、アメリカ陸軍の高機動ロケット砲システム「ハイマース」を供与してもらっているからです。だから、アメリカが供与をやめた瞬間にウクライナは戦えなくなります。そうすると、アメリカが本音のところで最終的な停戦ラインをどう考えているのかが非常に大きなポイントになると思うのですが、いかがですか。

高橋)アメリカ国内にはいろいろな考え方があります。ただ、前提としては「ウクライナが戦い続ける限りは支える」と考えているでしょう。また、「できるならば、侵攻開始前の2月23日時点に戻したい」とも考えていると思います。しかし、ウクライナが妥協しない限りは、アメリカ側から「現状であきらめろ」と言うことはないと思いますよ。

辛坊)ウクライナが8年前に奪われたクリミア半島の奪還を本気で目指したときに、アメリカはそこまで応援するつもりがあるのでしょうか。

高橋)そのときの状況によると思います。つまり、ロシアが大敗して取り返せる状況だったら、支えるかもしれません。逆に、ウクライナもロシアもボロボロになっていて、奪還なんて無理な状況だったら、支援しないかもしれません。

辛坊)ウクライナが完全に占領地を取り戻し、ロシアの国境すれすれのところにアメリカが供与したハイマースなどを配備したら、アメリカは現実的にロシアを敵に回すことになりますよね。果たして、アメリカのバイデン政権はそこまで認めるのでしょうか。

高橋)そのときの戦略的条件しだいでしょう。私の知人のロシア人専門家は「アメリカの対地攻撃兵器がロシアの都市に届くようになったら、核兵器の出番だ」と平気で言っていますからね。アメリカ側の関わり方も変わってくると思います。

いずれにせよ、停戦協議が行われるのであれば、条件の中で「クリミア半島を返せ」ということになるのか、クリミア半島を協議の対象とするのか、その可能性は否定できないと思います。例えば日本に置き換えてみれば、北方領土の返還をずっとあきらめていないわけですからね。ただ、現段階では最大限の条件を出すということは、戦争をしている国の政治指導者としては理解できます。

番組情報

辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!

月~木曜日 15時30分~17時30分 

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辛坊治郎さんが政治・経済・文化・社会・芸能まで、きょう一日のニュースの中から独自の視点でズームし、いま一番気になる話題を忖度なく語るニュース解説番組です。
[アシスタント]増山さやかアナウンサー(月曜日~木曜日)、飯田浩司アナウンサー(木曜日のみ)

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