ロシア情勢に詳しい筑波大学名誉教授で筑波学院大学教授の中村逸郎氏が8月29日、ニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演し、ジャーナリストの須田慎一郎氏と対談。ロシアのウクライナ侵攻をめぐり、ロシアが兵士不足を補うため、囚人を駆り出そうとしているほか、北朝鮮にも協力を求めている実態について解説した。
須田)クリミアなどロシアの占領地で最近、正面衝突の戦争ではなく爆破事件が起きています。これは、どのように読み解けばよいのでしょうか。
中村)ウクライナのゼレンスキー政権からすれば、ロシアが今回攻め込んできた南部や東部だけではなく、2014年に一方的に併合されたクリミアも一緒に奪い返そうという狙いでしょう。ロシアは国内で反戦運動が強まっていますし、ウクライナへの攻撃も思ったほど進んでいません。ゼレンスキー政権としては一緒に取り返すのは今がチャンスだと考え、クリミアにいろいろなことを仕掛けているのだと思います。また、クリミアにいる反プーチン政権のロシア人が、こうした爆破事件などを起こしていることは十分に考えられます。
須田)そうすると、ロシアの攻勢はかなり強く見えますが、一皮めくってみると意外に足元が揺らいでいるという状況なのでしょうか。
中村)そうです。ロシアの兵士は15万~18万人が前線にいるといわれていますが、アメリカの統計ではすでに7万5000人が負傷、戦死しています。大変な数ですよ。この兵士不足を補うために、ロシアは囚人を最前線に送ろうとしていたり、北朝鮮に協力を依頼したりしているんです。旧ソ連の構成国だった中央アジアのカザフスタンでさえ、ロシア離れが進んでいます。こうした中、プーチン政権は国際的にも国内的にもかなり行き詰まってきていると、私は見ています。
須田)一方のウクライナはどうでしょうか。要求している武器が欧米からあまり提供されていません。戦闘行動がストップしたというようなニュースも入ってきています。決め手に欠いているようにも見えるのですが、ウクライナの置かれている状況はいかがですか。
中村)ウクライナはかなり焦っています。互いに消耗戦になっていますからね。ドイツをはじめヨーロッパの国々はロシアからの天然ガス供給量を減らされ、これから冬場を迎えるにあたり厳しい状況にありますから、武器の提供も難しくなってきています。こうなると、ウクライナはアメリカに頼らざるを得ない状況ですから、ウクライナの欧米に対する姿勢に温度差が表れてきています。
ただ、アメリカがウクライナに武器をどんどん提供すると、ロシアは対抗措置としてヨーロッパへの天然ガス供給などを次々に締め付けていくわけです。つまり、アメリカのバイデン政権にとっても非常に苦しい状況になってきているといえますから、バイデン政権がどう判断するかが注目されます。
番組情報
辛坊治郎さんが政治・経済・文化・社会・芸能まで、きょう一日のニュースの中から独自の視点でズームし、いま一番気になる話題を忖度なく語るニュース解説番組です。
[アシスタント]増山さやかアナウンサー(月曜日~木曜日)、飯田浩司アナウンサー(木曜日のみ)