追い詰められるプーチン大統領 はたして「核兵器を使う」可能性は

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慶應義塾大学教授の廣瀬陽子氏が10月7日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ウクライナ情勢において追い詰められるプーチン大統領について解説した。

2022年4月27日、議会関係者との会合で演説するプーチン大統領=ロシア・サンクトペテルブルク(タス=共同) 写真提供:共同通信社

ロシアがザポロジエ原発を一方的に国有化へ

ロシアのプーチン大統領は10月5日、一方的に併合手続きを完了したウクライナ南部ザポロジエ州にあるザポロジエ原発について、ロシア政府の資産とし、管理を担う国営企業の設立を指示する大統領令に署名した。ロシアが軍事拠点化したヨーロッパ最大の原発の国有化を強行し、併合を国内外に誇示する構えとみられる。

追い詰められているプーチン大統領の焦りの象徴

飯田)一方的な併合というか、不法占拠と呼ぶべきものなのか。プーチン大統領のやり方をどうご覧になりますか?

廣瀬)本当に追い詰められているとしか思えず、いろいろな面で焦りが象徴されているような現象だと思います。

飯田)焦りの部分というのは、やはり最初から掛け違いのようなものがあったわけですか?

廣瀬)最初から掛け違いの連続です。そもそもプーチン大統領は3~4日くらいでキーウが落ちて、ウクライナ全土がロシアのものになる、あるいは物理的にロシアのものにならなくても、精神的にロシアに屈服する。親ロシア的な指導者がトップに立てば、おそらくプーチン大統領の気は済んだのだと思います。

飯田)キーウが落ちて。

廣瀬)しかし、そういう事態になるどころか、ウクライナ全体が反露の方向に強く結束した。そして国際社会がウクライナを支援し、ロシアが苦戦させられるという、まったく想定外の事態に陥ってしまった。それがさらに悪化していったということだと思います。

クリミアの主権をウクライナに認めさせ、東部2州の独立もウクライナに認めさせるという最低ラインがキープされないと、国民に説明がつかない

飯田)部分的な動員令を出しましたが、それが国内的にも不評だという報道もあります。内外ともに追い詰められている感じですか?

廣瀬)内外ともに厳しい状況になっていると思います。9月21日に動員と併合、核の脅しという3点セットを繰り出したわけですが、3つともロシアとしては最後のカードだと思うのです。それを1度に繰り出してしまったということで、本当に追い詰められている様子がよくわかります。

飯田)ロシア側に出口の想定はあるのでしょうか?

廣瀬)おそらくないと思います。状況判断でとりあえず辻褄を合わせるということを、これまでやってきたのだと思いますが、ロシアの状況は悪化するばかりです。

飯田)悪化するばかり。

廣瀬)当初、戦争を始めた経緯としては、ロシアが2014年以来、手をかけてきたウクライナ東部2州がウクライナのネオナチに蹂躙されているので、それを救わなくてはいけないという大義名分でやっていました。

飯田)ロシアの言い分では。

廣瀬)これまで併合してきたクリミアの主権をウクライナに認めさせ、さらに東部2州の独立もウクライナに認めさせるという最低ラインがキープされないと、プーチン大統領としては国民に対し、「なぜこのような強引な戦闘を始めたのか」という説明がつかなくなってしまうのです。そこが最低ラインということで、とりあえずは進めていくのだと思います。

モスクワで「大祖国戦争勝利76周年記念」軍事パレード=2021(令和3)年5月10日 新華社/共同通信イメージズ 写真提供:共同通信社

この泥濘期にロシアが予備軍の訓練をどのくらい行えるかが今後の戦局を左右する

外交評論家・宮家邦彦)四面楚歌ですが、唯一プーチン大統領に味方がいるとしたら、それは冬将軍だと思います。寒くなれば戦闘も進めにくくなります。ウクライナはいつごろから寒くなって、いつごろから戦闘が膠着する可能性があると思われますか?

廣瀬)もう相当寒いと思うのですけれども、寒さの前に泥濘期という、ぬかるみが広がる時期があるのです。秋はウクライナの雨期であり、雨の日々が続きます。水分を含むとどろどろの地面になってしまいますので、戦車などが動ける状態ではありません。

飯田)地面がぬかるんで。

廣瀬)いまは大規模な陸上の戦闘はやりづらい時期だと思います。だから最近、ミサイル攻撃が増えているのでしょう。この1ヵ月を過ぎると、今度は地面が凍ってきます。寒い時期ですけれども、ウクライナもロシアも寒い時期の戦闘には、慣れていると言えば慣れているのです。

飯田)寒さには。

廣瀬)この戦闘が始まった2月も寒い時期でした。地面が凍っている状態だと、戦車などを動かしやすくなります。この泥濘期にどれくらい再配備を整えられるかが両軍のポイントになると思います。

飯田)この時期に。

廣瀬)ロシアは予備軍を大量投入している途中ですが、この期間にどれくらい訓練できるかということも、今後の戦局を大きく左右することになると思います。

停戦したいロシアに対して「プーチン大統領とは交渉しない」という大統領令まで出したゼレンスキー大統領 ~当面戦闘は続く

宮家)ヨーロッパの経済は混乱しますし、「そろそろ停戦したらどうか」と言う人もいるわけです。ロシアが停戦について「言及した、していない」という議論があるけれども、ウクライナは必ずしもそうではないですよね。どうみていらっしゃいますか?

廣瀬)おそらくロシアは停戦したいのだと思います。停戦して、とりあえず再配備する期間が欲しいのでしょう。しかし、ウクライナ側は絶対に停戦を受け入れる状況ではないですし、戦況としてもウクライナ側が有利な展開で進んでいます。さらに欧米の支援も増えてきます。

飯田)ウクライナ側は。

廣瀬)ウクライナとしては、ここで停戦という方針には絶対にならないと思います。さらにゼレンスキー大統領は、「プーチン大統領とは交渉しない」という大統領令まで出しています。すなわち「(相手が)プーチン大統領である限り、絶対に交渉はしない」ということです。可能性があるとすれば、「ロシアの大統領が変われば考えてやる」というぐらいの状況だと思います。当面は厳しい戦闘が続くのではないでしょうか。

それでも約8割のロシア国民がプーチン大統領を支持 ~クーデターが起こる可能性は低い

飯田)大統領が代わる、ロシア国内で何らかの政変が起こる可能性はありますか?

廣瀬)いまのところ可能性は薄いと思います。動員が出てからの数字になるのですけれども、9月末の大統領支持率は77%でした。侵攻が始まってからは8割を超えていましたから、下がったと言えば下がりました。しかし下がったと言っても、やはり77%はあるという見方もできると思います。

飯田)約8割の国民が支持している。

廣瀬)日本や欧米メディアでは、ロシアから逃げる人や反対運動をする人の画像がかなり出てきて、ロシアが全体的に「反プーチン」に向かっているのではないかというような印象を持ちがちですが、他方で、盤石にプーチン大統領を支援する層もいるのです。にわかにクーデターが起きたり、引きずりおろすような動きにはならないと思います。

本音では核を使いたくないプーチン大統領 ~核兵器というオプションは「最後の最後のカード」

宮家)もう1つ、我々が気になるのは、戦術核兵器の使用です。チェチェン共和国の首長が「低出力の核兵器を使う」と言っているではないですか。プーチン大統領の本音があるとしたら、どちらだと思いますか?

廣瀬)プーチン大統領の本音としては、使いたくないでしょう。使えば欧米のリアクションが大きなものになると思います。すぐに核で反撃されるような可能性は低いと思いますが、ハイレベルな通常兵器での反撃がなされる可能性が高いです。やはりNATO・アメリカが入ってきたら、ロシアは太刀打ちできないと思います。

飯田)NATO・アメリカが入ってきたら。

廣瀬)ですので、核は最後の最後のカードだと思います。当面は「部分動員」というカードを最大限に大きく使う。30万人という数字を出してはいますが、それは名目的なことで、「部分的」と言いつつ、ほぼ総動員の形で人員をつぎ込むと思います。やれるところまでやって、いよいよという状況になったときに核兵器というオプションが出てくるのではないでしょうか。

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