毎日新聞・中国総局長の米村耕一氏が10月13日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。中国・習近平国家主席の3期目への動きについて現地から語った。
中国7中総会が閉幕、習近平国家主席への忠誠表明を強調
10月16日に開幕する中国共産党大会の準備を行う、第19期中央委員会第7回総会(7中総会)が10月12日、党の最高規則である「党規約」の改正案などを承認して閉幕した。閉幕後に発表された総会声明によると、習近平国家主席への忠誠を意味する「二つの確立」の重要性を強調しており、党の規約に盛り込まれる見通し。
飯田)習氏の党内での核心的地位と、思想の指導的地位の確立を意味するということです。いまの北京市内の様子はいかがでしょうか?
米村)10月16日から始まる党大会一色という感じです。「党大会を歓迎します」という標語があちこちに貼られていますし、警備も厳しくなっています。10月12日に7中総会が終わったのですが、開催されている北京市内のホテルの周りでは、散歩している人でも身分証をチェックされるような厳戒態勢でした。
飯田)現地では、7中総会に関する報道はされているのですか?
米村)されています。12日夕方に会議の結果が報道されていました。
一般庶民の支持率は高い習近平氏
飯田)「習近平国家主席への忠誠」が強調されていましたが、習近平さんを持ち上げるような動きは、いろいろなところで見られますか?
米村)いまの最高指導者ですから不思議なことでもないのですが、他方、日本のメディアでも多く報じられているように、従来の慣例通りである2期10年ではなく3期目に入っていくことについては、中国の一般の方々もそう思っているような感じです。
飯田)習近平氏の10年間の成果を示す展覧会も行われたということですが。
米村)9月下旬に始まり、9月27日に習近平さん自身が展覧会を見に行ったことも報じられました。私たち外国メディアも、10月12日の午前中に見ることができました。
飯田)外国のメディアも。
米村)習近平さんの10年間の成果を「これでもか」というくらい見せている展示です。経済や科学技術力の成長、貧困対策などの成果を並べている一方、8月上旬に台湾周辺へミサイルを撃ち込んで日本のEEZ内に入った軍事演習がありましたが、あの軍事演習も習近平さんの大きな成果の1つとされ、軍人が使った双眼鏡などが早くも展示されていました。
飯田)「世界の強国に」というところも含めて、野心は3期目に入ったあとも止まりはしないのでしょうか?
米村)そこが私たちの関心のあるポイントですし、中国の知識人の方々も注目しているところです。
飯田)中国国内の知識人も。
米村)習近平さん自身が「汚職撲滅」を大々的に宣伝しているので、中国の一般庶民からすると水戸黄門のような、「威張っている悪い人たちをやっつけてくれた」という印象があります。もし世論調査を行ったとしたら、実は支持率が高い人なのです。
「大国としての中国の地位が大事」とする習近平氏 ~経済に悪影響となり、アメリカとの対立も強くなると心配する知識人
米村)他方、知識人の方々は、習近平さんのやり方には不安感を持っています。少なくともこれまでの指導者は、政治で「経済か安全保障か」という場合、経済を重視してきました。経済を重視する場合、アメリカと全面的に対立するのは「まずい」と考えるのですが、どうも習近平さんは「経済よりも政治は安全保障である」と。
飯田)経済よりも安全保障を。
米村)中国の「大国としての地位が大事なのだ」という理念を強調する方向にいくのではないかとみられています。そうすると、中国の経済にもよくない影響があるし、アメリカとの対立も強くなるという心配を、非公式の場で打ち明ける知識人の方も多いです。
党大会の演説で「共同富裕」を強調するのか、弱めるのか ~今後の方向性を示す
飯田)経済の部分では「共同富裕」というキーワードが出て、ある意味、内向きな部分があるようにも見えるのですが、3期目はその方向性がより深まっていきますか?
米村)いまの流れだと、深まっていく可能性が高いと思います。ただ、コロナ禍の影響もあって、経済成長が大きく落ちています。そういう状況のなかで共同富裕というと、中国の知識人からすれば大企業家たちとセットで考えられることが多いのです。共同富裕という言葉も去年(2021年)よりは、公式報道のなかで使われる頻度が減っていると言われています。
飯田)減っている。
米村)ですので、10月16日に始まる党大会で習近平さんが演説するのですが、そこで共同富裕をどのくらい強調するのか、それとも弱めに表現するのか。それが今後の習近平政策の信号弾になるという見方も多いです。私たちもそこに注目してみようと思います。
ウクライナ情勢が中国の台湾政策にも大きく影響
飯田)演説のなかで台湾についてどう言及するのか、憶測等はあるのですか?
米村)いままで通り「祖国統一も重要だけれど、平和統一が基本だ」と言うのではないでしょうか。
飯田)平和統一が。
米村)中国国内でも、ウクライナ情勢と関連させて台湾問題を語る人もいます。ウクライナ情勢では、ロシアの立場が厳しくなっています。もしロシアがボロ負けすると、プーチン大統領の立場も難しくなる。そういう状況をおそらく中国の指導者もよく見ているはずです。結果によっては、中国の台湾政策についても大きな影響を与えるだろうと考える専門家の人たちもいます。
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