ここ10年で「中国が危ない時期を迎える」 歴史的な裏付け

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地政学・戦略学者の奥山真司が11月1日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。3期目に入った中国・習近平政権について解説した。

「烈士記念日」の式典に臨む中国の習近平国家主席 2022年9月30日(共同)

米中外相電話会談、対面での首脳会談を調整か

アメリカの外務省にあたる国務省は10月30日、ブリンケン国務長官が中国の王毅国務委員兼外相と電話会談を行ったと発表した。アメリカのバイデン大統領は、11月にインドネシアで開かれる20ヵ国・地域首脳会議(G20サミット)などに出席する予定で、就任後初となる中国の習近平国家主席との対面による会談の実現に向けた調整を進めたと見られる。

飯田)ブリンケン氏は自身のツイッターで王毅氏と電話会談したことを明かし、「米中間の競争を、責任を持って管理する取り組みについて協議した」と説明したそうです。米中関係ですが、習近平政権が3期目に入り、フェーズが変わったのでしょうか?

奥山)まだ見えてこない部分もあります。外交筋は今回、会談を行う前提で準備が進められているということなので、一応、習近平さんとバイデンさんの会談は実施されるのかなと思います。首脳会談は行った方がいいと思います。

飯田)そうですね。

奥山)ただ、これから警戒しなければいけないのは、中国側、習近平さんが胡錦濤さんをわざと海外メディアの前で引き落としてしまうという、ショーのようなものをやってしまったということです。

習近平独裁体制に権力が集中することを「海外がどう見るか」には関心がない中国

奥山)中国側は、習近平独裁体制に権力が集中していく部分が「海外にはどう映るのか」というところに、あまり関心がないのではないでしょうか。

飯田)国内の政争にフォーカスして。

奥山)海外にどう受け止められるのかというところを、無神経とまでは言いませんが、気にしていないところが少し「怖いな」と思います。

飯田)大国意識のようなものなのでしょうか?

奥山)それはあると思います。大国が自分たちの国内問題だけで忙しくなってしまって、「外はどのように感じているのか」がわからないというところはあると思います。

「自分たちは大きい国なのだから、こちらの事情もお前たちはわかってくれるよな」と考えてしまい、相手に反発を与えてしまう

飯田)「どう見られたって自分たちは平気だ」ということですか?

奥山)「自分たちは大きい国なのだから、こちらの事情もお前たちはわかってくれるよな」と考えてしまうパターンです。大国になると、どうしてもそのような意識が強くなって、独善的になってしまいます。それで逆に相手に反発を与えてしまっている、というメカニズムが見えてきている部分はあります。

飯田)確かにここ10年ぐらいの経済成長もそうですが、それに伴った東アジアや周りの国々、南シナ海に対しての傍若無人な振る舞い方には、そのようなところがあるのでしょうか?

奥山)いままで我慢していた分、力が強くなってきたので、「いいだろう」と思うところはあるのかも知れません。どんな国でも、大国にはそのようなところがあるのですが、こと中国に関しては国内の権力闘争が激しいので、それをこのように解消してしまいました、と習近平さんは見せてしまったようなところがあります。

飯田)国内の激しい権力闘争を。

習近平独裁体制が今後、どのようなハレーションを起こしていくか

奥山)それがどのようにハレーションを起こしていくのか……。海外は今回のことをきちんと見ているので、「中国はやはり独裁でいくのか。これはまずいよね」という話が出てくるのです。

飯田)最近そのようなニュースが多いですよね。

ここ10年で中国はこれから危ない時期になる ~「デンジャーゾーン」に入る中国

奥山)現在、『デンジャー・ゾーン』という本を翻訳しています。アメリカの若い戦略家のハル・ブランズさんとマイケル・ベックレーさんという学者の方の本なのですが、いまワシントン界隈ではこの本がかなり読まれているようです。

飯田)ワシントン界隈で。

奥山)「中国はこれから危なくなるぞ」という内容です。『デンジャー・ゾーン』という名前も、何がデンジャーゾーンなのかと言うと、「中国がこれから危ない時期になるよ」と。その危ない時期がここ10年ぐらいにあるので、そこがデンジャーゾーンなのです。

飯田)ここ10年が。

奥山)なぜかと言うと、いま中国は経済的に少し落ち始めているではないですか。上海はロックダウンしましたし、習近平氏の今回の党大会の体制を見ていても、経済の方をしっかりやるというよりは、とにかく引き締めをしっかりやるというような印象を受けます。

飯田)トップ7の顔ぶれもそうですよね。

奥山)そうすると経済的にも落ち込むので、中国国内に不満が溜まります。不満は溜まっていくのですが、習近平さんが「中国自身はまだまだできる」と思ってしまっている。そうなると、「自分たちは周りに囲まれているから危ない」と思ったときに、大国は打破しようと考えがちになるのです。

飯田)周りに対して疑心暗鬼になってしまう。

第20回中国共産党大会の閉幕式で、退席する胡錦濤前総書記(中央)。左端は習近平総書記=2022年10月22日、北京の人民大会堂(共同)

「まだまだできる」と思っているときに経済が下がり、焦りから海外に対して無謀なことを行う

奥山)疑心暗鬼になってしまいますし、自分たちにはまだまだ力があると思ってしまう。経済はまだこれから伸びるし、国力も上がると思いきや、「下がり始めているぞ、まずいのではないか」と焦り始めて、いろいろ危ないことをしてしまう。そのようなところが見えてくるのです。「危ないな」と思ったときに、いろいろと冒険的なことを海外に対して行うので、「そこがデンジャーゾーンなのだ」と本のなかでは書かれているのです。

飯田)歴史的に見て、同じ道を辿った国はありますか?

奥山)実は日本もそうです。主に1930年代~1940年代にかけての日本ですね。アメリカに包囲されてしまって、最終的に「アメリカを打破するには真珠湾攻撃をするしかない」と考え、1941年に日本は実行してしまいました。そのときのメカニズムと実は同じだという話をしています。

日本のバブル崩壊後に似ている現在の中国 ~経済成長も止まり

飯田)日本でも最近、巡航ミサイル「トマホーク」を買うべきなのではないかという話や、艦艇などに実は弾薬が足りないという話など、いろいろな話が出てきています。

奥山)この本でもやはり中国は危ないと言っていて、ここでは「ピーキング・パワー」という特殊な言葉を使っています。

飯田)ピーキング・パワー。

奥山)中国はここ30年、伸び続けてきました。「この成長はいつ止まるのか?」というところがあったのですが、ここ2年くらいを見ると、どうもうまくいっていない。「日本のバブル崩壊のときと同じなのではないか」と見ている識者も増えてきました。実際に新型コロナ対策として上海などでロックダウンをしていますし、経済活動において、以前のようにオープンにするつもりも習近平氏にはないという状況です。

飯田)そうですね。

奥山)そうなると、経済力はかなり停滞してしまう。成長率も以前のように8%などは難しくなってきて、まさにバブル崩壊後の日本のようになるのではないかということです。

ピークから落ち始めた中国が「チャンスはまだある」と勘違いして無謀なことをする可能性も ~戦前の日本同様に

奥山)大国の場合は、上がってきた経済力が停滞し始め、「危ないのではないか」という認識が出てくると焦り初めてしまう。そして海外に対し、「まだチャンスがあるのだ」と思って打破しようと、いろいろなことをやってしまうということを解説しています。

飯田)打破しようとして。

奥山)ピークを迎えて落ち始めた国が、「まだチャンスはある」と勘違いしてしまう。戦前の日本もそうでしたし、戦前のドイツがまさにそうだった、と解説しています。歴史的な例を使って、これから危なくなると指摘しています。

飯田)これから危なくなると。

奥山)どのように危なくなるのかと言うと、中国は経済も落ちているのですが、敵をつくるような行為もしていて、周りを警戒させてしまっています。周りに対しても「自分たちはまだ強いのだ、打破できるのだ」と無茶するのではないかということを、日本とドイツの例を引き出して解説しています。

日本の政治家もデンジャーゾーンの時代に入ったことを察してきた

奥山)実際に習近平体制ができてくると、確かに我々としても警戒します。おそらく、いま日本政府の安全保障関係の方々はウォーゲームなどを行うことによって、「台湾有事は危ない」という認識が上層部の方には出てきたのではないかと思います。

飯田)ウォーゲーム、机上演習ですね。

奥山)そのようなシミュレーションゲームのようなものに、政治家の方も最近はよく参加している傾向があります。そのようななかで、政治家の方も「このままではまずい」と思い始めています。いままさにデンジャーゾーンの時代に入ってきたのだな、という感覚があるので、「防衛費をしっかりやろう」という認識が出てきたのは極めて健全だと思いますが、少し遅すぎたのではないかというところもあります。

「日本の軍備が不十分である」という認識のコンセンサスが日本政府にもできつつある

飯田)いままで「戦争する気か、外交(で解決)だ」と言っていましたが、戦争するのではなく、戦争を仕掛けられる可能性があるのですね?

奥山)そうですね。我々としては抑止として対応しなければいけないので、やはり軍備は大事だということです。もちろん、外交優先という建前は大事なのですが、「軍備の部分ができていなかったのだな」という認識が、ようやくコンセンサスとして日本政府のなかにもできつつあります。それを国民側も支援する形にならなければいけない時代が来ているのではないでしょうか。

飯田)国家安全保障局の次長を務めていた兼原信克さんにご出演いただいたとき、外交はそうなのだけれど、後ろで黙々とバットを振って備えている奴がいる。もしくは、黙々と真剣で素振りしている奴が後ろにいることが外交には必要なのだ、という話をされていました。

奥山)大谷選手のようなすごい選手だったらいいのですが、日本の場合はリトルリーグ出身の中学生ぐらいの人しかいないという状況です。そこをもう少し、大学生、もしくはプロに入れるぐらいのレベルにしたいですね。

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