クラウドファンディングで変化する「民間による戦争協力」
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地政学・戦略学者の奥山真司が11月1日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。戦争におけるクラウドファンディングについて解説した。
中国が宇宙ステーション完成へ、実験施設の打ち上げに成功
中国が独自に建設中の宇宙ステーション「天宮」で、実験空間の役割を果たす施設「夢天」が10月31日、海南省の発射場から大型ロケット「長征5号B」で打ち上げられた。宇宙ステーション「天宮」へのドッキングに成功すれば、中国初の有人宇宙ステーションが完成する。
飯田)宇宙ステーションというと、国際宇宙ステーションのイメージがありました。
奥山)ロシアとアメリカが実験で協力できるというところですよね。往々にして科学実験のようなものは、国際プロジェクトとして「敵対する国同士でも仲よくできる」というのがいままでの通説だったのですが、今回の戦争を受けて、ロシアが独自にやってしまったり、中国は中国で独自にやってしまう。
飯田)それぞれの国で。
奥山)いままでは「人類がお互いに協力できる」と言われていた宇宙空間でも、やはり地上での争いが反映されているような状況は、少し気になります。地上の部分での政治が宇宙にも及ぶ、というところで。
飯田)宇宙というと「平和利用」のイメージがありましたが、そうも言えなくなってきていますか?
戦争におけるクラウドファンディング
奥山)ウクライナの民間人や軍がインターネットに接続するために、イーロン・マスクさんの「スペースX社」が衛星通信「スターリンク」を戦争協力という形で提供しています。その話から、今回の戦争では「民間の力がフォーカスされている」という話をさせていただきたいと思います。
飯田)民間の力が。
奥山)「クラウドファンディング」が、ここ5~6年で流行しています。インターネットでサイトを立ち上げて、我々はこのようなプロジェクトをやっているので寄付してくださいと協力を仰ぎ、成功しているパターンがかなりあります。
飯田)特典を付けて寄付を募るというものですね。師匠の手拭いやサインなどがもらえるという落語のクラウドファンディングなどもありました。
「ウクライナ軍に最新鋭のドローンを提供しよう」というクラウドファンディング「UNITED24」
奥山)そのクラウドファンディングが、ウクライナで活用されている実態があるという報道も出てきていて、興味深く思っています。
飯田)ウクライナで。
奥山)「ウクライナ軍に最新鋭のドローンを提供しよう」というものがありました。最新兵器がなく、安く手に入れられるものが何かないかと考えると、ドローンなのです。
飯田)そうですね。
奥山)現在、ウクライナ政府が運用する「UNITED24」という特設サイトがあります。『スター・ウォーズ』の主人公であるルーク・スカイウォーカーを演じたマーク・ハミルさんがアンバサダーになって、世界のいろいろな方々に「ウクライナ軍にドローンを提供しましょう」と、クラウドファンディングのトップとして取り組んでいるという状況があります。
ロシア軍に撃つ砲弾にプーチン大統領へのメッセージを書き込むクラウドファンディングも
奥山)クラウドファンディングには、他にも面白いやり方をしているものがあって、米軍が提供した「M777」という有名な長距離榴弾砲があります。「Sign My Rocket」というサイトにいくと、「ウクライナ軍に提供するM777から撃たれる砲弾に、プーチンさんに対するあなたのメッセージを書き込んでください」というサービスがあるそうです。
飯田)砲弾に。
奥山)5000ドル相当かかるのですが、皆さんクレジットカードなどで払うと、砲弾に自分の好きなメッセージを入れられるのです。
飯田)5000ドルというと安くない額ですね。
奥山)そのメッセージは消えない塗料で書かれていて、撃つところまで動画で撮影して送ってくれるそうです。お金を持っている民間人の有志の方々は協力できるということで、「民間の力が戦争に」という側面があるのではないかと思います。
昔からある民間人による戦争協力
奥山)歴史を調べてみたら、日本でも昔、千人針の腹巻きや慰問袋のような形で、戦場の兵士に民間人が協力することはありましたよね。
飯田)「銃後の我々も」というようなプロパガンダがありました。
奥山)まさにそれです。イギリスには「スピットファイア」という戦闘機があり、1940年ぐらいにドーバー海峡の上での戦いで2万機ほどつくられましたが、そのうち約1000機は民間からの寄付によって調達されたと言われています。かなりの戦力になったそうで、今回もまさにドローンで同じような状況になっています。意外と昔から民間人は戦争に協力していたのです。それがインターネットやクラウドファンディングによってやりやすくなったというのは面白いですね。
ロシアは国内でロシア軍を支援するクラウドファンディングが立ち上がっている
飯田)かつては「国内で現場の人たちを支援する」とされていたのが、クラウドファンディングによって国を飛び越えて……。
奥山)そこが新しいところではないかと指摘されています。オランダで立ち上げられたサイトに、日本人やアメリカ人が寄付することもできるのです。
飯田)海外の人がクラウドファンディングで寄付するというのは、ある意味で情報戦というか、ウクライナの一連の宣伝戦が成功したからこそ、ということはありますか?
奥山)まさにその通りだと思います。逆にロシアの場合は、現地部隊の装備が乏しいので、母親や軍OBの人たちが独自にクラウドファンディングのサイトを立ち上げています。
飯田)ロシア国内で。
奥山)ロシア国内で「我が軍に歯磨きを送ろう、ベストやユニフォームを送ろう」というようなことを行っているそうです。
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