外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が12月2日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。江沢民氏の歴史的な役割について解説した。
天安門事件で荒れた中国を立て直し、胡錦濤氏へバトンタッチした江沢民氏の役割
飯田)江沢民元国家主席が亡くなったということで、江沢民氏の評伝については昨日(12月1日)の各紙面に掲載されていました。
宮家)私は1回だけ、会ったことがあります。
飯田)会ったことがあるのですか?
宮家)2002年の日中国交正常化30周年のとき、私は日本大使館で広報文化担当でした。当時の北京は千客万来だったのです。それでGLAYや浜崎あゆみさん、GACKTさんなども来てくれました。
飯田)30周年記念のイベントで。
宮家)大コンサートをやったのですが、GLAYの4人が江沢民さんに会いに行くことになったのです。私も担当なのでついていきました。江沢民さんがGLAYを知っているどうか不安でしたが、一応知っていました。彼らは歓談したのですが、最後にGLAYの4人がカスタムメイドのものすごくカッコいいギターを江沢民さんにプレゼントしたのです。そんなことがありました。
飯田)そうなのですね。
宮家)しかし、この江沢民さんという人の役割は結局「つなぎ」の役割だったのです。抜擢されて、天安門事件で荒れた中国をとにかく立て直すために頑張った。そのあと、胡錦濤さんにバトンタッチするのだけれど、結局、貧富の差は是正できませんでした。そして習近平さんが強権志向になっていったという意味では、歴史的な役割を果たした人だろうとは思います。
国民的な人気があったわけではない江沢民氏
飯田)あの当時、天安門事件のあと、鄧小平氏の鶴の一声で引っ張り上げられたと。
宮家)それは自民党でもあったではないですか。危機が起きたときに。
飯田)ありましたね。
宮家)政治的にはそれでいいのです。ただ、彼のような人に国民的な人気があったかと言うと、それは少し違うと思います。むしろ、いろいろな不正行為などを噂された方が周辺に多かったような気がします。
飯田)習近平氏の反腐敗運動のときに、江沢民氏の手下と呼ばれるような人たちが摘発されるという。
宮家)江沢民さんの時代は、中国が天安門事件を乗り越えて、さらに経済的に拡大する時期ですから、いろいろな産業が大きくなり、それにつながる人たちが利権を貪っていたと言われているわけです。あくまでも「言われている」ということですが。その意味では、国民からすると、江沢民さんは「自分たちの権利を守ってくれる象徴」というイメージではなかったような気がします。
日本を使ってナショナリズムで自分の権威を高めようとした
飯田)一方、不満の部分では愛国教育を行い、日本に対して厳しい姿勢を取った。
宮家)政治的権威がなかったから、ナショナリズムを利用して生き延びようとしたところがあります。その意味では、禁じ手を使った最初の人でしょうね。その前からあったかも知れませんけれど、江沢民さんは間違いなく、日本を使って反日ナショナリズムで自分の政治的権威を高めようとしたことは事実だと思います。それは日本にとって不幸だったと思います。
飯田)まさに当時の教育を受けた人たちが、これから社会の枢要になっていくわけです。
宮家)天安門事件で籠城した、もしくは頑張った人たちは今や全部飛ばされています。江沢民さんの時代は簡単には評価しにくいですね。
飯田)歴史の皮肉ですが、そのとき学生側に同情的で、総書記解任を体を張って止めようとしたのは、習近平氏のお父さんである習仲勲氏だった。
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