前日本銀行政策委員会審議委員でPwCコンサルティング合同会社チーフエコノミストの片岡剛士が12月15日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。防衛費の財源を賄うための増税について解説した。
防衛費を賄うための「適正な財源確保の方法が増税である」はおかしい
飯田)増税について伺います。「防衛費増額の財源を賄うためだ」ということで、法人税、所得税、たばこ税などを活用する方向で調整されていますが。
片岡)突っ込みどころ満載です。まず「防衛費の財源確保の手段として増税する」という話が、いの一番に出てくるわけですけれども、それは違うのではないかと思います。
飯田)防衛費の財源を確保するための手段としては。
片岡)国債を発行するという手段も、法律で規定されている財源確保の方法なので、「適正な財源確保の方法が増税である」という理論は、まずもっておかしいと思います。
1兆円を工面できないことが理解できない ~予備費等でも1兆円を超える金額がある
片岡)1兆円というお金ですが、これを工面できないというのが、私にはまったく理解できません。
飯田)1兆円を工面できないということが。
片岡)予備費等々でも優に1兆円を超える金額がありますし、その他を含めても、財務省が「1兆円を工面できないから何とか増税を」と総理に言わせていること自体、個人的には職務怠慢という気がします。
飯田)財務省の職務怠慢。
片岡)民主党政権のときに、似たような議論を聞いた覚えがあります。何とか増税を、という話になった経緯からしても、少し類似点を感じてしまいます。
防衛の話に「増税」という財源の話が論点として加わることで、国民の間の分断を広げてしまう
片岡)政権公約に「増税する」という話はなかったと思います。国民に対して「何とかお願いしたい」と言っているけれども、この話の経緯をどう説明するのかということです。
飯田)話の経緯をどう説明するのか。
片岡)あとは防衛費の話で、「国民の皆さんに負担をお願いすることで防衛意識を高める」と言うのですが、防衛絡みの話に増税という財源の話も論点として加わってしまうと、より国民の間の分断を広げるのではないかという気もします。それもどう考えたらよいのかということです。
たばこ税や法人税が防衛費と関係するのか
片岡)そもそも「1兆円」という話で、例によってたばこ税、法人税その他については、防衛費と関係があるのでしょうか。
飯田)たばこ税や法人税が。
片岡)私は以前たばこを吸っていたのでよくわかるのですが、たばこを吸う人が全体のなかで少数派になりつつありますから、その人たちの負担で防衛費を賄うというのは「どうなの?」 と思います。皆さんが嫌がる話だから、取りやすいところから取る。
飯田)たばこ税から。
片岡)加えて雇用や賃金を上昇させよう、設備投資を増やそうと言っているなかで企業向けの負担を求めるのは、アナウンスメント効果としては望ましくないと思います。
番組情報
忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。