数量政策学者の高橋洋一が1月11日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。経済3団体の新年祝賀会での岸田総理の賃上げ要請について解説した。
全国旅行支援が再開 ~旅行代金割引率は20%に引き下げ
飯田)全国旅行支援が1月10日に再開しましたが、いかがですか?
高橋)需要をつくっていくパターンです。でも、旅行支援も前回に比べて少しずつ補助率が低くなっていますよね。
飯田)2022年の年末までは割引率が最大40%あったのですが、20%に引き下げられました。
高橋)本当に大丈夫なのかと思います。
飯田)そうでなくても、サービス業や宿泊施設などはコロナ禍で痛んだ業界でもあります。
新型コロナ対策での無担保・無利子融資が終了 ~資金繰りが苦しくなる中小企業も
高橋)コロナ禍でいろいろな融資を受けていたでしょう。あれが切れてきて、そろそろ返済しなくてはいけなくなるので、負担が重くなりますよね。
飯田)無担保・無利子の。
高橋)無担保・無利子融資を有利子に借り換えようとすると、金利が高くなるため、厳しいのではないでしょうか。
飯田)ゼロゼロ融資等の返済に関して、返済負担軽減のための保証制度が中小企業庁から出ていますが、これでは足りないですか?
高橋)わからないですね。どこまでやるのでしょうか。利上げする方向だと、補助率も普通のローンに借り換えれば、無利子・無担保ではなくなるわけでしょう。少なくとも有利子になるかも知れません。どうするのですかね。
いまの状況で「賃上げしろ」と言うのはマクロ経済がわかっていない政策 ~勘違いしている岸田総理
飯田)企業の資金繰りもきついし、そこで賃上げと言われても……。
高橋)無理ですよ。あれはまったくマクロ経済学の「いろはのい」がわかっていないような政策です。
飯田)岸田総理は年初の記者会見や、経済3団体の新年祝賀会のなかでも、とにかく「賃上げしてくれ」と言っていますけれども。
安倍元総理の「賃上げ要請」の裏にあった高橋氏の助言
高橋)勘違いしているのです。「安倍さんのときに言っていただろう」と言うのですが、安倍さんの時代には、その前に私に電話で「高橋さん、今年はどのくらい賃上げしても大丈夫?」と聞いてきました。GDPギャップや失業率をみて、「このくらい上げても企業は文句を言わない数字」を伝えたのです。大まかに言うと、5.5%から前年の失業率を引いた数字です。そのくらいは上げても大丈夫なのです。
飯田)5.5%から前年の失業率を引く。
高橋)2.5~3%くらい、3%前後は大丈夫なのです。安倍、菅政権のときには、私はいつもこの数字を伝えました。
飯田)当時の安倍総理、菅総理に。
高橋)その数字を言えば企業の方もわかっていて、失業率も低いし人手不足なのだから「このくらい出さなければいけないな」と。景気も悪くないからということがわかるのです。しかし、今回は全然違います。
飯田)当時の「5.5%から前年の失業率を引く」という、「5.5%」とはどういう数字なのでしょうか?
高橋)過去のデータから計算したのですが、需給ギャップがどうなのか。あとは失業率がどうなのかというところから計算するのです。
失業率があるので賃上げするインセンティブがない
飯田)いまは需給ギャップも……。
高橋)かなりあります。失業率も見かけは低いのだけれど、本当はもっと高い数字で、あまり賃上げできない状態です。企業からすれば失業率があるので、安い労働力が雇えるため賃上げしないのです。
飯田)賃上げするインセンティブがない。
高橋)人手不足にならないと賃上げはできません。安い労働力で失業者を雇えばいいと思ってしまいます。
雇用調整助成金の存在で低く見える失業率
飯田)見かけ上は2%台後半くらいの失業率ですが。
高橋)いまは雇用調整助成金で抑えているからです。本当はもう少し高いです。
飯田)なるほど。下駄を履いている部分を脱がすと、雇用調整助成金もこのままずっとあるわけではないし。
高橋)雇用調整助成金の制度がなくなってしまえば、失業率は「ポン」と上がります。
飯田)単年度予算で組んで、ずっと伸ばしているという感じですか?
高橋)もともと雇用保険で賄っているのです。雇用保険は失業率が下がるとお金が貯まるのです。埋蔵金だったのですが、それを使ってしまっているだけです。失業率を低下させたのはアベノミクスの成果です。それを使っても誰も文句は言わないから、ああいうことをやったわけです。でも、それも底をついてきている。これから大変だと思います。
飯田)その部分を公費投入するのか。あるいは制度ごとやめてしまうとなると、失業率が跳ねるかも知れません。
高橋)おそらく公費を投入するのだけれど、そうすると雇用保険料をさらに引き上げなければならず、悪循環になるのです。
飯田)また可処分所得が減ってしまうではないですか。
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