ジャーナリストの佐々木俊尚が1月18日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。金利の上昇圧力が高まる市場への日銀の対応について解説した。
日銀が金融政策決定会合を開催 ~「金利上昇圧力の高まり」への対応が焦点
日本銀行は1月17日~1月18日の2日間、金融政策決定会合を開いて金融政策の方向性、物価の見通しなどについて議論している。2022年12月に続いて、さらに金融政策を修正するのではないかという見方を背景に市場では金利の上昇圧力が高まっており、日銀の対応が焦点となる。
佐々木)「金利を上昇させるつもりはない」と言い続けているのですが、多くのメディアやマーケット関係者は「金利上昇するだろう」と考えています。それをもって金利の上昇圧力が高まっていると言うのは、自分で自分の尻尾を食っているような見通しだなと思うのですが。
飯田)むしろ市場関係者などはそちらにベットしていて、お金を張っているからこそ、「こうなってくれたらいいな」というような記事になっています。
佐々木)それは「日本経済がよくなるのか」という話ではなく、単なる投機的な行動に過ぎないですよね。一方で、メディアはなぜ「金利上昇」と言いたがるのかというと、それはそれで、また別の引力が働いていそうな気もします。
次の日銀総裁によって180度変わる
佐々木)おそらくいまの黒田東彦総裁は、今後も「金利を上昇させるつもりはない」と言うのは間違いないのですが、問題は4月に任期が切れるのです。誰が次の日銀総裁になるかによって、ガラリと変わります。
飯田)次期総裁によって。
佐々木)黒田さんのようなリフレ派の人は総裁にならない見通しが高いようです。だから「一気に金利が上昇して、金融引き締めにまわるのではないか」という見通しを言っている人が多い。しかし、この見通しも観測気球なのかなと。
「なぜアベノミクスが道半ばで終わってしまったのか」をもう1度議論するべき ~金融引き締めをすればいいということではない
飯田)2月10日を軸にして、日銀の正副総裁の後任人事案を国会に提示するのではないかという報道が出ています。2月10日の提示だとすると、1ヵ月を切っているわけですよね。
佐々木)3週間くらいですか。一体、誰が決めるのかというプロセスがよくわかりません。
飯田)誰が決めるのか。
佐々木)誰になるかどうかは、現時点では何も言いようがないのですが、なぜアベノミクスが道半ばで終わってしまったのかを、もう1回しっかり議論するべきです。単に「金融引き締めをすればいいのだ」という結果論で話が進んでいるのは、危ないのではないかと思います。
金利の上昇が経済に冷や水を浴びせることに ~「引き上げ」を言い続けるメディアとマーケット
飯田)普通に考えても、金利が上がることになると、いまお金を借りていたり、これから借りようと考えている人。特に中小企業の経営者や、住宅ローンを抱えていたり、これから家を買おうとしている方々は直接影響を受けますよね。
佐々木)経済に冷や水を浴びせることは間違いないだろうと、リフレ派の人たちを中心に指摘されています。
飯田)金利の上昇が。
佐々木)一方でメディアやマーケットは「金融引き上げだ」と言い続けている状況で、どちらがいいのか。基本的に私は、リフレ派の人たちが言っていることは正しいと思っています。
アベノミクスが道半ばだったのは財政出動が不十分だったから ~誰が「財政出動せよ」と言うのか
佐々木)アベノミクスが道半ばだったのは、金融緩和政策が間違っていたからではなく、第2の矢である財政出動が不十分だったからです。それは間違いなく言えると思います。日銀は、金融緩和政策はできるのだけれど、財政出動はできないのです。
飯田)政府の仕事。
佐々木)政府の仕事ですから。そうすると、日銀が今後どういう金融緩和政策を取るにしろ、そこで不足する分……つまり金融緩和しても経済が上向かない、物価が上がらない状況のときに、政府もしくは財務省に対して「財政出動せよ」と誰が言うのか。
飯田)財政出動を。
佐々木)いわゆるパワーバランスと言うか、日銀と政権と財務省官僚の3者の駆け引きを、どういうバランスで進めるのか。それを岸田総理に期待しているのですが、いまの状況だと、やってくれそうもないですね。
飯田)1月16日に行われた経済財政諮問会議でも、アベノミクスを見直すのかどうか議論することになっていました。
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