施政方針演説で岸田総理が「増税」に触れなかった「いくつかの理由」
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数量政策学者の高橋洋一が1月25日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。通常国会初日に行われた岸田総理の施政方針演説について解説した。
岸田総理の施政方針演説
飯田)国会がスタートしました。初日の1月23日に総理の施政方針演説が行われましたが、高橋さんはどうご覧になりましたか?
高橋)月並みですが、増税のことには触れませんでしたね。
飯田)「財源は先送りしない」と、匂わせるところはありました。
高橋)匂わせているのだけれど、言っていないですね。
飯田)言うには至らずというところですか?
特命委員会で防衛費の財源を検討しているということは、防衛増税について「まだ十分な議論がされていない」ということ
高橋)防衛増税は今国会ではなく、来年(2024年)からなので言わなくてもいいということもあります。それと、自民党のなかで萩生田さんが、特命委員会で防衛費の財源について議論しているでしょう。
飯田)そうですね。
高橋)だから言いにくいのではないでしょうか。国会が始まっているのに特命委員会を開くのも珍しいと思います。「この法案がまだ生煮えだ」と言っているようなものではないですか。
飯田)本来であれば去年(2022年)の税制調査会で決めてしまう。
高橋)決めてすっきりした状態になり、方針演説ですべて言うのが普通です。
飯田)国会の財源法案などを。
高橋)財源確保法案は出るのですよ。出るのだけれど、生煮えなのですね。自民党内でまだ揉めているわけですから。
飯田)そうですよね。
高橋)そこを野党に追及されると痛いですよね。「検討しているのに、なぜ法案を出すのか」と。単純なロジックですけれどね。
飯田)「この法案はまだ与党でも議論しているではないか。固まっていないのか?」と。
防衛財源確保法案にはどう書かれるのか ~自民党内の増税に対する反発もあり、税以外の財源捻出に注力する姿勢を示しているが
飯田)野党はとりあえず立憲民主党にしろ維新にしろ、増税反対では一致していこうと、国会前に方針を固めていました。
高橋)だから増税の話はあまり言わないのかも知れませんね。
飯田)ここで突っ込まれるような、脇腹を見せるわけにもいかないと。
高橋)法案は出る。財源確保法案はあって、そこに防衛力強化資金をつくると示しています。どのように書くのかなと思うのだけれど、国会審議を行いながら与党内がまだ議論しているというのは面白いですよね。
飯田)本来ならば、与党内でまず法案の審議があり、そこで固まったものが内閣提出法案として出されます。もう与党内では決着がついているから「シャンシャン」であり、国会を通っていくことになりますが、今回はそうではない。
高橋)手続きがそうではないということです。菅前総理も「防衛増税については唐突だ」と言っています。
飯田)そうですね。
高橋)それはこういう意味なのですよ。唐突でなければ、正々堂々と財源確保法案のなかに書き込んであるはずなのです。
旧統一教会問題を受けた被害者救済法のように、野党も入れて法案をつくることはない
飯田)旧統一教会をめぐる、いわゆる救済法案と呼ばれていたものは、与党内の審議というより、まず国会に持ってきて、そこに野党も入れて法案をつくる形になっていました。今回の法案もそうなる可能性はありますか?
高橋)今回はそれをやると、「予算案がどうなるか」という話になるから。
飯田)2023年度の本予算も、もしかすると組み替えなければいけない形になってしまう。
高橋)そうなってしまったら大変だろうから、多分できないと思います。かなり際どい話になってしまいます。
飯田)なるほど。
高橋)組み替えしないと呑めないという話にでもなったら大変です。国会の本来あるべき姿だから、私はそれでもいいと思うのですが、予算組み替えはとてもではないけれど、面子の関係もあって認められないでしょう。
飯田)面子もあって。
高橋)財務省は絶対に嫌だと言いますよ。
飯田)「何をいまさら! 年末に全部決まったのだ!」と。
高橋)そういうことになるので、面白いと思いながら、施政方針演説を聞いていました。
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