経済アナリストのジョセフ・クラフトが1月31日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ストルテンベルグNATO事務総長と岸田総理の会談について解説した。
岸田総理大臣がNATO事務総長と会談へ
北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は1月30日、韓国・ソウルで尹錫悦大統領と会談を行い、ロシアのウクライナ侵略や北朝鮮問題での連携を確認した。ストルテンベルグ事務総長は30日から3日間の日程で日本を訪れ、岸田総理大臣などと会談する。
飯田)NATOの会議にも日本がオブザーバーの形で呼ばれたり、最近ではNATOもアジアに対してコミットするようになりました。
中国・ロシアに気を遣いウクライナ支援へ消極的な韓国・アジア諸国を取り込みたいNATO
クラフト)日本がG7議長国なので、その辺りの連携も重要です。北朝鮮やロシア、中国などの脅威に対して、いままでNATOは欧州、アメリカ、アジアというように地域で分けられていましたが、もはやそういう時代ではありません。今後は「NATO・アジア・アメリカ」が一体となって、安全保障面で連携・協力していくということです。
飯田)一体となって連携・協力していく。
クラフト)日本はロシアのウクライナ侵略に関して、早々にロシアを批判し、ウクライナへの支援を表明しましたが、韓国はじめアジア諸国は中国・ロシアに気を遣って消極的な姿勢を見せています。
飯田)そうですね。
クラフト)そこをできるだけ取り込みたい。まずは「韓国を取り込んでいこう」というNATOの狙いがあるのではないかと思います。
飯田)まもなくロシアのウクライナ侵攻から1年になりますが、始まった当初の国連決議を取る状況でも、アフリカやアジア諸国では棄権する国が多かったですね。
G7はASEANやアフリカ諸国の立場を理解して取り組まなければならない
クラフト)G7が勝手に動いてASEANやアフリカ諸国を批判するのではなく、彼らの立場を理解しつつ、どのように取り込んで、ロシアや中国の脅威に対して抑止できるかを考えなくてはならない。
飯田)ASEANやアフリカ諸国の立場を理解しつつ。
クラフト)インドもそうですが、単に「西側の人権問題を尊重しなさい」と押し付けるのではなく、彼らの立場を考えて、配慮しながら取り組まなければなりません。
飯田)配慮しながら。
クラフト)今回は日本が議長国なので、そういうところも配慮しながら、ウクライナ問題や北朝鮮問題、台湾問題について議論していくのだと思います。
アジアでの日本のリーダーシップとしての役割は大きい ~アメリカも日本に期待
飯田)「グローバルサウス」と呼ばれますが、アジアやアフリカの国々と話をしていくなかで、日本はいままでの経緯から独自のパイプがあるのでしょうか?
クラフト)日本はNPO団体が協力したり、日本のODAなどにより、かなり影響力を持っています。いままでは経済面で連携してきましたが、安全保障面では引いていたところがあります。しかし、日本もそんなことは言っていられない状況です。
飯田)そうですね。
クラフト)特にアジアでは日本がリーダーシップを発揮して取りまとめていく。アメリカの高官と話す限りでは、アメリカ政府が日本政府に期待しているのはそういうところです。
飯田)日本がリーダーシップを取ってまとめる。
クラフト)アメリカはASEANやアジアをよく理解していません。一方的に上から目線で押し付けようとする。そこは日本が間に入って、仲介することが重要だと思います。
飯田)TPP交渉のときも、日本のクッション的な役割がとても効いたという話があります。
クラフト)TPPもそうですし、去年(2022年)、アメリカが打ち出したIPEFも、当初は7~8ヵ国しか興味を示していませんでした。しかし、日本がASEANを取り込んで14ヵ国まで広げたのです。アメリカはアジアでの日本のリーダーシップに頼っているのです。
飯田)軍事ではなく能力構築の支援、ODAやJICAなど、相手を尊重しながら行う枠組みに対しては評価が高いようです。
クラフト)日本政府の高官に聞いた話では、ASEANから日本に対して、アメリカや中国からの圧力の盾になって欲しいと。「我々の意見を伝えて欲しい」ということも期待されているようです。日本がアジアで占めるリーダーシップ的な役割は大きいと思います。
日本が国際貢献できるところ
飯田)ギリギリと締め付けるのではなく、「最大公約数的にうまくやっていきましょうよ」というのは、日本的なコミュニケーションですが。
クラフト)そういうことは大事です。やはり欧米だと、一方的に自己主張を押し付けようとするけれど、日本はアジア的に相手を尊重しながら、うまく協議して説得していく。そこは日本が国際貢献できるところだと思います。
日本の国際社会における存在感が高まっている
飯田)いまは林外相がいますが、岸田さんも長い間、外相を務めてきました。岸田政権全体の外交はどうなのでしょうか?
クラフト)岸田総理は外務大臣の経験が長かったので、外交面でのレスポンスは早いと思います。ウクライナ侵攻もG7のなかで、いち早く批判を表明し、アジア諸国とも連携して動いているので、外交面では「足回りが早い」という印象を受けます。
飯田)今月(1月)の半ばにヨーロッパ・アメリカを歴訪しましたけれど、ここでもイギリスと円滑化協定を結びました。いままでの延長線と言われればそうかも知れませんが、形はつくってきましたよね。
クラフト)今回の防衛3文書の改定も、政権として歴史的な成果を成し遂げ、アメリカとの関係強化につながった。今回、ロシアを批判することによって欧米諸国からの信頼も集め、なおかつアジア諸国からも頼られる存在になりました。中国の脅威に対し、日本がストッパーとして役割を果たす。近年、日本の国際社会における存在感が高まっていると思います。
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