数量政策学者の高橋洋一が2月8日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。厚生労働省が発表した12月の毎月勤労統計調査について解説した。
2022年の実質賃金が前年比0.9%減少
飯田)2月7日、さまざまな経済指標が発表されました。厚生労働省から12月の毎月勤労統計調査の数字が出て、2022年の通年の数字も出てきた。通年の数字を見ると、実質賃金はマイナスだったということですが。
物価とは何か ~割り引くもので数字は変わってくる
高橋)「物価の変動を反映した」と言うのですが、「物価とは何か?」ということです。何を物価とするかによって違うのです。
飯田)何を物価にするかによって。
高橋)厚労省のものは「消費者物価指数」のはずです。消費者物価指数だと、去年(2022年)は通年で2.5%くらい上がっていると思います。2.5%で割り引いているから、実質(賃金)が0.9%減少ということは、名目値は1.6%くらいになります。おそらく、割り引くものによるのです。
飯田)割り引くものによる。
高橋)2.5%で割り引くとそのようになるのですが、「GDPデフレーター」はマイナスなのです。あれで割り引くと、1.6%だとマイナス0.6%だから、実質が2.2%になる。
飯田)マイナスを引くから、結局プラスになるということですよね。
消費デフレーターで割り引くと実質賃金はプラスになる
高橋)消費デフレーターというものがあります。アメリカではインフレ目標に使っている数字なのです。10~12月のGDP速報が出ていないから、まだ消費デフレーターは出ていないのですが、7期までを計算すると、消費デフレーターは0.9%くらいなのです。
飯田)7~9月期までで、10~12月までも推測すると。
高橋)だいたい同じです。超えても1%ちょっとでしょうね。それで割り引くとどうなるかと言えば、プラスになってしまうのです。そういう数字です。要するに「何で割り引くか」によって違うので、ああいう説明はあまり適切ではないですね。
物価上昇には輸入品やエネルギーなどの輸入原材料の高騰が影響
飯田)足下の物価上昇と呼ばれるものは、輸入しているものの価格、それから輸入による原材料価格の上昇がかなり影響しているということです。
高橋)ほとんどがそれなのです。
飯田)特にエネルギー。
高橋)国内の景気を反映したものではないので、そういうもので割り引いてはいけません。「物価」を1つだと思い込むのは間違いです。いろいろと言いましたが、物価は何種類もあります。適切なものを選ぶのですが、デフレーターの類いで行えば、そんなに悪い数字ではないかも知れません。
海外要因が収まれば日本の実質賃金も上がる
飯田)2022年12月の単月だと、実は消費者物価指数で割り引く形の実質賃金であっても、水面下から顔を出して前年同月比0.1%のプラスになります。インフレ、海外要因も収まりつつあるのでしょうか?
高橋)海外要因だけだから、収まれば実質値は上がります。海外要因は簡単には収まらないけれど、実は国内の物価が悪いから、消費者物価もあまり上がらないですよね。国内の景気が上がって、海外の物価が下がるのがいちばんいいのですが。
国内需要がないことが大きな要因 ~輸出入のウェイトは1~2割のレベル
飯田)国内の需要と供給を突き合わせてみると、需要不足で国内はデフレ基調です。その辺りを反映したのか、12月の景気動向指数は前月比を0.4ポイント下回る数字が出てきました。
高橋)こういうときに利上げしてしまったり、増税の話が出てくるのはよくありません。
飯田)ある記事には「海外の経済要因で輸出が落ち込んだからだ」ということが書かれていますけれども。
高橋)そうでもないのですけれどね。
飯田)結局、「海外の需要が」などと言うのは、国内需要が本当にないから、海外の影響を大きく受けてしまうという話ですよね。
高橋)一般論で言うと、輸入物価が上がっているのは事実なのだけれど、日本経済自体は外需の影響を受けにくいものです。内需の方がはるかに大きいわけですから、よほど大きな影響でない限り、私は海外要因を説明には入れません。
飯田)結局、もとを正せば国内需要がないことが大きな原因であると。
高橋)国内需要の方がはるかに大きい。輸出入は1~2割のレベルのウェイトです。それでも今回のように、エネルギーなどが大きく上がれば影響がありますけれどもね。
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