雨宮副総裁の名前が報道された次期日銀総裁人事案の「背景」
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数量政策学者の高橋洋一が2月8日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。日銀の正副総裁人事案について解説した。
政府、日銀の正副総裁人事案を来週国会に提示へ
ロイター通信は2月7日、4月8日に任期満了となる日銀の黒田東彦総裁の後任人事案について、政府が2人の副総裁候補とともに来週、国会に提示する方向で調整していると伝えた。日銀の正副総裁人事は衆参両院の同意が必要な人事案件で、政府は当初、他の複数の機関の国会同意人事案と同時に2月10日を軸に提示する方向で調整していた。
日経新聞が雨宮副総裁の名を掲載
飯田)6日に日経新聞が「黒田総裁の後任として雨宮副総裁に就任を打診した」と書いて、ハレーションが起きました。
高橋)昔は国会に関係なくリークすることもありました。民主党時代だったでしょうか。そのときから国会同意人事については絶対にリークさせないように動いていた。
飯田)衆参がねじれていたころに、総裁人事がリークされて新聞に載ったら、「リークされた人事は承服できない」と言って……。
高橋)そう言っていたのが懐かしいくらい、とても古いタイプの人事ですね。そのあとの安倍政権では漏れていません。
通常であれば日銀総裁の人事案が外部に漏れることはない
飯田)審議委員も含めて、日銀のボードメンバーは同意人事となりますが、ここは漏れずに提示の段階で「この人か」という状況でした。片岡剛士さんの人事のときもそうです。
高橋)絶対に漏らさない。限られた人間しか対応しないから、漏れないのです。
飯田)6日の日経の記事には、「複数の政府・与党関係者が」と出ていました。
高橋)昔ながらのものですね。
飯田)昔ながらですか。1990年代くらいまで遡りますか?
高橋)昔は、新聞社が日銀総裁人事を逃したら、担当者が左遷されるような時代でした。
飯田)「日銀担当記者が何をやっているのだ」と。
外部に漏れるのは昔ながらの古いやり方 ~安倍政権、菅政権では漏れようがなかった
高橋)役所の方も昔の感じなのでしょうね。通常であれば漏れるわけがない。そもそも、関係者と言っても複数ではないのですが。
飯田)そもそも携わる人が少ない。
高橋)総理と官房長官だけです。
飯田)複数と言ってもそのくらい。
高橋)そこが誰か1人に指示する。それで終わりです。
飯田)なるほど。そのくらいトップシークレットの情報も漏れてしまう。
高橋)総理と官房長官しか基本的には知りません。もしくは、官房長官が誰かに指示する場合はあります。
飯田)自分が全部の事務を行うわけではないから。しかも国会へ提示するとなると、段取りなども必要になってくる。
高橋)そこは漏れないでしょう。総理の方で漏らすわけがないですし。
安倍政権、菅政権では「漏らしたら誰かわかる」くらい関係者が限られていた
飯田)一般論ですが、人事は「漏れた瞬間に潰される」と言われますよね。
高橋)潰すために「わざと漏らしている」と言う人もいます。
飯田)そういうテクニックですか。
高橋)でも、「複数」というのはおかしい。やり方が違うのかなと思います。私は少なくとも、安倍政権と菅政権のときのことは知っているのですが、やり方が違うのでしょうか。
飯田)安倍さんが総理で、官房長官が菅さんだったときは、まったく漏れなかったですよね。報じられませんでした。
高橋)「情報が漏れたら、誰が漏らしたのかすぐにわかる」というレベルの話です。それくらいしか関係者がいなかった。
講演も1年間せず、表に出ていなかった雨宮氏
飯田)雨宮さんは「固辞している」という話が、いろいろなところから報じられていましたが。
高橋)普通は一切、表に出ないのです。火のないところに煙は立たないのかも知れませんが、彼は公式の場でここ1年くらい話していないのです。
飯田)副総裁と言うと、かなりの講演依頼がありますが。
高橋)ほとんど講演していません。ですので、「そうではないか」とみんな言っていたのです。
飯田)同じ副総裁でも、若田部副総裁は先日も地方で講演されていました。
高橋)雨宮さんは講演をまったく行っていない。彼は大蔵省に引っ越してきた時期があって、私はそこで2年間一緒だったのです。
「カメレオン」と言われる雨宮氏 ~政権の色で何色にでもなることができる
高橋)学生のときからよく知っていますが、彼は変幻自在で「カメレオン」と言われています。総理次第で、どんな色にもなれるのです。
飯田)経歴を見ると企画部門が長く、金融緩和には後ろ向きだった白川総裁体制のときにも企画局長でした。
高橋)そのときは「白い」と言って、今度は「黒い」と言う。カメレオンですから。
飯田)白川総裁から黒田総裁へと。
高橋)自分が総裁になれば、その政権の色に染まるのでしょう。はっきり言っています。
飯田)はっきり言っている?
高橋)私に対して「俺はどんな色でも大丈夫だ」とはっきり言いました。そういう人です。そのくらい柔軟性があるのは間違いありません。
飯田)それがマーケットの状況や、日本経済の状況に合わせて柔軟であればいいのですが。
高橋)「誰かに合わせる」のだと思います。
飯田)そのときの状況よりも属人的なものがある。
日銀としてのDNAは「利上げしたい」
飯田)足下の日本経済を考えると、ここで引き締めてしまっていいのでしょうか?
高橋)上に言われたらやると思います。
飯田)いま利上げなどされた日には、資金繰りが厳しい中小企業は大変です。あるいはローンを抱えていらっしゃる方も多いと思いますが。
高橋)彼はどちらであっても、指示があればやります。総理が指示しなければ、自分で好きにやるかも知れないけれど。
飯田)もともと日銀は、全体としてのDNA的には利上げしたがっているのですか?
高橋)もちろん。それは仕方がありません。職業病だと思った方がいいくらいです。財務省が増税したがるのと一緒です。
飯田)利上げすると評価されるところがあるのですか?
高橋)DNAがそうなっているからです。
飯田)インフレに対して、「これを抑えなくては」というマインドが強いという話は聞いたことがありますが。
高橋)インフレ率を何で見るかによると思います。消費者物価で見たら抑えたくなるのだけれど、例えばGDPデフレーターで見たら、抑えたくなくなると思います。
飯田)ここはブレーキの踏みどころではないと。
高橋)どちらで見るかということです。
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