復活の広島・秋山翔吾 アクセルを踏んで目指す「最年長記録」
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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回はセ・リーグで首位に立った広島カープを盛り立てる35歳、秋山翔吾にまつわるエピソードを紹介する。
シーズン前の順位予想では最下位に置かれることも多かった広島カープ。実際、オープン戦では7連敗を喫するなど最下位。ペナントレースが始まってからも、開幕から2試合連続完封負けでセ・リーグワーストタイの18イニング無得点。そして開幕4連敗と厳しい幕開けをしたはずだった。
ところが、開幕5戦目で初勝利を挙げて以降は、まさにのぼり鯉の如く8勝1敗。昨季王者のヤクルト戦では3連勝を飾り、一気に首位にまで駆け上がった。
その立役者の1人が打率リーグ1位の4割6分8厘と好調を見せる秋山翔吾だ。特にヤクルト3連戦では圧巻。4月15日の試合では、逆転サヨナラ2ランを含む猛打賞。自身、35歳の誕生日を迎えた16日の試合でも2試合連続での猛打賞と、目覚ましい活躍が続く。
秋山のモチベーションになった1つの要因は、誕生日の16日にマツダスタジアムで開催した肝入り施策「ひとり親家庭の親子招待」企画もあったはず。秋山自身、小学6年のときに父親を亡くして母子家庭で育ったことから、同じ境遇にいる子どもたちの励みになりたいと、西武時代の2015年にスタート。今回、広島に移籍して初めて実施した日に見事な活躍を見せたのだ。
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『僕ができることは球場に招いてプレーを見せることしかない。自分が生まれた日にマツダで試合があって、こういうタイミングでスタートができることはすごく記憶に残る』
~『サンスポ』2023年4月16日配信記事 より
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そして、秋山を動かすもう1つのモチベーションは「危機感」だ。振り返れば、シーズン途中での日本球界復帰となった昨季(2022年)は体調不良で2度の登録抹消を味わうなど、出場44試合で打率2割6分5厘、5本塁打、26打点。期待値が大きかっただけに、落胆してしまったファンもいるかも知れない。
ただ、ファン以上に納得がいかなかったのは秋山自身。昨季終了後にはこんなコメントを残していた。
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『簡単ではないと思いますが、ここで(復活)できなかったら多分、2年後も3年後もできない。試合に出てボロボロになり、ただ目減りして終わっていく感じになりそう』
『結果を残すのは大前提。加えてタフにシーズンを乗り切れたという年にしたい。踏ん張るというより、グッとアクセルを踏める準備をやっていきたい』
~『スポニチアネックス』2022年12月18日配信記事 より
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35歳という年齢、そして首位打者1回、最多安打4回という過去の実績を考えれば、もっとマイペースなスタンスでもいいはず。それでも「アクセルを踏める準備」という言葉が出てくるところに、「まだまだ若手に負けたくない」という強い意志を感じる。
その気持ちがあるからこそ、自主トレでも意識していたのは、技術の追求以上に「練習量」というのが興味深い。今季の自主トレではこんなコメントを残していた。
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『去年はメジャー最終年というところが頭にあったので、技術の方に寄りすぎたなと。キレイに打つ、いいイメージで形を作るという方が頭に多くあったなっていう印象なんです。パッと見たら同じようなメニューを去年もやっていたと思うけど、より数(振る量)が増えていたりというのは今年あります』
~『デイリースポーツonline』2023年1月10日配信記事 より
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もちろん、技術的な変化・追求の手を緩めているわけではない。
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『打撃フォームも微調整した。アメリカでは打者の手元で変化するボールに対応するため、ミートポイントを体に近づけていたが、昨シーズン終了後から投手寄りにした』
~『web Sportiva』2023年4月11日配信記事 より
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このように、強い打球を打つことを心がけている。
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『ここまでバットを上から出しているという感覚は今までにない』
『真っすぐをしっかり打ち返せるように積極的に仕掛けたい』
~『サンスポ』2023年1月10日配信記事 より
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その積極性で目指すのは、35歳での首位打者獲得。もし実現すれば、日本人では1955年の川上哲治(巨人)、1971年の長嶋茂雄(巨人)、1987年の新井宏昌(近鉄)、1993年の辻発彦(西武)、2007年の稲葉篤紀(日本ハム)に並ぶ、最年長首位打者記録となる。
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『前例があれば、できる可能性がある。1年間しっかり試合に出て、狙っていける位置にいたら獲れるものは獲りたい』
~『スポニチアネックス』2023年1月13日配信記事 より
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