外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が4月24日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。浜田防衛大臣が自衛隊に出した「破壊措置準備命令」について解説した。

PAC3機動展開訓練　陸上自衛隊の伊丹駐屯地で行われた航空自衛隊の地対空誘導弾PAC3起動展開訓練。＝2020年3月5日午前、兵庫県伊丹市　写真提供：産経新聞社

北朝鮮の軍事偵察衛星、浜田防衛大臣が破壊措置の準備を命令

北朝鮮が4月19日に完成したと発表し、近く発射するとみられる軍事偵察衛星1号機について、浜田防衛大臣は22日、自衛隊に「破壊措置準備命令」を出した。自衛隊は地対空誘導弾パトリオット（PAC3）の配備や、イージス艦の展開に向け準備を進める。

飯田）4月19日に北朝鮮の国営メディアは完成したと報じていますが、どうご覧になりますか？

宮家）どこまで完成しているかは知りませんが、衛星発射準備委員会を構成して最終準備を急ぐよう指示したと。彼らは生き残りのために必死で進めているわけですし、我々もそれに対応しなくてはいけません。「破壊措置の準備を命令」とありますが、当然だと思います。新しいミサイルになる可能性があり、その場合はどこに飛ぶのか。いろいろな飛び方をしますからね。最近のものは飛び方が変わっているでしょう。

飯田）確かにそうですね。

宮家）不測の事態を考えなくてはいけないので、当然だと思うのです。

南西諸島へ配備　～中国に対するメッセージでもある

宮家）2つ目に、中身をすべて知っているわけではないので、勝手なことを言うかも知れませんが、PAC3を南西諸島に配備するという話が出ています。いい意味で1つの訓練ですよね。あれだけ大きなものを輸送機で運び、短時間で準備して、発射できるように鍛錬しておく必要があります。有事になってから用意するわけにはいきませんので。

飯田）そうですね。

宮家）そういう意味では、もちろんこれは北朝鮮への対応なのですが、南西諸島に持って行くということは、隣の大きな国にもう1人の独裁者がいるではないですか。それが念頭にあるのかなと思ってしまいますね。でも、それでいいと思います。北朝鮮に対するものと同時に、他の国に対するメッセージでもあるのでしょう。

南西諸島に防御体制ができていることを示すことが重要

飯田）船なり航空機なりを使って、しかも迅速に動かせるのだと示す。

宮家）北朝鮮が南西諸島にミサイルを撃ち込むかどうかはわかりません。そちらに流れてくるかも知れないですし。でも南西諸島の場合は、もっと大事なことがありますよね。尖閣もありますから。

飯田）そうですよね。

宮家）ですから、そういう体制がしっかりできていることを示すのが、極めて重要だと思います。

飯田）訓練などをあえて見せることで、メッセージを送る意向もあるのでしょうか？

宮家）日本はこういうことを自発的にはなかなか決められない国ですからね。明治維新のころからずっと、外圧がないと決められなかったのです。黒船が来たり、アメリカが貿易戦争を仕掛けてきたりしないと、なかなか動かないという悪い癖があります。今回はある意味、いい機会ですから、こういった形で訓練することは大事だと思います。

陸海空自衛隊がどのような連携を取って統合作戦を行い、即時に対応できるのか　～その能力を磨くいいチャンス

飯田）ここから派生する議論でいけば、「撃って来たときにどう対処するか」というのはもちろんありますが、「撃たせないためにはどうするのか」という議論もしなくてはいけませんね。

宮家）ただ単にPAC3の問題だけではなく、陸海空の自衛隊がどのように連携を取って統合作戦を行い、しっかりと即応対処できるのか、その能力を磨くいいチャンスだと思います。

飯田）ものを運ぶにしても、南西諸島へ運ぶには船に乗らなくてはならない。自分たちで持つのか、あるいは民間の船舶で運ぶのか。

宮家）もしくは輸送機で運ぶのか。さまざまなオプションが常にあり、柔軟に対応できるようにすることが大事だと思います。

日米韓3ヵ国の連携も

飯田）アメリカとの連携もいろいろなところで言われています。今回のミサイル防衛は日本が主体で行うということですが。

宮家）当然ですが、アメリカとは別途で共同訓練なり、いろいろな机上演習・訓練を行い、勉強しているはずです。もちろん、アメリカのように陸海空の3軍に海兵隊を加えて、完全な統合作戦が行えるよう発展させていかなければならない。しかし、実際には統合作戦の有無、もしくは能力の差が大きな違いになっていくのだろうと思います。

飯田）北朝鮮がもし撃つようなことになれば、初期に探知するのは韓国になりますよね。日米韓3ヵ国の連携もありますか？

宮家）ありますね。最近はよくなっているようです。

飯田）韓国も政権が変わると。

宮家）そうです。