ウクライナでの紛争を長引かせる「プーチン大統領とNATO」の「認識のずれ」

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元内閣官房参与で元駐スイス大使の本田悦朗と前日本銀行政策委員会審議委員でPwCコンサルティング合同会社チーフエコノミストの片岡剛士が4月21日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。NATO・ストルテンベルグ事務総長とウクライナのゼレンスキー大統領の会談について解説した。

ウクライナでの紛争を長引かせる「プーチン大統領とNATO」の「認識のずれ」

ロシアのプーチン大統領(ロシア・ノブゴロド)=2022年9月21日 AFP=時事 写真提供:時事通信

NATO事務総長がキーウを訪問、ゼレンスキー大統領と会談

北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は4月20日、ウクライナの首都キーウを予告なしで訪問し、ゼレンスキー大統領と会談した。NATO事務総長のウクライナ訪問は、ロシアによる侵略後初めて。

飯田)訪問ルートが岸田総理のルートに似ているという指摘もありますが、片岡さんはどうご覧になりますか?

片岡)ロシア側も攻勢を強めていきますので、それに対抗しているのだと思います。ウクライナの立場からすると徹底抗戦しなければならない。そのためには各国の支援が必要です。先行きとしては、長期化の流れが進むのではないかという印象を持っています。

プーチン大統領とNATOの認識のずれ ~ウクライナは旧ソ連の一部という認識

飯田)本田さんはいかがですか?

本田)情勢の予想としては、長期化してしまうのではないでしょうか。どうすればいいのだろうと考えるのですが、プーチン大統領の認識とNATOの認識がずれているのです。プーチン大統領の認識だと、ウクライナは旧ソ連の一部、つまりスラブ人の一部であるという考え方で、言わば庭先なのです。

飯田)プーチン大統領の認識では。

本田)その庭先が西側に行ってしまう、NATOやEUに入ってしまうのは、プーチン大統領にとって耐えられないところがある。だからといって、いまの攻勢状態を凍結することはとてもできません。ウクライナは2014年にクリミア半島を獲られ、その後もドネツク地域、ドンバス地域、東側の工業地帯を獲られました。

飯田)そうですね。

本田)少なくともロシアには2014年の段階まで後退してもらわないと、ウクライナとしては話にならないのです。後退したから休戦になるとは限りませんが、人の命がいとも簡単に奪われてしまうのは見るに堪えません。

「凍結された紛争地帯」がたくさんあるロシアの国境近辺

本田)ただ、G7はこれから日本が議長国としてリードするわけです。西側が一致団結してウクライナを支援する方向なのは間違いないと思います。しかし、落ち着き先がどうなるのかは気になるところです。ロシアの国境には紛争地帯がたくさんあります。

飯田)周辺に。

本田)「凍結された紛争地帯」がたくさんあるのです。ここもある種、そういう状況です。ソ連時代の話と、本来の民族の長い歴史の話がずれているので、非常に難しい。近代国際法はそれとは関係なく断定していますので、矛盾を解決するのは非常に難しいです。

中国による抜け道がある状況のなかでロシアへの経済制裁は効果があるのか

飯田)西側の支援のなかで、ブルームバーグなどが伝えていますが、アメリカを含むウクライナ支援国の対露輸出について、ほぼ全面禁止を検討しています。経済制裁がどこまで効くのかについては議論がありますが。

片岡)世界貿易もそうですけれど、核となっているのは中国なので、(ロシアには)抜け道がある状況です。金融措置の効果がまったくないわけではないと思いますが、「ロシアにダメージを与えるほどの影響があるのか」と言われると、これまでの経済制裁の流れからも明らかな通り、抜け道があればなかなか効果は出てきません。

飯田)抜け道があると。

片岡)また、ロシアの経済状況が悪くなることが、今回の戦争を止めるような抑止力になり得るかと言うと、ならないのではないかとも思います。ですから、両方面で対策を考えなければなりません。

ロシアの都市部の市民が動員され、戦場へ行くことが決着の要因になる ~動員によって「反プーチン運動」が起こる可能性も

飯田)旧ソ連が崩壊したあと、経済の混乱を乗り越えてきた人たちからすると、「いまの経済状況は何でもないのだ」という指摘もあるようですが。

本田)禁輸はジワジワ効いてくると思います。しかし、決定的な要素になるかと言うとそうでもない。つまり中国やインド、あるいはグローバルサウスの国々など、ロシアに頼っている国がたくさんあるのです。

飯田)そうですね。

本田)どこかで決着がつくのでしょうけれども、「何が決着の要因になるのか」と言うと、人だと思います。これまでは周辺部分の少数民族が、兵士としてウクライナに行っていました。ところが、徐々にモスクワやサンクトペテルブルクの白人系ロシア人などにも動員がかかると、反プーチン運動が起こる可能性があります。さらに、ロシアを既に脱出している若者が多いのです。

飯田)ロシアから。

本田)そうすると将来、労働力が圧倒的に足りなくなり、ロシアの産業規模を維持することができなくなると思います。ロシアは中国のジュニアパートナー、中国の子分になるしかない。

飯田)中国の国防大臣が行ったときに、プーチンさんが頭を下げて会いに行くなどという光景は、昔では考えられないですよね。

本田)考えられません。

飯田)既にそれが起こりつつある。

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