リーグワンいよいよプレーオフへ 1位通過の埼玉ワイルドナイツはなぜ強いのか

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回はラグビー・リーグワンレギュラーシーズンを1位通過した埼玉パナソニックワイルドナイツと、プレーオフに挑むトップ4にまつわるエピソードを紹介する。

リーグワンいよいよプレーオフへ 1位通過の埼玉ワイルドナイツはなぜ強いのか

【ラグビー リーグワン 埼玉対花園】後半、突進する埼玉・稲垣啓太=2023年2月18日 熊谷ラグビー場 写真提供:産経新聞社

2年目のラグビーリーグワン、16節に及んだレギュラーシーズンが終わった。改めて存在感を見せたのは昨季(2022年)王者の埼玉パナソニックワイルドナイツ。1位で5月に行われるプレーオフトーナメント進出を決め、リーグ連覇を目指す。

今季の埼玉ワイルドナイツは、第15節で静岡ブルーレヴズに25対44で敗れ、昨季から続いていたリーグワンでの連勝記録が「30」でストップ。旧トップリーグ時代から数えれば2018年12月以来となる敗戦で、公式戦での無敗記録が「47」でストップしたことがニュースになったほど、今季も安定感ある戦いを見せた。

彼らの強さの根源はどこにあるのか?

1つの要因としてはもちろん、戦力の充実。「笑わない男」として前回W杯で話題を集めた稲垣啓太、「日本代表キャプテン」坂手淳史、圧倒的な存在感の「ラスボス」堀江翔太、ケガから復帰した「司令塔」松田力也、リーグワン初の「フルハウス」達成者の山沢拓也……。さらには南アフリカ代表のダミアン・デアレンデなど強豪国の代表経験者も多い。

ただ、トライ数をはじめとした各種個人ランキングにおいて、埼玉ワイルドナイツからリーグ1位の選手は出ていない。圧倒的な「個」の力に頼りすぎるのではなく、「チーム全体での意思統一、意識の高さ」こそが強さの要因であることが見えてくる。

その「意思統一、意識の高さ」について選手に話を聞くと、何度も出てくる考え方がある。揺るぎない「土台」をベースに「その上にいかに積みあげるか」という視点だ。

哲学者のような冷静な言説でも知られる稲垣は、今季第11節の宿敵・東京サンゴリアス戦後、チームの強さの要因についてこんな言葉を述べていた。

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「チームに問題があるときって、いろんなところに手を伸ばしがちなんです。あれも失敗している、これも課題としてある……いろんなところに手を伸ばしてしまう。でも、大事なのは『今、チームが何を真っ先に改善しないといけないのか』というところ。その一番大切なものは、パナソニックとしてもともとある“チームの土台”なんですよね」

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この土台があるからこそ、苦しい試合展開になっても立ち返ることができるという。

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「どんなシチュエーションになっても、その土台に戻ることができれば自分たちのリズム・テンポを作ることができる、という自信もあるので。この考えは僕だけじゃないはず。松田(力也)に聞いてみてもきっとそういう答えが返ってくるでしょうし、堀江(翔太)さんも同じ答えを持っているでしょうし。それは自分たちの根本的な強さだと思いますね」

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同じ考えを持っているはず、と言われた堀江も、サンゴリアス戦後にこんな言葉を残している。

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「結果がどうのこうのというよりは、自分たちの出来ることを一つひとつやって最後を迎えようというのが僕らの考え。一歩ずつ一歩ずつやるだけ。結果がどうなるかはわからないけど、僕らのいい方に進むだろうなってことは、負けていても勝っていても一緒です。自分の仕事を積み上げていくことに必死なので」

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キャプテンの坂手も、積み上げてきたチームの価値について、プレーオフに向けての記者会見でこう語った。

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毎年毎年、例年のチームの上に積み重ねているものが多い。ディフェンスだったら、少しずつチェンジを入れている。アタックだったら、自分達に合うオプションを探す・増やす部分につながる。去年、昨年よりも全体のレベルは上がっていると思います。

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もちろん、埼玉ワイルドナイツがこのまま連覇を果たすとは限らない。埼玉を倒そうと、リーグワン全体のレベルもまた上がっているからだ。

準決勝で対峙する4位の横浜キヤノンイーグルスは、世界的スクラムハーフ、南アフリカ代表のファフ・デクラークのもと、何を仕掛けてくるかわからない怖さがある。

実際、今季リーグ戦での対戦(第6節)では埼玉に敗れはしたものの、19対21と王者撃破まであと一歩。この試合でもトリックプレーからのトライでファンの度肝を抜いた。プレーオフに向けた記者会見でも、デクラークは攻撃オプションの数について「たくさんあるよ」と、大胆不敵な笑みを浮かべていた。

準決勝のもうひと試合。昨季4位から2位へとジャンプアップしたクボタスピアーズ・東京ベイは勢いそのままに頂点獲得を目指す。

そのクボタと対戦するのは、今季3位の東京サントリーサンゴリアス。昨季、一昨季とプレーオフ決勝でどちらも埼玉ワイルドナイツに敗れた、もっとも「打倒・埼玉」に燃えるチームだ。

5月のプレーオフが終われば、日本ラグビーは9月開幕のW杯へ向け、一気に代表モードへ。つまり、このプレーオフが代表入りをかけた最後のアピールチャンスになる。

「日本ラグビーの世界への飛躍」を掲げて誕生したリーグワン。その世界への道標として、5月開催のプレーオフが楽しみでならない。

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