ラグビー・リーグワン 21歳の現役早大生レフェリーが「ベストホイッスル賞」を受賞できた理由

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は2年目のシーズンを終えたラグビーリーグワンの「若い希望」にまつわるエピソードを紹介する。

ラグビー・リーグワン 21歳の現役早大生レフェリーが「ベストホイッスル賞」を受賞できた理由

【ラグビー リーグワン〈プレーオフ決勝〉埼玉対東京ベイ】優勝し、優勝杯を掲げて喜ぶ東京ベイ・立川理道(中央)ら=2023年5月20日 国立競技場 写真提供:産経新聞社

クボタスピアーズ船橋・東京ベイの初優勝で幕を閉じた2年目のラグビー・リーグワン。そのシーズン表彰式「NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 アワード」が5月22日、都内で開催された。

トップカテゴリー「ディビジョン1」のベストフィフティーンやMVPをはじめ各個人賞が発表され、日本代表の稲垣啓太(埼玉パナソニックワイルドナイツ:プロップ)がトップリーグ時代を含めて9季連続9回目のベストフィフティーン選出の偉業を達成。その一方で、新人にあたる23歳の長田智希(埼玉パナソニックワイルドナイツ:センター)と24歳の木田晴斗(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ:ウイング)がともにベストフィフティーンに初選出。新人王争いでは僅差の得票差で長田智希が選出されるなど、若手の躍進も目立つ授賞式となった。

そんな「若手の躍進」という意味でもう1人、押さえておかなければならない人物がいる。早稲田大学の現役学生(4年生)、21歳の古瀬健樹(ふるせ・かつき)レフェリーが最優秀審判にあたる「ベストホイッスル賞」を受賞したことだ。

「まだまだ、もっともっと成長する部分があると思う。レフェリー全員でリーグ全体を取り上げられるように、成長を続けていけたらと思います」

表彰式でこう挨拶した古瀬レフェリーが審判を志したのは東福岡高校在籍時。早稲田大学に進学後、史上最年少となる19歳で、日本協会主催試合のすべてを担当できる「A級公認レフェリー」に合格。リーグワンでは初年度から笛を吹き、2年目の今季、早くも「ベストホイッスル賞」の受賞に至った。

「選出にあたっては各チームのキャプテンの投票をもとに……と聞いています。毎週末に笛を吹いて、チームの方々に評価していただけた点は素直に嬉しいことだと思っています」

ラグビーの審判は、試合で笛を吹いてそれで終わり、ではない。試合後には各選手たちともコミュニケーションを重ね、そのフィードバックを次に笛を吹く際に生かす……その繰り返しで成長を重ねてきたという。

「今は『コミュニケーション』の部分に一番重きを置いていますし、たくさんの方から、いいフィードバックをもらっています。また、リーグワンには外国人のキープレーヤーもたくさんいますので、英語でもしっかりコミュニケーションをとるように心がけています。自分で言うのも変ですけど、『落ち着いている』というコメントをいただくことは多いですね」

実際に、古瀬レフェリーの「コミュニケーション」について評価した世界的名選手がいる。2019年W杯で南アフリカ代表を優勝に導いたスクラムハーフで、今回のアワードでもベストフィフティーンに選ばれた横浜キヤノンイーグルスのファフ・デクラークだ。今季第3節、東京サントリーサンゴリアスとの一戦で主審を務めた古瀬レフェリーについて、試合後にこう評していた。

「よくコミュニケーションをとってくれるレフェリーだったので、すごくよかったと思います。もちろん、しゃべりすぎもよくないので、そこのバランスは上手くとらないといけないんですが、全体的にいいレフリングでしたね」

審判といえば、プレーオフ準決勝ではTMO(ビデオ判定)が第1戦で5回、第2戦で6回とそれぞれ多かったことも話題となった。この点について審判目線でどう思うのかを尋ねると、「確かに回数は多かった。ただ、回数が多いから悪いのではなく、正しい判断を目指した結果だと思います」と言及した古瀬レフェリー。その上で、今後に向けての改善点として、やはり“コミュニケーションの重要性”を説いてくれた。

「どうやってTMOを減らしていくのか、という意味においては、決勝戦の前には『僕ら審判としては、こういうプレーは見たくない』『タックルの高さは低く』『15人対15人で80分終えられるようにしてもらいたい』というメッセージは両チームに送りましたし、実際、決勝の舞台ではTMOがゼロでした。そういった意味で、チームとのコミュニケーションも含め、リーグ全体としてどうやって減らしていくかは考えていかなければいけないと思います」

また、今季の審判トピックスといえば、国内トップゲームで通算100試合以上のレフリングを担当し、日本人初のスーパーラグビー主審を務めた実績を持つ第一人者、久保修平レフェリーが先日の3位決定戦での笛をもって「審判引退」の節目を迎えた。この点はどう捉えているのか?

「久保さんはずっと憧れの存在でしたし、41歳での引退には残念な思いもありますけど、引退されるからこそ、僕らがもっともっと成長しなければならないと強く感じています。レフェリーの世界も、もっともっと下からの突き上げだったり、全体としてのレベルアップも必要不可欠。僕らはお互い競争しながら切磋琢磨して、レベルアップしなければならないと思います」

そのレベルアップの先に見据えるのは、ラグビーW杯で主審を務めること。ラグビー界はこれから9月開幕のW杯に向けてますます盛り上がりを見せるが、その大舞台を目指すのは選手だけではないのだ。

「今回のW杯には間に合いませんが、2027年、2031年のW杯を常に狙い続けることは、当然していかなければならないことだと思います。そのための課題は、まずは英語。また、僕の場合はプレー経験が少ないので、ラグビー自体の理解をもっともっと深めないといけません。もちろん、フィットネスの部分もまだまだ成長が必要です」

「2年目を終えて、間違いなくレベルが向上している」と関係者が口を揃えるリーグワン。その“レベル向上”に合わせてレフェリーも切磋琢磨していること、国際レベルの高みを目指す若手がいることが実に頼もしい。

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