中国を牽制する意味でも日・米・フィリピンの演習は重要
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ジャーナリストの有本香が5月30日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。フィリピン沿岸警備隊と日米3ヵ国による海洋演習について解説した。
フィリピン沿岸警備隊が日米と初の海洋演習実施へ ~中国との関係が立ち切れず、微妙な立ち位置のフィリピン
フィリピン沿岸警備隊は5月29日、日本の海上保安庁やアメリカの沿岸警備隊と合同で海洋演習を実施すると発表した。3ヵ国共同で実施するのは今回が初めて。
飯田)フィリピンに対しても、日本はいろいろとアプローチしています。
有本)そうですね。巡視船の供与などもしてきましたので、ここに来て、もう1つ違うステージに上がるのでしょう。これは間違いなく対中国です。
飯田)そういうことになりますよね。
有本)フィリピンも微妙な立ち位置です。もちろん「こちら陣営」という言い方はできるけれど、なかなか切っても切れない関係ではないでしょうか。
飯田)中国との関係は。
有本)通商関係も、人の行き来もあると思います。しかし、海上の安全や安全保障に関して言うと、やはり日本やアメリカ、場合によってはオーストラリアなどとしっかり連携しなければならない状況でしょうね。
南沙諸島に人工島を建設し事実上の海の拠点とする中国
有本)最近あまり日本では報道されませんが、南沙諸島に関しては本当に一変しているわけです。2000年代に入って以降、着々と中国はここを事実上の海の拠点にしています。
飯田)人工島をつくって。
有本)埋め立てを進めましたよね。人の行き来もできるようにしてしまった点は、フィリピンにとって本当に恐ろしいことだと思います。
飯田)もともとは島でもなく、岩だった。
有本)岩だったところが、いまは完全に島のようになっていますからね。
飯田)国際法的にも「これは島ではない。岩だ。だから領土として認められない」と言われています。
有本)認められないのですが、そんなものはまったく無視して、中国は「中国の赤い舌」を主張している。
飯田)九段線と呼ばれる境界線。
有本)南シナ海は全部自分たちのものだという領域主張をしていますから、関係ないわけですよね。
中国船からの威嚇攻撃に対抗しなかったオバマ政権 ~それが尾を引いている
有本)遡るとオバマ政権時代、2009~2010年前後にかけて、あの海域で中国が活動を活発化させ始めました。アメリカの軍艦に対して一種の威嚇行為を始めたときに、アメリカ側は対抗しなかったわけです。
飯田)航行の自由作戦というのが……。
有本)あれは本当に政権末期ですね。いまから10年少し前に対抗しなかったことが、相当な尾を引いたと思います。
飯田)当時は関与政策がまだあった。
有本)やっていましたし、中国の船はアメリカの軍艦、軍艦と言っても調査する船ですけれど、それに対する威嚇行為なども野放しだったわけです。そんなことをしたら、やはり好き放題やられますよね。
飯田)「ここまでだったらやっていいのだ」と。
人工島には飛行場もある ~日・米・フィリピンで演習することは大事
有本)私もときどき講演などでお見せするのですが、1980年代にまさに岩だったところは現在、埋め立てられて飛行場もあります。
飯田)3000メートル級の滑走路をつくってしまっている。
有本)船も何艘もつけられるような状態です。この変化を見ると、日本の近海でもそういうことが起こり得ると思った方がいいです。
飯田)日本近海でも。
有本)ですから日・米・フィリピンで演習し、中国に姿勢を見せることは大事です。
東南アジアに対して動きを活発化させている中国
有本)ただ、中国も東南アジアに対しては動きを活発化させています。
飯田)経済面も含めてですか?
有本)そうですね。海ではないのですが、陸の方ではラオスやカンボジアなどに働きかけ、いままで以上に中国が浸透しています。
飯田)新幹線をつくったり。
有本)衆議院議員だった丸山穂高さんが最近、ミャンマーに行っているのですよ。
飯田)ミャンマーに。
有本)というのも、丸山さんは衆議院議員だった最後に、ミャンマーの軍事政権に対する日本の国会での非難決議で唯一、反対した人なのです。そういうこともあって比較的、向こうに入っていろいろな対話ができたようです。丸山さんに話を聞くと、日米、特にアメリカが去っていき、日本は一応留まってはいるのだけれど、影響力が小さくなっている。そのため「中国がどんどん入ってきますよ」ということです。
飯田)そういう穴がある。
有本)これは由々しき状況ですね。
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