マクロン仏大統領のNATO東京事務所開設反対で、日米と欧州の間で分断が進む懸念も

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ジャーナリストの佐々木俊尚が6月7日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。フランスのマクロン大統領が反対しているNATO東京事務所の開設計画について解説した。

マクロン仏大統領のNATO東京事務所開設反対で、日米と欧州の間で分断が進む懸念も

2023年1月9日、マクロン大統領による出迎えを受ける岸田総理~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202301/09pari.html)

マクロン仏大統領がNATO東京事務所の開設に反対 ~開設には全会一致が必要

イギリスのフィナンシャル・タイムズは6月5日、フランスのマクロン大統領が北大西洋条約機構(NATO)の東京事務所を開設することに反対の意向を示したと報じた。NATOは東京に拠点を設け、インド太平洋地域の安全保障協力を広げる狙いがあったが、マクロン氏は中国との関係悪化を懸念したとみられる。

飯田)NATO東京事務所の開設が実現すれば、アジア初の連絡事務所になるそうですが。

佐々木)NATOでは、連絡事務所をつくるにも全会一致の賛成が必要なので、フランスが反対するとできなくなってしまうのです。「この人は困ったものだ」と思います。

飯田)「また逆走したかな」というね。

佐々木)4月は中国へ行って習近平氏と会談し、台湾情勢に関して「ヨーロッパは米中に追随しない方がいい」というような発言をしました。西側諸国は「何を言っているのだ」とみんなイライラしていましたが、またかという感じです。

飯田)その間にG7広島サミットがありましたが。

佐々木)そのときは何も言わなかったくせに。

飯田)「言うのなら、そこで言え」と思いますよね。直前にNATOの事務総長などが「東京事務所をつくる」という話をしていました。

佐々木)ドイツやヨーロッパの西側諸国はこぞってウクライナ支援に賛同していて、台湾情勢に関しても、アメリカ・日本と同調して向き合っていこうという方向です。でもフランス人はへそ曲がりなので、「お前らは勝手にやれよ。俺は中国と仲よくするから」という感じですよね。

飯田)飛行機も売りましたし。

佐々木)気持ちはわからないでもないけれど、もう少しグローバルな国際情勢を考えて欲しいですね。

FOIPとNATOをつなげて世界的に広がる西側諸国の連帯するネットワークをつくる

佐々木)NATOと日本の関係に何の意味があるかと言うと、日本は第2次安倍政権のころから、「自由で開かれたインド太平洋」戦略をスタートさせた。日本から東南アジアを経てインドに至るまでの広いエリアを、1つの西側諸国のつながりとして捉えようという考え方を提案しています。

飯田)FOIPですね。

佐々木)そうは言っても、ロシアによるウクライナ侵攻が起き、インド太平洋だけでは西側の自由な国々を守れないので、日本はウクライナ問題に積極的にコミットしていくことになった。

飯田)日本も。

佐々木)一方では、ヨーロッパの国にも台湾情勢をきちんと見て欲しい。実際、イギリスはこちらに艦船を派遣しました。

飯田)空母打撃群を。

佐々木)ヨーロッパの北大西洋と、自由で開かれたインド太平洋を一列につなげて、世界的に広がる西側諸国の連帯するネットワークをつくろうというのが今回の狙いです。

このままでは日本・アメリカとヨーロッパの間で分断が進む懸念も

飯田)「フランスがそういう態度なのであれば、我々はウクライナのことは知らない。我々もエネルギーが欲しいから、ロシアとだって仲よくするぞ」というようなことを言ったら、「あなたたちは怒るでしょう」と思いますよね。

佐々木)アメリカも不快感を示しているようで、「そんなに言うのなら、ウクライナ侵攻に関してはヨーロッパでやったら?」という話が少し出てきているようです。

飯田)フランスさんはずいぶん自信がおありなようですから、と。

佐々木)アメリカは「我々はウクライナまで行く必要はないわけだから」ということになってしまいます。

飯田)日本としては歓迎ですよね。アメリカがウクライナとの二正面ではなく、アジア正面でやってくれるのであれば。

佐々木)「ウクライナに武器を送らず、台湾を守る方に使ってください」ということになります。でも、そんなことを言い出したら分断が進むだけだから、「西側諸国全体で団結してロシア・中国と向き合っていきましょう」というのが今回の合意です。マクロンさんも何とかして欲しいです。

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