ジャーナリストの佐々木俊尚が6月21日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ベルリンで行われたドイツと中国の政府間協議について解説した。
ドイツと中国が政府間協議、気候変動対策などをテーマに意見交換か
ドイツの首都ベルリンで6月20日、ドイツのショルツ首相と中国の李強首相、それに両国の閣僚などが参加する政府間協議が行われた。アメリカとの対立が続く中国は、経済的なつながりの深いドイツを足がかりに、中国包囲網とも言える動きを牽制(けんせい)する狙いがある。一方、ショルツ政権は対中関係の見直しを図る構えとみられる。
飯田)気候変動対策の協力以外、目立った成果について共同会見では触れられなかったようです。
「中国をどう扱うか」ということが世界的な問題に ~デカップリングからディリスキング(リスク回避)へ
佐々木)ドイツはなかなか厳しい立場だと思います。ロシアと中国が接近するなかで、ロシアには制裁しているけれど、それを救おうとしている「中国をどうやって扱うのか」が、いま世界的な問題になっているのです。
飯田)中国をどう扱うか。
佐々木)(ロシアがウクライナを侵攻した)当初は「厳しい態度で中国に対処しなければならない」というのが世界の趨勢だったけれど、今年(2023年)に入ってから言われているのは、デカップリングではなく「ディリスキング(リスク回避)」です。
飯田)ディリスキング。
佐々木)完全に分離するのは、もはや難しい。もともとトランプ大統領などが言っていたのは、「世界を二分してアメリカ経済圏と中国経済圏を分けてしまえばいいではないか」ということですが、現実的にはあり得ない。
経済的に中国との関係を完全になくすことは各国できない
佐々木)コンピューターも、つくるだけで中国にかなり依存しているわけです。最近よく言われていますが、経済安全保障のように「中国依存をなるべく減らすことで、リスクを減らしていきましょう」という方向になっています。
飯田)完全に分断するのではなく。
佐々木)そうは言っても、どこまで減らすのか。ドイツにとって中国は、自動車生産の4割を占める貿易相手です。「中国への輸出をやめますか?」と言われても、無理な話です。
中国はロシアのように実際にどこかを侵略しているわけではない ~関係を守りつつ、言うべきことは言う
佐々木)しかもロシアのように、目の前で侵略戦争を始めてしまった国であれば各国、経済制裁に同調できますが、中国はいまのところ何をしているわけでもない。
飯田)そうですね。
佐々木)そういう国に対して、国際的な社会で制裁しようというのは、あまり現実的ではない。どう対処すべきか各国悩んでいます。なかにはフランスのマクロン大統領のように、積極的に中国へ寄り添っている国もあります。
飯田)「台湾情勢は我々には関係ない」という発言もしています。
佐々木)あそこまで言ってしまうと「振り切りすぎだろう」というのが、いまのところ国際社会・西側諸国の全体的な共有認識ですが。
飯田)そうですね。
佐々木)だからと言って、「完全に中国との付き合いをやめよう」とはなりません。経済的な関係があることは承知の上で、ある程度「関係を取り結びつつ、言うべきところは言う」というような姿勢で進めるしかない雰囲気ではあります。
二枚舌を使うことも平気なヨーロッパの外交
飯田)李強首相がヨーロッパを訪問しています。ドイツのあとはフランスに行く予定ですが、やはり話しやすいところにまず行くか、という感じですね。
佐々木)ヨーロッパという大陸の国々は、みんな外交が上手なわけです。二枚舌を使うのも平気です。
飯田)そもそも。
佐々木)マクロン大統領などもそうではないですか。G7広島サミットでは「みんなで協調し、頑張って中露に対抗しよう」と言いながら、手の平を返して中国の手を握りに行くわけです。日本人から見ると、「これぞまさに複雑怪奇な欧州外交」と思います。それで腹を立てても、マクロン大統領からすれば「フランスはもともとそういう外交なのだ」と。
飯田)「これが俺たちの国益なのだよ」という話になってしまう。
日本も表裏を使い分けながら外交していくしかない
佐々木)ヨーロッパはそういうやり方なのです。日本人の悪いところは、「マクロンけしからん」と言いつつも我慢して、我慢した挙句に裏切られたりすると、「我が代表堂々と退場す」という方向にいってしまう。
飯田)「我慢ならん、表に出ろ」というようなことになる。
佐々木)日本人はそういう高倉健的な展開が好きなのだけれど、それではすべてが終わってしまうのです。
飯田)そうですよね。
佐々木)「ドイツも何かネチネチやっているな」、「フランスはちょっと怪しいな」と思いながら、我々も他国から「日本はちょっと怪しい」と思われるぐらいの感じで、地道に「表裏を使い分けながら外交していく」というやり方しかないと思うのです。昔から日本はそこが下手ですよね。
飯田)ウクライナの復興をしたいなら、「うちの金や技術も欲しいだろう?」と足元を見ていけばいいのですよね。
佐々木)既に裏では行われているのかも知れませんが、北朝鮮に対しても、ミサイルの話とは別で、「人道支援で米を送ってあげるから拉致被害者だけ返してくれ」というような交渉ができるようにならなければいけません。
番組情報
忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。