改正「反スパイ法」施行 「中国のためにならないのでは」辛坊治郎
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日本経済新聞社中国総局長の桃井裕理氏が7月5日、ニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演し、辛坊と対談。中国で1日に施行された改正反スパイ法について、桃井氏の解説を聞いた辛坊は「中国のためにならないのではないか」と疑問を呈した。
中国でスパイ行為の取り締まりの強化を目的とした改正スパイ法が7月1日施行された。日本政府関係者によると、中国で2014年に反スパイ法が施行されて以降、今年6月30日までに少なくとも17人が拘束されているという。このうち、これまでに11人が拘束後に解放されたり刑期を満了したりして帰国したほか、1人が服役中に病気で亡くなった。また、現在も拘束されたり服役したりして5人が帰国できていない。
辛坊)反スパイ法の改正により、何が変わったのでしょうか。
桃井)これまでは国家の機密や情報のやり取りをスパイ行為だとしてきましたが、今回の改正によって国家の安全と利益に関わる文書、データ、資料、記事を含む国家機密の所持がスパイ行為の対象となりました。ところが、国家機密が何かはよく分かりません。
国家の安全と利益に当てはまるものは、たくさんありますよね。具体的に何がいけないかは公開されませんから、恣意的な運用が可能になるのではないかということが懸念されています。
辛坊)今の説明ですと、中国国内で外国人記者が一般的な取材をした場合でも、当局から「国家の安全と利益に関わる情報だ」と決めつけられたら、それを理由に拘束されてもおかしくないということですよね。
桃井)おっしゃる通りです。ですから、私たち記者にとっては致命的な法律です。
辛坊)今回の改正は、中国国内の記者だけではなく、一般の企業活動をしている人も怖いでしょうね。
桃井)メディアはもともと国家機密に近いところにいましたから、状況はほぼ変わりません。むしろ、一般企業の人たちにとっては、中国企業とのビジネスでやり取りした情報を「国家の利益に関わる」と指摘されたら、仕事にならないです。ですから、一般企業の方のほうが影響は大きく、非常に困惑されていると思います。
辛坊)中国の国家利益を長い目で見たとき、このやり方は中国のためにならないのではないですか。
桃井)海外からの投資の呼び込みなどによって、国内技術を発展させ、さらなる経済成長につなげることを最優先にするならば、長い目で見るどころか、短い目で見ても全く利益にはなりません。ただし、何に優先順位を置くかが、政権にとっては重要です。
経済成長をしても、同時に西側の考え方どんどん国内に入ってきて浸透した場合、「共産党による統治は嫌だ」という雰囲気が広まり、体制が壊れる恐れもあります。政権にとっては、経済成長を損なっても、西側の考え方が国内に広まらないようにすることのほうが大事なんです。つまり、イデオロギー政党の優先順位からいえば、これは矛盾する話ではありません。
番組情報
辛坊治郎さんが政治・経済・文化・社会・芸能まで、きょう一日のニュースの中から独自の視点でズームし、いま一番気になる話題を忖度なく語るニュース解説番組です。
[アシスタント]増山さやかアナウンサー(月曜日~木曜日)、飯田浩司アナウンサー(木曜日のみ)