元内閣官房副長官補で同志社大学特別客員教授の兼原信克が8月1日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。施行されてから8月1日で1か月となる中国の改正反スパイ法について解説した。
中国の改正反スパイ法施行から1か月
中国でスパイ行為の範囲を拡大して取り締まる改正反スパイ法が施行されてから、8月1日で1か月となる。日系企業は中国当局による拘束を回避するためのマニュアルを作成し、中国政府関係者と面会する際に記録を残すようにするなど自衛策に乗り出している。
飯田)記録をつけていくということですが、それで自衛になるのでしょうか?
兼原)こちらの記録は、中国の公安からすれば「だから何だ」というものだと思います。持っていないよりはマシですが。
飯田)「反スパイ法」が改正されたものですが、こちら側からすると改悪に近く、どこまで範囲が及ぶのかわかりません。
昔の日本の治安維持法のようなもの
兼原)昔の日本の治安維持法と同じで、「思想犯」というような話ですからね。
飯田)思想犯。
兼原)「この言い方は何だ?」と難癖をつけられるのです。あとは、地方の権力者が失脚したときに、仲のよかった日本人が罰せられるような。
飯田)政治闘争ですか。
兼原)そうだと思います。あとは、ノルマもあるのでしょう。
飯田)ノルマですか。
兼原)年に何十人というようなものです。「うちの地区だけ3人足りない」とか。
飯田)数合わせのようなものもあるのでしょうか?
兼原)あると思いますね。全国的に厳しくなっていますから。
ありとあらゆる個人情報を集め、怪しいとなれば検索をかける
飯田)渡航する際にはビザが必要ですが、その申請も相当厳しいようです。さまざまなことを書かないと申請が通らないと言われています。子どもの名前や住所も書くという話も聞きます。
兼原)情報を取って、少し目立ったところは引っ掛けていくのでしょう。
飯田)日本で普通に生活しているような人の情報が必要なのでしょうか?
兼原)大量に個人情報を集めておくのです。そしていざというときに検索をかけ、その人の情報を全部出す。例えば兼原なら、大きな「インテリジェンス・ファイル」ができてしまうわけです。
飯田)なるほど。
兼原)電子情報が全部取られてしまう可能性があります。病歴から、レストランで何を食べているのか、タクシーでどこに行ったのかまで、全部取られているかも知れません。
飯田)すべての情報を。
兼原)ありとあらゆる情報をとにかくプールするのです。スーパーコンピュータで数年分の情報が溜まりますので、そこから必要な分だけ出して整理する。個人情報の塊が欲しいのです。
飯田)何かの罪をでっちあげるような、それに合うような情報を集めて、「この人だ」というようなことをするのでしょうか?
兼原)話したことや新聞記事などの情報がすべてプールされていて、それを検索するだけです。上がってきた情報で、危険な発言をしている人がいると「こいつ、いくか?」という感じだと思います。
家族同士の付き合いでの会話にも盗聴器が仕掛けられている
飯田)記憶に新しいところですと、アステラス製薬の役員の方が帰国直前に拘束されることがありました。
兼原)家族同士の付き合いになると、いろいろなことを話しますよね。その際も盗聴器が仕掛けられていることが多いので、その会話情報が出ていき、「こいつか?」というようなことになるのだと思います。
飯田)会話録のようなものですか?
兼原)反体制的なこと、例えば「習近平さんは経済を締めすぎだ」、「そういうことをすると不動産業界が潰れてしまう」などと言っていると、夜に誰かが来て、そのままお父さんが戻らない。そういう可能性があるなと、最近は思いますね。
苦労していまの地位を築いた習近平氏 ~統治の方法が乱暴
兼原)習近平氏は統治の方法が乱暴です。民心を得ることを知らない人なので、締め付けるだけなのです。特に豊かになってから、少し社会が弛緩しているので、昔の毛沢東さんのように締めているのですが、うまくいかないと思います。その一環です。
飯田)経済が回って経済成長すると、楽しみの部分も見出されます。そういう享楽的な部分が本質的に好きではないのでしょうか?
兼原)この人はお父さんが共産党幹部だったのですが、放逐されて、若いときもとても苦労した人です。紅衛兵になりきって生き延びたと言われています。
飯田)そうですね。
兼原)ですから「自分は共産党の真髄を知っているのだ」と。「北京の人間は浮ついている」というような気持ちがあるのだと思います。
飯田)「俺は洞窟のなかでろうそくに火を灯して本を読んだのだ」と。
兼原)激しい人ですからね。「ガツン」とする人です。中国の権力闘争は、日本の権力闘争の比ではありません。潰し合う世界です。
飯田)選挙で決めるわけではないですし。
兼原)民主的な手続きもありませんからね。
飯田)そのような気質なども含めて、外交を行うにあたり、そういうところも調べるのでしょうか?
兼原)プロファイリングと言いますが、経歴や性格などを徹底的に調べます。どういう方か知らないと総理が困りますから。
飯田)回顧録を読むと、そういうなかでも、安倍元総理は習近平氏と冗談を言うくらいの付き合いをしていたようですね。
兼原)安倍元総理は超一流の「人たらし」です。相手が誰でも物怖じしません。お父さんが外務大臣の家系だということもあるかも知れませんが。
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