武器開発で追いつかれぬようアメリカに切られた中国 半導体素材の輸出規制実施は「反撃」

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元内閣官房副長官補で同志社大学特別客員教授の兼原信克が8月1日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。中国による半導体素材の輸出規制について解説した。

武器開発で追いつかれぬようアメリカに切られた中国 半導体素材の輸出規制実施は「反撃」

バイデン米大統領、中国の習近平国家主席 写真提供:共同通信社

中国が半導体材料を規制

飯田)中国が8月1日から半導体の材料を規制し、ガリウムなどが輸出許可制になります。日本にとっては痛いのでしょうか?

兼原)中国産ガリウムの世界シェアは98%ですので、とりあえずは痛いですよね。半導体は戦争中の禁制品のようなものです。

いい武器になる半導体 ~アメリカ「敵にいい半導体は渡さない」

兼原)いちばんいいものを渡してしまうと、どちらが勝つか決まってしまうのです。中国は自国ではつくれません。アメリカが厳しい半導体輸出規制を行っているので、中国は苦しいのです。だからやり返しているのだと思います。

飯田)アメリカの規制に対して。

兼原)半導体の世界において、自由貿易はなくなってしまいましたね。

飯田)自由貿易はなくなってしまった。

兼原)敵にいい武器を渡さないのと同じです。半導体はとてもいい武器になります。アメリカは、「敵にいい半導体は渡さない」とはっきり決めたのだと思います。そうなれば、中国は「やり返してやろう」となりますよね。

いまの戦争で必要なのは「速さと正確さ」 ~追いつかれないために中国を切ったアメリカ

飯田)半導体そのものだけではなく、製造装置に関しても、日本やオランダに……。

兼原)日本には「東京エレクトロン」などトップ企業があります。いまの戦争は、破壊力の大きさは核兵器で終わりなのです。核兵器以上の大きなものをつくっても仕方がない。いま戦争で必要とされているのは、スピードと正確さです。

飯田)スピードと正確さ。

兼原)それをコントロールするのが半導体です。若い人だとわからない方が多いと思いますが、昔『8マン(エイトマン)』という漫画がありました。人より何十倍も速く動けるという。

飯田)エイトマンですね。

兼原)最近の兵器はエイトマンなのです。速く動いて、正確に当てるものが勝ちます。アメリカは圧倒的にこれが強いのですが、中国はすぐに追いついてきますので、追いつかせないために切ったのです。「商売は諦めてくれ」という話です。

飯田)商売の話ではないのだと。

兼原)戦争の話だからということで。

台湾と韓国に半導体における「中国との付き合いを止めろ」と迫るアメリカ

飯田)アメリカや諸外国は安全保障が上回っていくところがありますが、日本で行うとなると難しいですか?

兼原)アメリカに合わせるだけですので、日本が関わるのは最先端の製造機械だけです。「ファウンドリ」として大量につくっているのが韓国と台湾です。アメリカに「来い」と言われて行くと、投資の3割を貰えるのです。

飯田)3割。

兼原)1億円を投資すると3000万円くれるのですが、「これから中国と付き合ってはいけない」と言われるのです。「中国を捨てろ」ということです。

飯田)中国を捨てろと。

兼原)その分野では、韓国は米中の割合が半々ですが、台湾は米中が9対1なのです。ですから台湾は「ポン」と中国を捨てることができますが、韓国は「急に捨てられませんよ」とアメリカにしがみついている状況のようです。

飯田)少しくらい勘弁してくれと。

兼原)「あと1~2年勘弁してくれ」と言っているようです。

飯田)なるほど。尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権になり、日本ではアメリカにべったりというようなイメージで報じられますが、決してそうではないのですか?

兼原)べったりなのですが、お金の話ですので。「SK」や「サムスン」は政府ではないから、「勘弁してくれ」という話だと思います。

経済安全保障の強化に向けた「特定重要技術」に新たに23の先端技術を追加

飯田)報道によると、政府は「特定重要技術」に半導体やモノだけではなく、新たに先端技術を追加する方針のようです。サイバーやバイオ、止血製剤の製造技術などにお金を入れていくという構想でしょうか?

兼原)これは官民協力のものだと思います。経済安全保障の強化に向けて、政府が約5000億円を積んだのです。

飯田)経済安全保障の強化に向けて。

兼原)最先端の特定重要技術を新たに23追加しています。安全保障に結びつくため、世界中で何兆円というお金を入れているのですが、日本は安全保障の感覚がなかったので、こういうところにお金を入れていく必要があります。そこからまたスピンオフして、新しい技術が出てきますので。

飯田)そこから。

兼原)生存本能に結びついたことをしないと、いくらお金を入れても無駄になってしまいます。みんなが「大事だね」とお金を入れていけば、そこから広がりが出ます。

飯田)各々いろいろなアイデアが出るのですね。

兼原)それが防衛省や民間企業に出ていき、花が開くのですが、目的意識がなければズルズルとお金だけを使って終わってしまいます。

飯田)この技術は国を守るために使えるのだと思うことですね。

兼原)そのためだけではないのですが、科学技術自体が安全保障なのです。いまの戦争は科学技術で勝つので、特定技術を選んでいくのは正しいと思います。それには何兆円ものお金がいるのです。

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