数量政策学者の高橋洋一とジャーナリストの須田慎一郎が8月29日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。株式の取り引きを再開した中国「恒大集団」について解説した。
中国「恒大集団」が株式の取り引き再開、一時87%安まで下落
経営危機に陥っている中国の不動産大手「恒大集団」の株式売買が、香港証券取引所で8月28日、1年5ヵ月ぶりに再開された。株価は一時、取り引き停止前と比べて87%急落した。
飯田)終値は79%安の0.35香港ドルでした。
須田)債務超過であり、資産よりも借入金の方が大きいのですから、そもそも株式売買をやっていること自体がおかしいのです。
米裁判所に連邦破産法15条の申請がまだ認められていない恒大集団
須田)アメリカの裁判所に連邦破産法15条を申請しましたが、裁判所の判断が出ていません。アメリカの裁判所が認めるかどうかは微妙です。つまり、国内の投資家を守るために、海外の投資家を全部切り捨てようとしているわけです。
飯田)なるほど。そういう意図が見えるとなると、裁判所としてもOKは出しづらい。
須田)公平・公正ではないから。
破産申請しても受理しない中国の裁判所 ~習近平国家主席のことを考えて受理しない
高橋)なぜ中国ではなく、アメリカで破産申請を行うのか。それに尽きると思います。
飯田)やはりそこになりますか。
高橋)私は昔、不良債権償却の「大魔王」と言われていました。中国に呼ばれて行ったことがあって、当局者と制度の話をしたこともあります。
飯田)そうなのですか。
高橋)中国では、破産法の仕組みは似ていますが、裁判所の認定制度がまったく違うのです。普通の国では破産申請すると、大体は認められます。
飯田)認められる。
高橋)なぜかと言うと、きちんとしたバランスシートがあるからです。債務超過になったら、「これ以上取り引きさせては危ない」と判断して止める。そういう意味で、破産申請はほぼ自動的に受理されるのだけれど、中国の場合は受理権限が裁判所にあり、任意性だからほとんど受理しないのです。
飯田)ほとんど受理しないのですか。
高橋)習近平さんのことを考えるので、中国では破産申請できないと思います。申請しても受理しないから。
破産法を申請できないと一切の再建はできない
高橋)受理されないと、みんな疑心暗鬼になってしまいます。恒大集団の12月のバランスシートを見ると、資産が36兆円で負債が48兆円です。割り算すると75%カットというやつで、株式は0という答えが出ます。
飯田)75%カット。
高橋)それが出てくる答えなのですが、取り引きしていたでしょう。いい加減なのだけれど、破産法を申請させないと、一切の再建はできないはずなのです。できないのに「再建へ向けて」などと言っている。なぜだかわかりません。
恒大集団の債務超過がどれだけあるのか掴み切れていない
須田)なぜそれを認めないのかと言うと、バックに理財商品、シャドーバンキングがついているのです。
高橋)シャドーバンキングも、おそらく債務超過なのだけれど、収拾がつかなくなるから習近平さんが「全部止めろ」と言ったとしか思えません。
須田)恒大集団の債務がどの程度あるのか、掴み切れていないのです。
飯田)確定できないのですか?
須田)理財商品という形で、他の投資会社が突っ込んでいる。ここもまたブラックボックスになっていて、ドミノ倒しになってしまうのです。
飯田)理財商品の単純な残高だけを見ると、1300兆円ぐらいあると言われています。
高橋)それは理財商品のうちの一部で、地方政府が傘下に置く融資平台(LGFV)のものです。IMFがコンサルテーションを行ったとき、中国に「わからないから資料を出してくれ」と言ったのですが、出さなかったからIMFの方で推計したのです。
飯田)IMFが。
高橋)コンサルテーションの審査で、資料を出さないことはまずないのだけれど、でも絶対に出さないのです。地方政府が介在しているだけでもそれだけあるのだから、民間を含めたらもっと大きいに決まっています。
飯田)そして、焦げ付いたものが表に出てしまったりする。
信用取引ができない恒大集団 ~不動産の場合、信用取引ができなければ壊滅的になる
高橋)不動産価格を見ただけでも、焦げ付いていることはすぐにわかります。恒大集団の話に戻ると、債務超過率が25%であり、要するに75%しか返って来ない。しかし、普通の裁判所の場合は5%ぐらいになったら、絶対に自動認定なのです。
飯田)5%になったら。
高橋)でも、ここで認定してしまったら全部がそうなるでしょう。ものすごいパニックになってしまうのだけれど、こうしないと不動産取引ができないのです。不動産取引は中国のGDPの3割程度を占めるから、みんな疑心暗鬼になって、普通に考えると不動産では、売り掛け金での取り引きは無理ですね。現金取引しかできなくなります。
飯田)売り掛け金ではできない。
高橋)現金取引は信用できるからやるかも知れないけれど、売り掛け金をどこかの不良債権先に突っ込んでしまったら、売り掛け金が飛んでしまうからできません。
飯田)信用取引ができなくなってくる。
高橋)不動産の場合は信用取引が多いから壊滅的です。
飯田)金融システム全体が回らなくなってきますか?
高橋)「最後には国営銀行があるから大丈夫だ」と言う人がいますが、難しいと思います。
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