米中高官が12時間、朝から晩までお互いの立場を突き合わせてマルタから「持ち帰ったもの」

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日本経済新聞コメンテーターの秋田浩之が9月19日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。マルタで行われた米サリバン大統領補佐官と中国・王毅外相の会談について解説した。

米中高官が12時間、朝から晩までお互いの立場を突き合わせてマルタから「持ち帰ったもの」

インドネシアのバリ島で、握手する中国の習近平国家主席(左)とバイデン米大統領=2022年11月14日 (ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

アメリカのブリンケン国務長官が中国の韓正国家副主席と会談

米ブリンケン国務長官は日本時間9月19日未明、中国の韓正国家副主席とニューヨークで会談を行った。

ブリンケン国務長官と韓正国家副主席の会談よりも重要なサリバン大統領補佐官と王毅外相の会談

飯田)両氏は国連総会の一般討論のため、ニューヨークを訪問しています。中国側の韓正氏は、第2次習近平政権で副首相を務めていたと記憶しています。年齢の制限によって、行政の方の約束はないと聞きましたが。

秋田)そうですね。肩書きは国家副主席でありナンバー2という印象ですが、それほど中枢の人を送り込んだ感じではないと思います。それよりも重要なのは、16~17日にマルタで開かれたサリバン大統領補佐官と王毅外相による会談です。12時間も話し合ったと言われています。

飯田)地中海の島国マルタで開かれました。12時間ということは、ほぼ缶詰になって行われたのでしょうか?

秋田)本来であれば、ニューヨークでの国連総会に王毅外相が行き、本格的なアメリカとの会談が考えられていました。しかし、王毅外相は行かないと報道されたので、中国は今回、アメリカとの話し合いの調整をしないと思われていたのです。

ゴルバチョフ氏とジョージ・H・W・ブッシュ氏が1989年にマルタ会談を行ったマルタでの会談

秋田)まさに冷戦終結を決めたマルタという、当時のゴルバチョフ書記長とジョージ・H・W・ブッシュ大統領が1989年に行った会談の場所を選び、12時間も話し合ったのは興味深いと思います。

飯田)あえてマルタを選んで行った可能性もあるのですか?

秋田)ジュネーブもそうですが、どちらかと言うと中立的な場所なので、どちらか寄りの国ではないこともあります。また、マルタという冷戦終結の舞台を選ぶことで、何らかの意味を持たせようとしたのかも知れませんが、そこはよくわかりません。

「年内に首脳会談ができるかどうか」を検討する作業が行われた

飯田)かつての米ソのような緊張関係があっても、「そこをコントロールしていこう」ということでしょうか?

秋田)今回は12時間やっていますよね。普通の会談ではありません。アメリカの大統領補佐官であり、国家安全保障担当でもあるサリバンさんですが、滅多に単独では外遊しません。彼が外遊するのは、大統領の完全な名代として何かを調整するときだけで、普段は大統領に「ピタッ」と付いて行動しています。

飯田)通常は。

秋田)そのサリバン大統領補佐官が出かけて行き、12時間も中国と会談したということは、「米中首脳会談ができるかどうか」を中国側と調整したということです。しかも、ブリンケン国務長官と違い、サリバン大統領補佐官は外交だけでなくCIAやペンタゴン、内政的なものまですべてを統括している。日本で言うならば、官房長官と国家安全保障局長を兼ねたようなところがあります。

飯田)官房長官と国家安全保障局長を兼ねている。

秋田)もちろん、内政については大統領補佐官が別にいますが、サリバン氏はすべてを見ているので、12時間ですべてを中国とおさらいしたのだと思います。経済、通商、サイバー問題、人権、台湾問題など、朝から晩までお互いの立場を突き合わせ、それを持ち帰って、それぞれが習近平氏とバイデン氏に報告する。「年内に首脳会談ができるかどうか」を改めて検討する作業が行われたのでしょう。

米中が衝突しないようなガードレールをつくりたいアメリカがこの会談を呼び込んだ ~「やるのならばやってもいいかな」と受け身な感じの中国

飯田)中国の王毅外相が国連総会に行かないと発表されたとき、「年内の米中首脳会談はない」という雰囲気が出ましたが、むしろ別のところですり合わせていたのですね。

秋田)そうだと思います。ニューヨークに行ってしまうと、いろいろな会合日程が入り、慌ただしいなかでの会談になってしまうでしょう。ところが、わざわざマルタまで行って調整している。

飯田)わざわざ。

秋田)かねてからアメリカ側は、米中の対立を織り込んだ上で、衝突が起きないようにガードレールをつくりたいと言っています。アメリカの方が特に熱心にこの会談を呼び込んだのだと思います。

飯田)アメリカの方が。

秋田)中国も2027年までに台湾へ侵攻する能力がまだ整っていないので、アメリカとの緊張を高めることはまだ望んでいないでしょう。内政的にも経済的にも厳しいので、その意味では、受け身的に「やるのならばやってもいいかな」という感じだったと思います。

米中首脳会談が成功するかどうかを突き合わせた

飯田)中国の場合、トップを出してくる会談は、基本的に何かしら発表できる成果があるのが前提で、「失敗はない」と宮家邦彦さんがおっしゃっていました。中国は成功するからやるのであって、失敗するのであれば最初からやらないのだと。今回は「成功するかどうか」を突き合わせたのでしょうか?

秋田)そうですね。習近平氏は日本だと天皇陛下に近いようなところがあります。天皇陛下と総理大臣をセットにしたような、皇帝のような存在ではないでしょうか。

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