経済アナリストのジョセフ・クラフトが9月26日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。中国当局の捜査で中国からの出国を禁じられた野村ホールディングス傘下の香港幹部について解説した。
野村ホールディングスの香港法人幹部が中国本土から出国禁止に ~「反スパイ法」改正で取り締まりが強化
飯田)野村ホールディングスの香港法人幹部が中国本土からの出国を禁じられたと、英紙「フィナンシャル・タイムズ」の電子版が「関係者の話」として伝えています。中国投資銀行の捜査に関連した措置ということですが。
クラフト)詳細がわからないのでコメントも難しいのですが、大きな懸念としては、7月に中国で施行された「反スパイ法」の改正があります。これによって何でも理由付けして、国民あるいは外国の要人を拘束できるのです。
飯田)反スパイ法の改正によって。
クラフト)今回も協力を求められて連行されたようですが、これは協力ではないですよね。
飯田)連行されていますからね。拘束されてはいないということですが……。
中国はもはや投資できる環境ではない
クラフト)3月にも、アステラス製薬の日本人社員が拘束されています。アメリカ人も何人か拘束されています。アメリカのレモンド商務長官が「もはや中国は投資できる環境ではない」と言うくらい、取り締まりが厳しいのです。
飯田)投資できる環境ではない。
クラフト)私の推測ですが、刑事当局者らが習近平氏などに忖度して、取り締まりを強化し、成果を上げていこうという側面もあるのではないでしょうか。
安全保障関連で起訴された場合、外国人の弁護士を雇えない香港 ~判決は中国政府の思いのままに
クラフト)とりわけ外国人にとって怖いのは、香港においてです。本土は以前からそうなのですが、今年(2023年)に入ってから香港でも、安全保障関連で起訴された場合、外国の弁護士が雇えないことになっています。
飯田)外国の弁護士を。
クラフト)そうなると中国政府の言いなりになる弁護士しかつきませんので、有罪・無罪が政府の思いのままになってしまうのです。
飯田)「香港国家安全維持法」ですが、いままでの裁判の仕組みは使えないことになっているのですよね。
クラフト)使えないのです。
観光で山の写真を撮ってもそれがリチウム鉱山だった場合、「反スパイ法」で捕まる可能性も
飯田)香港は、もともとはイギリス裁判の仕組みだったのですよね。
クラフト)ビジネスだけではなく、観光客も気を付けなければなりません。例えば中国観光で山の写真を撮ったとします。それがたまたまリチウム鉱山だった場合、政府が勝手に「反スパイ法」で……。
飯田)「お前はスパイだろう」と。
クラフト)言いがかりをつけてくるかも知れません。本当はどうであっても、日中・米中の政府間のいざこざに市民が巻き込まれる可能性があるのです。
経済班は習近平氏に忖度して経済を発展させるために促進政策をし、一方で安全保障班は、またこれも習近平氏に忖度して規制を厳しくする ~両者が連携されず、矛盾する状況に陥っている
飯田)ビジネス環境がこうなってしまうと、投資しづらいですよね。一方で中国は、投資を求めているではないですか。
クラフト)そうなのです。今年の春に李強首相が、海外のビジネスに「投資してくれ」と言っておきながら、7月には「反スパイ法」を改正しているのです。矛盾していますよね。
飯田)そうですね。
クラフト)中国の縦割り行政のなかで、経済班は習近平氏に忖度し、経済を発展させるためにいろいろな促進政策を出しています。一方で安全保障班は、またこれも習近平氏に忖度して規制を厳しくする。この2つの連携がされておらず、矛盾する状況に陥っているのではないかと思います。
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