黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「黒木瞳のあさナビ」(10月2日放送)に歌人・エッセイストの上坂あゆ美が出演。第一歌集『老人ホームで死ぬほどモテたい』について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「黒木瞳のあさナビ」。10月2日(月)~10月6日(金)のゲストは歌人・エッセイストの上坂あゆ美。1日目は、第一歌集となる『老人ホームで死ぬほどモテたい』について---
黒木)どうですか、歌人・エッセイストと言われるのは?
上坂)創作を仕事にして1~2年というところなので、まだむず痒い感じもします。
黒木)歌集『老人ホームで死ぬほどモテたい』を読ませていただきました。これは「5・7・5・7・7」の31文字の短歌ですね。『老人ホームで死ぬほどモテたい』というタイトルから、いろいろ想像しながら読み始めたのですけれど、「こういうことだから、このタイトルなのだ。なるほど」と説得力がありました。とにかく素晴らしかったです。
上坂)ありがとうございます。
黒木)上坂さんが選ばれた歌を1つ読んでいただけますでしょうか?
上坂)では『老人ホームで死ぬほどモテたい』収録歌から読ませていただきます。「母は鳥 姉には獅子と羽根がありわたしは刺青(タトゥー)がないという刺青(タトゥー)」。
黒木)ご家族のことや自分の生きづらさのようなものを、全部歌にしていらっしゃるのですよね。
上坂)家族や学校で「うまくいかないな」という気持ちが、最初の歌集には多く含まれていますね。
黒木)そういうものを短歌にしてみようと思われたのはなぜですか?
上坂)ネガティブな気持ちから詩や短歌をつくる人と、そうではないものからつくる人がいると思うのですが、私は怒りや不満がモチベーションになるタイプなのです。テーマを立ててつくろうと思ったというよりは、「つくっていたらそうなった」という感覚ですかね。
黒木)ただ単に怒りや不満をそのまま書いていらっしゃるのではなく、歌のなかに見え隠れするから力があるのですよね。
上坂)確かにそれも言われることが多いですね。一歩引いて見ているというか、「冷静に見ている」とよく言われます。意図的にやっているというよりは、もともとの性格がひねているのでしょうね。
黒木)地元が好きではなかったこと、ご家庭の事情、そんなことから東京に早く行きたかったこと、「行ってみたらこうだった」などの思いが正直に書かれています。それが1つの芸術になっていて、そこがすごいなと思いました。
上坂)ありがとうございます。
黒木)でも、結局は自分を解放してあげたいのだろうなと思ったり、自己肯定感を強めていくのだろうなと思ったり、読んでいるとさまざまな思いを感じます。付箋をたくさん貼ってしまいました。私も読んでいいですか?
上坂)はい。
黒木)「できるだけ不幸になりたい人といて中華料理屋の名前は『ひかり』」というね。なぜこんなことが書けるのだろう。でも、こういうことがあったのですよね?
上坂)架空のものでつくる人と、実体験でつくる人がいますけれど、私は実体験が多いかなという感じです。
黒木)でも、実体験をきちんと文学にしていらっしゃるから。
上坂)そうですかね。
黒木)よくぞこの歌集をまず出されたと。どなたかの目に留まり、こうやって私の目にも留まって、「ありがとうございます」という感じです。
上坂)嬉しいです。ありがとうございます。
黒木)短歌と言うと、いろいろな方がいらっしゃるから「こう書かなくてはいけない」というようなものがありますが、それを破っていらっしゃいますよね。
上坂)まあそうですね。確かに。
黒木)それが斬新であり、だけれども魂がこもっていて、上坂さんの叫びのようなものが感じられます。
上坂)ありがとうございます。
上坂あゆ美(うえさか・あゆみ)/ 歌人・エッセイスト
■1991年、静岡県沼津市生まれ。
■東京の美術大学へ進学し、その後、会社員として働き始める。
■2017年から短歌をつくりはじめ、新聞歌壇などにも投稿。
■2022年に第一歌集『老人ホームで死ぬほどモテたい』を発表。家族や地元への葛藤など、自身のそれまでの辛さを成仏させるかのような作品群と、ユーモアでありながら、心をえぐられるような言葉選びで大きな話題を集めた。
■現在は歌人としてだけでなく、エッセイストなど幅広く活動。
番組情報
毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳