米民主党上院トップ「訪中」で「半導体規制解除」の可能性も
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戦略科学者の中川コージが10月10日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。中国経済の現状と今後の米中関係について解説した。
不動産バブルがはじけるなか、デフレに対する警戒が弱すぎる中国 ~経済指標が落ちるなかでも「デフレではない、年末までに回復する」
飯田)10月9日に習近平氏が米民主党上院トップらと会談しました。米中の向き合い方について「経済があまりよくないから、ここでアメリカと角を突き合わせるわけにもいかないのではないか」とも指摘されますが、実際、中国経済はどんな状況なのでしょうか?
中川)恒大集団や碧桂園を含め、中国の不動産関係でバブルがはじけているというのが、一般的なトレンドとして言われています。
飯田)かなり危ないと。
中川)そのなかで私が懸念していたのは、当局のインフレに対する警戒はきちんとあるのに、「デフレに対する警戒が弱すぎるのではないか」ということです。
飯田)デフレに対する警戒心が。
中川)当局自体が3ヵ月くらい前から、工業品卸売物価指数(PPI)や消費者物価指数(CPI)、製造業購買担当者景気指数(PMI)などの経済指標が落ちているにもかかわらず、「デフレではない。年末までには回復する」ととても強気だったのです。もう3~4ヵ月下がっているのに、デフレに対する警戒がなさすぎですし、逆にデフレを輸出すると日本にまで影響が出てしまいます。「楽観的すぎないか」と思っていました。
中国当局が言った以上、年末までに経済が回復しなければ問題が出てくる ~ここへきて経済指標に明るい兆しが見えてきた
中川)これを当局が言ったとなると、「本当に年末までに回復しなければ正当性が失われる」という、彼ら特有の問題が出てくるわけです。それを警戒していたのですが、ここへきて「PMIが少しいいよね」という指標が出てきました。彼らの言う通りになったようなところがあり、少し悔しく思っています。
飯田)デフレではないという。
中川)もちろん中国経済がよくなってくれれば、日本に負の影響がないので、それ自体はプラスです。しかし、敵ながらあっぱれと言いますか、「きちんと当てているな」というところはあります。
飯田)悔しいけれど。
中川)これから落ちる可能性もあるので、まだわかりませんが、少なくとも経済指標では若干明るい兆しが見えており、その辺りは少し悔しいところではあります。変な言い方ですが。
飯田)数字の信憑性はどうなのでしょうか?
中川)長期的な話になってきますので、その部分で嘘をつくと大きな影響が出てしまいます。時系列的な話ですよね。しかも国外にも影響を与えるものなので、そこは間違っていないと思います。ただ、失業率については少し怪しい気がします。
飯田)若年層の失業率を発表しなくなりましたよね。
中川)物価に関しては比較的正しい数字ではないかと思います。
2024年の米大統領選までに江沢民・胡錦濤指導部から受けた負の遺産を清算する ~そのタイムリミットまでに不動産バブル崩壊による膿を出す
中川)いずれにしても彼らが言うのは、前回の19期、習近平体制の2期目の5中全会の時期に、トランプ氏とバイデン氏がちょうど大統領選挙を行っていました。その際、どちらかと言うと内向きに進めるため、海外からのものをシャットアウトした上で、不動産の総量規制を決めたわけです。今回決めたわけではなく、ある意味では、「上手く進まないであろう民主党政権の期間中に膿を出してしまおう」という彼らの意図が最初からあったのでしょう。
飯田)バイデン政権の間に。
中川)いますぐ始まったわけではなく、不動産バブル自体も、ここで対応しておかないと10年後には格差が広がり、もっと大変なことになってしまう。江沢民指導部、胡錦濤指導部から受けた負の遺産を、習近平指導部の3期目になって清算しているところがあるのだと思います。
政治的にはスケジュール感は合っている
中川)そう言う意味では、シナリオのなかの1つではあると思います。失敗してくれたら「うまくいかないではないか」とこちらも批判できるのですが、(バイデン政権の)4年間でちょうど「収まりそうな感じが出てきてしまったな」というところが、少し残念な感じではあります。
飯田)上手く収まりそうな感じに。
中川)まだわかりませんが、来年(2024年)の米大統領選挙までというのが、彼らがもともと決めていたタイムリミットです。この期間内に不動産セクターの膿を出せれば、「彼らは上手くやった」ということになります。
飯田)なるほど。
中川)不動産に関しては、いまのところ経済指標的に悪いのでわかりませんが、政治的には、スケジューリング感においても合っているのではないかと思います。
国産7ナノメートルの先端半導体を採用したファーウェイのスマートフォン「Mate 60 Pro」 ~台湾企業がファーウェイの半導体の生産網に協力
中川)今回の訪中では、アメリカからマイクロン・テクノロジーの製品の話も出ていました。
飯田)半導体規制の話ですね。
中川)半導体規制に関しても、どれだけ強くなるのか。それ自体が影響を与えるのかどうかという、ミクロの話でしたが、いちばん中国にとっては効いていたわけです。
飯田)半導体規制が。
中川)ところが、ファーウェイが7ナノメートルの先端半導体を使って、スマートフォン「Mate 60 Pro」を出しました。また、台湾企業がファーウェイの半導体生産網に関し、協力しているという報道もあります。アメリカの制裁があるにも関わらず、台湾企業はその辺りに目端が利くと言いますか、「中国はいけるのではないか」ということで協力しているのです。
飯田)中国経済はまだ伸びるのではないかと。
中川)制裁で手綱を締めようと思ったら、逆に手綱が外れてしまい、元気になってしまいそうな危険性もあります。
飯田)中国経済が。
中川)そういう意味では、「マクロ的には思ったよりもうまくいくのではないか」という兆しが出てきてしまったことと、ミクロ的な半導体の話に関しても、「本当に7ナノメートルの製品ができてしまったのか」というところでは、かなりの驚きがあった。それを受けて今回、米シューマー氏の訪中があったのだと思います。
中国の半導体開発が「予想より早くなる」という危機感を持たなければならない
飯田)半導体についても、米中のデカップリングに日本企業も否応なく巻き込まれるところがありますが、日本の立ち位置はどうしたらいいのでしょうか?
中川)半導体については、中国であれば「10~20年、少なくとも2040年までは無理ではないか?」という状態でしたが、それが2040年なのか2030年なのか、2025年なのかは大きい話です。「どれだけ中国が早くキャッチアップできるか」を常に分析しておき、早くなったのであれば、日本側もシナリオを変えていかないといけません。
飯田)早くなるのであれば。
中川)そういう意味で、中国の半導体に関しては「2030~2040年以降に遅れてやって来る」と思われていたものが、「もっと早くなる」という危機意識を持たなければいけない立場に立たされている。マクロ的にもミクロ的にもです。
アメリカが半導体規制を解除する可能性も考えておく必要がある
飯田)日本が単独で立ち向かえるのかと言えば、そんなことはないわけですよね?
中川)今回の動きを見て、「アメリカの風向きが変わっている」と察知しておかなければなりません。アメリカの姿勢も臨機応変に変わるので、「半導体規制と言っているけれど、もしかすると規制しなくなるかも知れない」というようなところも日本は見なければならない。部分的に開放するなど。
飯田)なるほど。
中川)単純に「対立が激化して、デカップリングしていく流れではない」というところもあります。そもそも本当にデカップリングしているのであれば、アメリカもこの話をしに行く必要がないですからね。
飯田)そうですよね。
中川)そういう意味では、中国の力がついてきたので「アメリカが出てきたな」という感じがします。
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