TPPに中国を入れてはならない WTOの失敗を繰り返すな

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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が11月17日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。サンフランシスコで開催されたTPPの閣僚級会合について解説した。

TPPに中国を入れてはならない WTOの失敗を繰り返すな

中国の習近平国家主席(中国・陝西省西安市)=2023年5月19日 EPA=時事 写真提供:時事通信

TPP閣僚級会合が閉幕

飯田)サンフランシスコで行われていた環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の閣僚級会合が閉幕しました。

宮家)いい形で今後の方向性を決めたと思います。共同声明も出ていますよね。

飯田)自由貿易に関する高水準のルールを守るのだと。

中国を入れてWTOの失敗を繰り返してはいけない

宮家)これは非常に大事なことなのですが、私のコメントは1つだけ、「世界貿易機関(WTO)の失敗を繰り返してはいけません」と言いたいです。WTOには中国を入れてしまいました。WTOはコンセンサスで物事が決まるので……。

飯田)全員一致のような。

宮家)中国のような国を入れると、コンセンサスが作れなくなるのです。彼らは自分たちが反対するものに対し、すべてイエスを言わないから、物事が決まらなくなってしまう。そもそもTPPで行うようなことは、本来は世界全体で、WTOでやるべきことなのです。しかし、中国を入れたからWTOが動かなくなってしまった。仕方がないから地域協定であるTPPをつくったわけです。ここでTPPにもまた中国を入れたら、同じ問題が生じます。ですから非常に厳しい基準を設け、高い水準の加入条件などでメンバーシップのレベルを高くし、それを維持することが大事です。

申請している国は同じ条件で政治的な配慮をせずに加入を認めるべき

宮家)既にイギリスの加入が決まっています。また、中国と台湾以外にも申請しているのが……。

飯田)エクアドル、コスタリカ、ウルグアイ、ウクライナです。

宮家)ウクライナに関しては、まず欧州連合(EU)に入った方がいいのではないかと思いますが、それは置いておいて。そういう国々もすべて同じ条件で、政治的な配慮をせずに、「しっかりと試験を通って入ってください。裏口入学を行ったら、すぐに退学ですよ」という話です。

中国を入れたらサービス貿易においては規制だらけになってしまい、コンセンサスが取れなくなる

飯田)WTOの交渉もそうでしたが、関税の部分を下げることと並行して、非関税障壁と言われる、「国益を優遇するようなことをやってはいけない」とされています。ただ、安全保障の言い訳があると、少し下げられるようなところがある。「そこを突くのか」という。

宮家)常識的な範囲ではもちろん行われます。しかし、中国の場合はすべて安全保障になってしまう。また、大事なのはサービス貿易です。私はかつてサービス貿易を担当していました。

飯田)そうなのですか?

宮家)サービス貿易というのは、基本的にサービスだから、国内法による規制が多いわけです。弁護士や会計法、テレコムから海運から金融まで、全部サービス貿易です。当然、各国で規制がある。「その規制をどうやって下げるか、緩和するか」という話ですが、中国を入れたら、逆に規制だらけになってしまいますよ。

飯田)そうですね。

宮家)「それはダメ、これもダメ、それもダメ」となったら、コンセンサスが取れなくなってしまう。そのため、WTOは残念ながら事実上の機能不全に陥ってしまった。TPPをそうさせてはいけないのです。特に、アメリカが抜けてもう十分困っているわけですから、この上、中国も入れたら完全にTPPは死んでしまいます。

飯田)アメリカが抜けたとき、「これで頓挫してしまうのか」と思いましたが。

宮家)日本は頑張ったと思います。そこまで成功しているわけですから、二度とWTOの失敗は繰り返さないでいただきたいですね。

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