このままいくと中国は「日本の失われた30年」と同じ道に
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経済アナリストのジョセフ・クラフトが11月21日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。3ヵ月据え置きとなった中国の政策金利について解説した。
中国の政策金利、3ヵ月連続で据え置き
中国の中央銀行にあたる中国人民銀行は11月20日、事実上の政策金利で企業への貸出金利の目安となる「ローンプライムレート(貸出基礎金利、LPR)」の1年物を3.45%のまま維持した。据え置きは3ヵ月連続。中国人民銀行は6月と8月に利下げしており、景気への影響を見極めているとみられる。
90年代の日本のバブル崩壊時に似ている中国の状況
飯田)中国経済の見通しが厳しいのではないかとも指摘されています。どうご覧になりますか?
クラフト)欧米、日本などがインフレの圧力で悩んでいるなか、唯一デフレになっているのが中国です。経済が減速し、特に消費者需要が減速している。その背景には、やはり不動産バブル崩壊の余波があり、90年代の日本に似ていると思います。
経済の50%以上を占める地方政府の負債を減らさなければならないが、その対応が遅れる
クラフト)当時の日本では多額の住宅ローンを返済するため、みんな消費を縮小しました。需要が減ると、ものの値段が下がる。さらに政府が不良債権処理をためらったので、30年という長いデフレとなってしまったわけです。家計が需要を減らし、ものの値段が下がっているなかで中国政府が何をしようとしているかと言うと、不良債権の処理ではなく、金利を下げ、住宅ローンの頭金の補助金を出し、また不動産の需要を上げようとしている。そうするとまた負債が増えて、家計の需要が減り、日本のように長いデフレトレンドに入るリスクが高まっているという状況です。
飯田)まずは本来、ここを清算しなければいけない。
クラフト)いま1200兆円と言われる地方政府の負債があります。すべてが不良債権ではありませんが、経済の50%以上を占める地方政府の負債をある程度減らさないと、今後さらなる企業の破綻、地方政府の財政難に直面してしまう。結局は需要が低迷したまま、日本のように長いデフレ環境に入るリスクが高まります。日本の失われた30年を教訓として、政府が動かなければいけないけれど、やはり劇薬は飲みたくない。何とかうまくやりたいという思いで、行うべき対応ができていないのではないでしょうか。
飯田)ある意味の損切りをする状況になると、一時的な経済の後退はやむを得ないけれど、それはなかなか……。
共産党の威厳を維持するためにも一帯一路を棚上げすることなどはできない ~不良債権の処理をしなければいけない
クラフト)「とりあえず一帯一路戦略は棚上げしましょう。アメリカとの覇権争いも現在はできません。半導体に関する経済安全保障も難しく、南シナ海の領土問題も積極的に動けない」となってしまうと、やはり経済よりも共産党の力を維持したい習近平氏としては、なかなか受け入れられないと思いますね。
飯田)経済をどう立て直すのか。打つ手としてはどんな方法がありますか?
クラフト)金利を下げたり、いろいろな景気刺激策は行っていますが、景気が一向に上がらないわけです。やはり不良債権の処理、負債の軽減を進めないと、国民や地方政府に余裕が出ません。それをやらない限り、いまの状況から脱却できない。いまはまだ世界経済がアメリカの景気に下支えされていますが、もし今後、世界経済が減速するようなことになると、ダブルパンチで中国経済も痛手を被ることになります。
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