黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「黒木瞳のあさナビ」(11月22日放送)に同時通訳者の田中慶子が出演。同時通訳者という職業について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「黒木瞳のあさナビ」。11月20日(月)~11月24日(金)のゲストは同時通訳者の田中慶子。3日目は、日本人が英語を話せない理由について---
黒木)私も英語を習うことがあるのですが、先生に「なぜあなたは英語を勉強したいの?」と言われたことがありました。英語力を付けるには、まず目的が大事なのですよね?
田中)大事だと思います。私もよく「英語力を付けるにはどうすればいいですか?」と相談されることが多いのですが、「なぜ英語を勉強したいの?」と逆に質問します。私はいまも毎日、英語を勉強しています。母国語である日本語であっても、学ぶことはたくさんありますよね。言葉というのは果てしないのです。
黒木)心の変化だけでも言葉は変わってきますよね。
田中)「何のために学ぶのか」が決まっていないと、どこから手を付けていいのかわからなくなってしまいます。ですので、英語を学ぶ場合は「何のために?」というところを自分で決めないと、「どこからスタートするか」が決まらないのです。
黒木)頑張ってスキルを高めても、海外に行かない限り話す機会が少ないではないですか。ネットなどを使って話せばいいのでしょうか?
田中)日本人の英語に対する苦手意識は、いまおっしゃっていただいたように、使う機会が圧倒的に足りないからです。皆さん勉強されているのですが、英語が使うものではなく、学ぶものになってしまっています。一生懸命勉強するので、日本人の英語の知識レベルは高いと思います。単語もたくさん知っていますし、文法の理解もきちんとしています。ただ、知識は使って経験を得ないと、スキルにはならないのです。
黒木)だから田中さんは「アウトプットが大事なのだ」とおっしゃっているのですね。
田中)アウトプットすると、恥ずかしい思いをしたり、全然通じなくて凹んでしまうこともありますが、通じると嬉しいではないですか。
黒木)私も、とにかく知っている自分のボキャブラリーで伝えようとするのですが、伝わらないと、どうしようもなくなって挫折してしまいます。
田中)わかります。ただ、伝わらなかったときはもうひと頑張りして、「なぜ伝わらなかったのだろう。あのとき言いたかった単語は何だったのだろう」と調べて覚えるのです。
黒木)言えなかった部分を。
田中)部屋に戻ってから、言えなかったあの英語の言葉を1個でいいので調べ、覚えるのです。自分の経験とともに学んだ英語は、インパクトが強烈なので定着率が高い。アルファベット順に丸暗記した単語はすぐに忘れてしまうのですが、「あの場面で言えなかった単語はこれ」と覚えれば、かなり定着します。例え1日1個でも覚えていけば、使いこなせる生きた英語が身につくのです。英語は使いながら覚えるのが、私はいちばんいいと思います。
黒木)日本にいながらでも使い続けていく。
田中)もちろん英会話学校に行くのもいいですが、エア会話でもいいから誰かと喋っているつもりで会話してみる。自分の口から英語を喋ってみる。できれば家に1人でいるとき、妄想でもいいので、自分の口から英語を発することが大切です。
黒木)思ったことでいいので、英語で話してみるのですね。
田中)全然違うと思います。あとは日記を英語で書いてみるとか。
黒木)それはハードルが高いですね。
田中)しかし、「これはどう言えばいいのだろう、どのように表現すればいいのだろう」と、自分でわからないところを調べながら覚えていけば、使える言葉が増えていきます。
田中慶子(たなか・けいこ)/同時通訳者
■愛知県出身。
■劇団研究員、NPO活動を経てアメリカ最古の女子大であるマウント・ホリョーク大学を卒業。
■帰国後は衛星放送、外資系通信社、NPO勤務ののち、フリーランスの同時通訳者に。
■天皇皇后両陛下、総理大臣、ダライ・ラマ、テイラー・スウィフト、ビル・ゲイツ、デビッド・ベッカム、U2のBONO、オードリー・タン台湾デジタル担当大臣などの通訳を経験。
■2010年、コロンビア大学でコーチングの資格を取得し、現在は通訳の経験をもとに、ポジティブ心理学なども取り入れたコミュニケーションのアドバイスをするコーチングの分野にも活動を広げている。
■2020年、慶應義塾大学大学院システムデザインマネジメント研究科修了。著書に『不登校の女子高生が日本トップクラスの同時通訳者になれた理由』、『新しい英語力の教室 同時通訳者が教える本当に使える英語術(できるビジネス)』。
番組情報
毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳