ジャーナリストの佐々木俊尚が12月20日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる問題について、ニッポン放送・洗川雄司アナウンサーのレポートを交えて解説した。
東京地検特捜部、安倍派・二階派の事務所を強制捜査
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で、東京地検特捜部は12月19日、政治資金規正法違反の疑いで強制捜査に乗り出し、東京都千代田区にある「清和政策研究会」(安倍派)と、「志帥会」(二階派)の事務所を家宅捜索した。2022年までの5年間で、安倍派は約5億円、二階派は1億円を超えるパーティー収入を派閥側の指示のもとで政治資金収支報告書に記載していなかった疑いがあり、特捜部は詳しい経緯について実態解明を進めるものとみられる。
佐々木)違法は違法なので、きちんと捜査して決着をつけて欲しいと思います。ただ、これまで静かだった東京地検特捜部ですが、眠れる獅子が目覚めたような状況は何なのでしょうか。「安倍さんの重しがなくなったから」などと、まことしやかに言われていますが、どうなのでしょうね。
飯田)かつての日本歯科医師連盟(日歯連)事件などは、政治資金規正法違反をきっかけに贈収賄というような経緯をたどりましたが。
佐々木)今回はバックマージンで取っていたお金を、別に私腹を肥やしたわけではなく、単純にノルマ未達のときのためのプールに、あるいは政治活動に使っていたようなので、これ以上の深掘りは難しいのではないでしょうか。形式的な犯罪として当然、責任者は最終強制捜査から身柄拘束までいく可能性はありますが、現状では、大規模な疑獄になるという話でもなさそうですね。特捜部がどのような情報をつかんでいるのかわからないので、あまり言えませんが。
派閥の事務総長、事務総長経験者など、「議員本人の立件にも及ぶかどうか」がポイント
飯田)周辺も含めて、強制捜査の様子をニッポン放送・洗川雄司アナウンサーが取材しています。昨日(12月19日)の強制捜査の様子はどうだったでしょうか?
洗川)昨日の午前9時58分、10時直前でした。東京地検特捜部の係官十数名が安倍派の事務所が入っているビルへ立ち入り、家宅捜索が始まりました。午後12時20分過ぎ、そして2時45分ごろの2回に分けて捜査関係車両がこのビルに出入りし、押収した資料を運び出しました。トータルで4時間半ほどの捜索でした。周辺は報道陣50人以上が詰めより、騒然とした雰囲気に包まれました。安倍派の事務所に近い二階派の事務所にも、同様に家宅捜索が入っています。
飯田)今後の捜査の焦点はどんなところでしょうか?
洗川)派閥の会計責任者の立件のみならず、派閥の事務総長、あるいは事務総長経験者など、「議員本人の立件にも及ぶかどうか」がポイントです。もちろん事務方のみならず、議員本人への事情聴取とともに、昨日押収した資料を分析して、客観的証拠を積み上げていく作業になるわけですが、来年(2024年)1月下旬に通常国会の開会が迫っています。国会会期中の議員の不逮捕特権を考えると、国会が閉じている間は約1ヵ月の期間になりますが、年末年始も挟んでいますので、捜査はかなり時間的な制約があることになります。
公明党・山口代表「自民党と立場が違う、建設的な提案をする立場にある」
佐々木)他の派閥、もしくは他の政党に波及する可能性についてはいかがですか?
洗川)今回、安倍派以外にも二階派に捜査が入ったというところが、自民党内でも衝撃があると思います。岸田派にもパーティー収入過少記載の報道が出ていますので、自民党内では安倍派・二階派以外の派閥にも及ぶ可能性があります。野党に関しては、いまのところそういう話は出ていませんが、各党の反応も取材しました。
飯田)自民党以外の。
洗川)まずSNSで「同じ穴のムジナとは見られたくない」と発言していた公明党・山口代表ですが、昨日の会見では「捜査の進展によって、国民の信頼が揺らいで内閣支持率が低下している。いま、政権の危機に直面している」と強い発言がありました。一方、政治資金規正法の改正について、政党内で議論を始めているということです。「自民党と立場が違う、建設的な提案をする立場にある」というところを強調していました。
飯田)なるほど。
洗川)立憲民主党の岡田幹事長は「岸田総理は総理に就任してからも派閥のトップを務め続けてきた。こういった緩みが事件の背景にある」と批判し、「年明けにも政治とカネの問題を議論できる体制をつくりたい」と、通常国会開会を睨んだ発言もしていました。
国民民主党・玉木代表「来年の通常国会に向けて法改正を提出し、他の野党とも連携して法案成立を目指す」
洗川)国民民主党の玉木代表は、「来年の通常国会に向けて法改正を提出し、他の野党とも連携して法案成立を目指す」と話していました。3つほどポイントをあげており、いまの法律では、会計責任者だけが罰せられる法体系なのだと。共謀共同正犯が認められて、やっと議員本人にも及ぶという構成になっているので、議員本人も規制対象や処罰対象にする法改正が必要だと言っています。また、不正や法令違反があっても、実は政党助成法に基づいて多額の政党助成金が配られている状態なので、不正に加担したケースがあった政党に対しては、何らかの形で政党助成金を止める、あるいは減額する対応も必要だということです。
飯田)ペナルティをつくると。
洗川)3つ目としては、政治資金収支報告のデジタル化、資金が銀行口座を経由するシステムが必要だと。この点で、各政治家は最低、3つの財布を持っていると玉木代表は指摘しています。政党支部、講演会、政治資金管理団体の3つがある。それがバラバラの名義になっていると、名寄せした場合どのような実態になっているのかという解明が、現状ではやりにくくなっていると指摘しています。「政治資金収支報告のデジタル化を進めるとともに、3つの財布の名寄せが可能となる法改正やシステム改正が必要である」という提言が出ていました。
佐々木)デジタル化・透明化しても、政治家の方だって、やましいことをしていなければ何も困らないわけです。それを積極的に進めて、法改正と捜査を同時並行で行うのがいいのではないかと思います。
飯田)現行の法律だと、議員まで責任を問うためには、共謀共同正犯が認められなければいけない。具体的な指示があったかどうか、あるいは金額が大きいなど、どこで線を引くかが難しそうですね。
洗川)金額については、過去の事例などを見て、あるいはさまざまな自民党内の反応などを見ていると、「1000万円くらいではないか」と具体的な金額が出ている報道もあります。金額にも幅があるので、どこまでを立件の対象にするのかも、捜査の状況次第になってくると思います。
議員が立件となり、「補選ドミノ」になればさらに衝撃は大きくなる
飯田)しかし、来年の通常国会までとなると、時間がないですよね。
佐々木)1ヵ月もないぐらいですかね。どこまでやるのか、見守るしかないという感じですが。
飯田)特捜は正月返上で動くしかないのでしょうか?
佐々木)一方で、内閣支持率、自民党支持率も下がっています。「政権支持率と党の支持率を足した数字が5割を切ると政権が倒れる」という「青木の法則」がありますが、先日の共同通信の世論調査では、内閣支持率22.3%、自民党支持率26%と、合計がついに5割を割りました。しかし、割れたけれど野党に受け皿がないので、政権は倒れそうにないという。よくわからない、フワフワした状況です。来年の国会までこのまま進みそうですね。
飯田)この辺の危機感は、取材していてどうですか?
洗川)自民党の茂木幹事長は「政治の信頼を損ねることとなり、心よりお詫び申し上げる。重大に受け止め、捜査については最大限協力し、真摯に対応していく」というコメントを発表していたのですが、仮に議員本人に及んで立件されると、議員辞職から補選という形になります。「補選ドミノ」となると、さらに自民党内に大きな衝撃が広がることになるでしょう。
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