双日総合研究所チーフエコノミストの吉崎達彦が12月22日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる事件について解説した。
東京地検が松野氏、高木氏、萩生田氏、世耕氏らに任意の聴取を要請
自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる事件で、東京地検特捜部が松野前官房長官、高木国対委員長、萩生田政調会長、世耕前参院幹事長ら安倍派の複数の幹部に任意の事情聴取を要請したことがわかった。安倍派ではパーティー収入の一部を裏金化する運用が組織的に行われていた疑いがあり、特捜部は派閥の幹部としての認識や、キックバックを受けた議員側としての認識について、それぞれ確認を進めるものとみられる。
飯田)安倍派(清和政策研究会)と二階派(志帥会)について取り沙汰されています。任意の聴取を要請されたのは、いわゆる5人衆と言われる人たちです。
アベノミクスは終わり、徐々に財政再建派が力を増してくる
吉崎)安倍派が機能麻痺のような状態になると、経済政策への影響は大きいですね。「アベノミクスはこれで終わる」という感じになると思います。
飯田)自民党内の安倍派ではない知り合いのなかで、積極財政を唱える人たちが「これは積極財政派にとってはとても痛い」と話していました。
吉崎)要はリフレ派が巨大な応援団を失うことになるのです。きょう(12月22日)、予算の閣議決定がありますが、それは動かせないとして、来年(2024年)の骨太方針がどうなるか。徐々に財政再建派が力を増していくのではないかと思います。
「セキュリティ・クリアランス」は2024年の通常国会で法案提出できるのか ~リスクを伴う決断ができない岸田政権
飯田)この先の財政再建、増税はどうなるのか。いろいろなところで防衛費や子育て支援などが言われますけれども。
吉崎)一方で、こんなにも政治不信が強いときに増税できるのかという問題もある。残念ながら岸田内閣は、しばらくリスクを伴う大きな決断ができない内閣になるでしょう。個人的に注目しているのは、来年(2024年)の通常国会に上がる予定のセキュリティ・クリアランス(適性評価)です。リスクの高そうな法案を出せるのか、少し心配になってきました。
飯田)機密情報に関して取り扱いができるかどうか、身体検査する法律ですよね。
吉崎)これをやっておかないと、国際的に日本が信用されない状況になりかねませんので、本当は早い方がいいのですが、以前の特定秘密保護法のような反発を受けかねないテーマでもあります。もしかすると慎重になってしまうかも知れませんね。
飯田)ある意味で権利を縛るような法律は与野党対立になりがちですが、そこまで踏み切れないかも知れない。担当するのは高市大臣ですが。
吉崎)安倍さんらしいアジェンダ、安倍さんが生きていたら絶対「こうしろ」と言っていたはずの話が、全般的にやりにくくなっていく可能性があります。安倍さんは多くのアジェンダをもっており、保守的な安保でハト派の経済でした。割とご自身は柔軟に妥協し、「これは取ってこれは捨てる」ということをやっていましたが、あとを受け継いだ人たちは全部を守ろうとしてしまう。そして安倍派が機能しなくなると、全部進まなくなってしまい、ひょっとすると来年の政策運営に影響するかも知れません。
安倍元総理の掲げた政策の多くを達成している岸田総理
飯田)岸田政権から2年半、まもなく3年になろうとしていますが、安倍元総理が行っていたことの延長線のような政策が多かったように思います。
吉崎)そうですね。防衛3文書、防衛費倍増、原子力政策の転換。日韓関係の改善もありましたが、これは日本のおかげというより、向こう側が変わってきたところもあります。また、名目GDPを600兆円にする目標もありましたが、直近の数字は595兆円なのです。ほぼ達成できてしまっている。安倍さんが掲げていた目標を岸田さんが進めているという評価になるのですが、まったく褒められていません。
飯田)達成したその先に何をするのか。
岸田総理はのちに評価されることになるのか
吉崎)岸田さんはデフレ完全脱却宣言のようなものを示し、3年で身を引くと、実はあとから評価されるかも知れません。
飯田)結果的に日本の経済を完全に押し上げて、安全保障政策もしっかり転換した人なのだと。あとからと言うと、小渕元首相のような評価になるのでしょうか。
吉崎)小渕さんは確かに終わってから評価が上がりましたね。そういうパターンもないことはないです。
飯田)現状、内閣支持率も下がっており、なかなか苦しい展開になってしまう。
吉崎)既にかなり苦しい状況です。ただ、「総辞職すべきだ」という声が多いのですが、選挙はかなり先ですからね。
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