増え続ける医療費の問題点 「日本の医療行政は科学ではない」元厚労省医系技官が解説

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元厚生労働省医系技官で医師の木村盛世氏が12月26日、ニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演。増え続ける医療費の問題点について、「日本の医療行政は科学ではない」と解説した。

※イメージ

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今年5月に健康保険制度が改正され、75歳以上の人が加入する後期高齢者医療制度の年間保険料が2024年度、25年度と2年をかけて全体平均で約5200円引き上げられる。また、9月末に財務省が提示したデータでは、1受診当たりの医療費が一貫して増えていることが明らかになった。過去20年間、物価が低迷する中でも、診療所の「医療の値段」は毎年のように上昇していた。

木村)日本の国の総予算が100兆円とすると、医療費はその46%ぐらいです。厚生労働省は「50%まで上げてもいい」としています。これは、かなりの金額だと思います。私は、必要な医療には使えばいいと考えています。医療は人を幸せにするというのが大前提ですからね。ところが残念ながら、そうでもないことに対してお金が使われているケースがあります。こうしたケースは見直さなければならないと思います。

分かりやすい1つのケースが、2024年に廃止される肺がん検診です。「肺がん検診に効果があるのであれば、なぜ廃止するのか」と考える方もいらっしゃると思いますので、背景をお話しします。

肺がん検診車という車両がありますが、これはもともと結核検診車でした。結核検診は、レントゲン検査で肺の画像を撮影し、結核を見つけるために始まりました。ところが、結核の診断に胸のX線検査は役に立たないというのが世界的に周知の事実でした。WHO(世界保健機関)も「もう(レントゲン検査は)止めなさい」という姿勢を示していました。ところが、日本は戦前の検査方法を引き継ぎ、ずっと続けていたわけです。

ただ、世界中から取り残された状況に、厚労省もさすがにまずいと考えたのでしょう。結核検診車の運用を止めることにしました。とはいえ、車両そのものはたくさんあるわけで、肺がん検診車に名前を変えて走り出したわけです。

ところが、肺がん検診に関しても、もう何十年も前から「X線検査は止めろ」という話題がありました。アメリカの医師会雑誌にも載っています。厚労官僚の中にも「エビデンスがなく、効果もないのであれば、止めたらいい」と主張する人がいました。当時の厚労官僚にはまともな人がいたのだと思います。しかし、医療業界団体の猛反対で継続されることになりました。

ところが今や、肺がん検診車は老朽化しています。さらに人材不足も伴い、運用を止めることになりました。つまり、必要ないことを何十年も続けてきたわけです。すなわち、日本の医療行政は科学ではないんですよ。

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