黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「黒木瞳のあさナビ」(1月26日放送)にメイクアップアーティストで僧侶の西村宏堂が出演。LGBTQ+(プラス)として生きていくことについて語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「黒木瞳のあさナビ」。1月22日(月)~1月26日(金)のゲストはメイクアップアーティストで僧侶の西村宏堂。5日目は、人間の価値について---
黒木)西村さんの著書『正々堂々 私が好きな私で生きていいんだ』を読ませていただきましたが、「世間の価値観に人生のハンドルを握らせない」「誰かの言うとおりに生きて将来、自分が後悔しても言った人は責任を取ってくれない」と書かれています。本当にその通りですね。
西村)私が「アメリカの大学に留学したい」と言ったとき、親戚のおじさんが「アメリカの大学は、入るのは簡単でも卒業するのが難しいよ」とアドバイスをくださったのです。「自分ができる、できない」ということをベースに、他の人にアドバイスするのはよくあることです。
黒木)そうですね。
西村)「そんなことは一握りの人しか達成できない。だからそんなに夢を見るな」と言ってくる人がいます。でも、実際に成し遂げた人であれば「できないよ」とは言わないと思うのです。「できるよ」と言ってくれる人にアドバイスをもらって、自分が「できる」と思わない限り、夢は実現できないと思います。ですので、「他の人の意見に自分の人生を委ねないで」と言ったのです。
黒木)自分に自信を持つことも大切ですよね。自信には二通りあるということですが。
西村)「比べられる自信」と「比べられない自信」があると思います。例えば、私が英語が上手で、クラスのなかで1位になったとしても、全国で見たとき、あるいはネイティブの人と比べたら私の自信は揺らいでしまう。でも愛してくれる家族がいるとか、思いやりの心があるという比べられない自信だったら、自分の自信を保てると思うのですね。いくら活躍していても、「自分には価値がないのかな」と思うことがあります。そんなとき、「揺らがない自信」がいちばんの守りになってくれるのだと思います。
黒木)ご自分は男の人の身体だけれど、「魂に性別はない」とおっしゃっています。宏堂さんがおっしゃると説得力がありますね。
西村)男の人の身体であることは鏡を見ればわかるのですが、例えばお寺の奥さんと言われる人たちは、法要が終わったあと部屋が冷たくなっているようにクーラーを入れて準備しておき、お茶の用意もする。住職は崇められるのですが、「奥さんは女性だからといって、どうしてそんなに蔑ろにされなくてはいけないの?」と、差別的なことには私も同じように憤りを感じます。
黒木)女性の立場となって。
西村)「男子、重いもの運んで」と言われると、私は男性だけれど、運びたいと思って運んでいるわけではないと感じます。逆に女性でも「私だって運べるよ。私のことを弱いと思わないで」と思う人もいるのです。
黒木)女性の地位を確立させるような活動もなさっていますよね。最後に、「これだけは話しておこう」と思うものはありますか?
西村)生きていると、人と自分を比べてしまうことがあると思います。でも、人間としての価値は地位や収入、活躍しているかどうかは関係なく、「みんな平等である」と仏教では言っています。私も「みんな平等で価値がある」ということを皆さんに伝えたいですね。
西村宏堂(にしむら・こうどう)/メイクアップアーティスト・僧侶
■1989年・東京生まれ。実家は都内にある浄土宗寺院。
■ニューヨークのパーソンズ美術大学を卒業後、ミス・ユニバース世界大会などで各国代表のメイクを行うなど、メイクアップアーティストとして活動。ハリウッド女優やモデルも担当し、世界的な活躍を続ける。※日本での美容師免許は取得していない。
■2015年、僧侶として修業し、浄土宗の認定を受ける。
■LGBTQ+の当事者でもあり、自分の経験を活かし、ニューヨーク国連本部やイェール大学で講演。啓発のためのメイクアップセミナーを行うなど幅広く活動。NHKや英BBCでも紹介されるなど、国内外から注目を集めている。2021年にはアメリカの雑誌『TIME』で「次世代リーダー」21人に選出された。
■2022年末には「紅白歌合戦」の審査員として出演し、話題を集めた。
■2023年9月号の『VOGUE JAPAN』で、コロンビア人の男性とパートナーシップを結んだことを発表。
番組情報
毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳