戦略科学者の中川コージが2月20日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。今後の日本とインドの関係について解説した。
インドのロシア産原油の輸入、ピーク時の35%に減少
インドはロシアによるウクライナ侵略後、割安となったロシア産原油の購入を拡大し、2023年は全体の輸入量に占める割合が3割を超えて最大の供給国となった。しかし、2024年1月は2023年のピーク時の35%に減少。インドの石油・天然ガス相は、「私たちは最安値で(国内に)エネルギーを供給しなければならない」と価格重視の姿勢を示し、「調達は多様化しており、いまや39ヵ国から輸入している」と語った。
飯田)インドはエネルギー需要が旺盛な国ですよね。
中川)ロシアから安い価格で輸入しているため、日本でも「インドは敵なのではないか?」というような話がありました。ロシアに利することを行っているのは間違いありません。その批判をずっと受けながら続けてきたのです。
ピーク時から35%減少しているにすぎない
中川)「35%減少」となっていますが、ウクライナ侵略が始まる前までは、ほぼないような状態でした。それが一気に200万バレルくらいまでいったのです。いまはピーク時の35%減少にすぎません。侵略前に比べれば相当な数字です。それに対して、「私たちは最安値で国内にエネルギーを供給しなければならない」という言葉は、何の言い訳にもなっていないですよね。
飯田)むしろ赤裸々に「安いところから買う」と語っています。
中川)インドは総選挙が近付くなかで、何でも争点になり得るため、与野党の叩き合いのネタになる可能性もあります。大きく変化させてしまうと、「いままでやっていたのはミスなのか」と野党に言われるわけです。モディ政権があらゆることをプロパガンダに使うなかで、施策の変更ができないような状況にあることが考えられます。
インド総選挙の前哨戦となる州議会選は3州で与党・インド人民党(BJP)が勝利
飯田)選挙の行方はどうなのですか?
中川)州議会選では、いまのところ多くの州で予想以上に政権与党のインド人民党(BJP)がほぼ勝利しています。
飯田)モディ政権はまだまだ長く続きそうですか?
中川)可能性としては高いですね。相変わらず腐敗は酷いですが。
10年経ち、腐敗も出てきたBJP
中川)国民会議派が世襲ばかりだったところを叩いてきたのがBJPでした。その意味では「私たちは綺麗ですよ」と出てきたのですが、10年経過するといろいろな腐敗もあります。息子さんや娘さん、親族を徐々に要職につけていたり。
飯田)自分ではなく、親族にお金を還流できるような形で。
中川)しかも国民会議派だったころは比較的、社会主義的な感性だったのですが、BJPはナショナリスト的な性格を持っています。もともとモディさんがかなり寄っていた団体から出ているので、それ以外の宗教的少数派や民族への弾圧が強まっていると言われていますし、実際に法制度を見ていても、ヒンドゥー教以外に対しては厳しい傾向があります。
多数派のヒンドゥー教徒支持を狙うBJP
飯田)もちろん多数派としてヒンドゥー教徒はいますが、それ以外の人たちもそこそこの割合でいますよね?
中川)イスラム教徒やキリスト教徒、ゾロアスター教徒など、いろいろといます。民主主義国の弱さですが、相対的に勝てばいいのです。確かにヒューマニズムやリベラル的な考え方だと「少数派も重要」となりますが、選挙で一点突破するとなると、多数派の支持だけ集めた方がいい場合もある。民主主義のコストとも言えると思いますが、多数派だけに媚を売る政策の方が勝ちやすいのです。
飯田)利害調整をしなくていい。
中川)先日もラム寺院を建立した話がありましたが、イスラム教からすると「どういうこと?」となる話なのです。しかし、かまわず進めてしまえば、逆にヒンドゥー教徒からの支持が強まる。この辺りはカースト制も含め、かなりナショナリストの方向に進む感じがします。
日本はモディ政権の「さらに先の5年間」を見なければならない
飯田)インドと日本はどのように付き合っていくのか、またこの先の産業はどう見ていけばいいのでしょうか?
中川)ロシアのニュースの見出しでも、機会主義的な行動が外交的にも増えていくというところがあります。彼らも国内向けだけではなく、戦略的に動いてくると思いますが、BJPの安定した次の5年間があるとすれば、我々は「そのさらに先の5年間」を見なければいけません。モディ首相ではなくなった時代のことも外交的に考えなくてはいけない。しかし、一旦ナショナリストで固まってしまうと揺り戻しは強くなるので、その辺りの怖さはあります。権力が強すぎた場合、「転換する際のコスト」を我々は警戒しなければいけません。
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