『違国日記』 新垣結衣主演、人は分かり合えなくてもいい?

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【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第1187回】

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。

今回は、6月7日に公開された『違国日記』と『明日を綴る写真館』をご紹介します。

『違国日記』  (C)2024 ヤマシタトモコ・祥伝社/「違国日記」製作委員会

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『違国日記』 初めて会った姪っ子との同居生活が始まった

ヤマシタトモコ による同名コミックを実写映画化した『違国日記』。不器用な生き方しかできない小説家と、素直で人懐っこい少女。年齢も性格も生きてきた環境も違うふたりが送る、いびつで奇妙な同居生活を軸に、大人の本音と10代の揺れる心情を描き出したヒューマンドラマです。

繊細な心理描写と丁寧なストーリーテリングで定評がある瀬田なつき監督が、登場人物たちにそっと寄り添うような優しい物語を完成させました。

『違国日記』  (C)2024 ヤマシタトモコ・祥伝社/「違国日記」製作委員会

『違国日記』  (C)2024 ヤマシタトモコ・祥伝社/「違国日記」製作委員会

『違国日記』のあらすじ

気ままなひとり暮らしを続けている、小説家の高代槙生。

姉夫婦が交通事故で亡くなったことをきっかけに、15歳の姪っ子・田汲朝を引き取ることに。姉のことが大嫌いだった槙生は朝とは面識がなかったものの、葬式の席で心ない言葉を放つ親戚たちに苛立ちを覚え、半ば勢いで決めてしまったのだった。

こうして、ふたりの奇妙な同居生活がスタート。家事が苦手でマイペース。そして、人見知り。そんな槙生の生態に、専業主婦で綺麗好きな母親に育てられた朝は興味津々。朝にとって槙生は、初めて見るタイプの大人だった。

何もかもが対照的なふたりの生活は、戸惑いの連続。それでも少しずつ、距離が近づいてはいたが……。

『違国日記』  (C)2024 ヤマシタトモコ・祥伝社/「違国日記」製作委員会

『違国日記』  (C)2024 ヤマシタトモコ・祥伝社/「違国日記」製作委員会

『違国日記』のみどころ

主人公・高代槙生を演じたのは、『正欲』で女優としての新たな一面を見せた新垣結衣。髪の毛を無造作にまとめ、パソコンに向かう。部屋は散らかり放題で、食事も適当。どこか“やさぐれ感”がある女性を自然体で体現し、さらなる新境地を開拓しています。

そして田汲朝役には、今後の活躍が注目されている早瀬憩。思春期の多感な少女を情感豊かに表現。フレッシュな魅力で観客を惹きつけます。

共演には夏帆、瀬戸康史、染谷将太、小宮山莉渚、伊礼姫奈、滝澤エリカ、中村優子、銀粉蝶など、実力派から期待の若手俳優までズラリ。

槙生と朝。ふたりの関係性はもちろんのこと、彼女たちを取り巻く人々の人間模様にも注目です。

『違国日記』  (C)2024 ヤマシタトモコ・祥伝社/「違国日記」製作委員会

『違国日記』  (C)2024 ヤマシタトモコ・祥伝社/「違国日記」製作委員会

誰もが多かれ少なかれ感じている、生きづらさ。他者との距離感の保ち方について、実は密かに悩んでいる人も多いはず。そんな人にとって、この映画は、心の中にある“もやもや”を掬い取ってくれるような作品になるのではないでしょうか。

本作の中でとりわけ印象的なのが、槙生が朝にかける言葉の数々。「あなたとは分かり合えない」なんて言われてしまうと、なんだか冷たく聞こえてしまいますが、そもそも人間は、完全に理解し合えるものでもない。そうした前提をもとに、互いを知り、どう向き合っていくか……と考えてみると、心がふっと軽くなる瞬間があるかも。

槙生と朝が築いていく、ほかの誰とも違う、かけがえのない関係。それはきっと、「違国」だからこそ生み出せるのかもしれません。

『明日を綴る写真館』 (C)2024「明日を綴る写真館」製作委員会 (C)あるた梨沙/KADOKAWA 

『明日を綴る写真館』 (C)2024「明日を綴る写真館」製作委員会 (C)あるた梨沙/KADOKAWA

『明日を綴る写真館』 あなたの“想い残し”は何ですか?

さびれた写真館を営むベテランカメラマンと、彼の写真に魅了された気鋭カメラマン。58歳も年の差がある2人が共に成長していく姿を描いた『明日を綴る写真館』。

名バイプレイヤーとして知られる平泉成が、キャリア60年にして初主演。いぶし銀の渋い演技は絶品!

そして期待の次世代俳優・佐野晶哉とのコンビネーションも抜群!! 好対照な2人の持ち味が見事に溶け合った感動作です。

<作品情報>

『違国日記』  (C)2024 ヤマシタトモコ・祥伝社/「違国日記」製作委員会

『違国日記』  (C)2024 ヤマシタトモコ・祥伝社/「違国日記」製作委員会

違国日記
2024年6月 7 日(金)から全国ロードショー

出演:
新垣結衣 早瀬憩
夏帆 小宮山莉渚 中村優子 伊礼姫奈 滝澤エリカ 染谷将太 銀粉蝶 瀬戸康史

監督・脚本 : 瀬田なつき
原作 : ヤマシタトモコ 「違国日記」 (祥伝社 FEEL COMICS)
音楽:高木正勝
劇中歌:「あさのうた」(作詞・作曲:橋本絵莉子)
製作:太田和宏 小山洋平 桑原佳子 奥村景二
プロデューサー:西ヶ谷寿一 西宮由貴
共同プロデューサー:西田佑子
ラインプロデューサー:飯塚信弘 深津智男
企画:橋本匠子 撮影:四宮秀俊 照明:永田ひでのり 美術:安宅紀史 田中直純
録音:高田伸也 衣裳:纐纈春樹
ヘアメイク:新井はるか 音楽プロデューサー:北原京子
音響効果:岡瀬晶彦 助監督:久保朝洋 制作担当:桑原 学
製作:「違国日記」製作委員会
企画・制作・配給 : 東京テアトル
配給宣伝:ショウゲート
制作協力 : ジャンゴフィルム
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会
(C)2024 ヤマシタトモコ・祥伝社/「違国日記」製作委員会
公式サイト https://ikoku-movie.com/

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『明日を綴る写真館』 (C)2024「明日を綴る写真館」製作委員会 (C)あるた梨沙/KADOKAWA 

『明日を綴る写真館』 (C)2024「明日を綴る写真館」製作委員会 (C)あるた梨沙/KADOKAWA

明日を綴る写真館
2024年6月7日(金)から全国ロードショー

出演:
平泉 成
佐野晶哉(A ぇ! group)
嘉島陸 咲貴 田中洸希 吉田玲 林田岬優
佐藤浩市 吉瀬美智子 高橋克典 田中 健 美保 純 赤井英和
黒木 瞳 / 市毛良枝

原作:あるた梨沙『明日を綴る写真館』(BRIDGE COMICS / KADOKAWA 刊)
企画・監督・プロデュース:秋山 純
脚本:中井由梨子

プロデューサー:三田真奈美
協力プロデューサー:村川淳、林雪彦、木村康信、西沢桂
撮影監督:百束尚浩
照明:中尾圭
録音:戸部政明
制作:米加田樹
助監督:小林知史
スケジュール:島田晃
美術:津留啓晃
衣裳:重田沙織、熊川真桜
メイク:ナカヤスミク、在間亜希子
スチール:青木忠美
タイアップ:鈴木亜紀
宣伝プロデューサー:中島航
劇伴:大林武司
主題歌プロデュース:LUCA
主題歌:咲貴「瞬」
協力:Nikon、岡崎市フィルムコミッション、壱古コーポレーション、福山観光コンベンション協会、World Wide Array、万永、イマジカ、BEENS、青木写真館
協賛:テレビ愛知、ララシャンス OKAZAKI 迎賓館、
湖池屋、ホット・スタッフ、ゆうが
企画協力:PPM
配給:アスミック・エース
制作:ジュン・秋山クリエイティブ
製作:テレビ愛知、アスミック・エース、水府玉エステート、ゆうが、ヴァカーエンター、JACO 他

(C)2024「明日を綴る写真館」製作委員会 (C)あるた梨沙/KADOKAWA
公式サイト https://ashita-shashinkan-movie.asmik-ace.co.jp/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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