Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね【第1236回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
今回は、3月7日から公開の『35年目のラブレター』と『ウィキッド ふたりの魔女』をご紹介します。

画像を見る(全13枚) (C)2025「35年目のラブレター」製作委員会
『35年目のラブレター』妻に感謝の気持ちを伝えたい。手紙で……
読み書きが出来ない夫が、イチから文字を学び、最愛の妻にラブレターを書く。これは実在する西畑夫妻にまつわる本当のお話です。この感動的なエピソードはメディアで度々取り上げられ、創作落語になるなど、様々な形で広がりをみせてきました。
そして2025年、今度は映画となってスクリーンから感動を届けます。
『35年目のラブレター』のあらすじ
65歳の西畑保は、過酷な幼少時代を過ごしたがゆえに、読み書きが満足に出来ないまま大人になってしまった。そんな彼を妻の皎子(きょうこ)は、どんな時も寄り添い支え続けていた。
ある日、保は一大決心をする。愛する妻に、感謝のラブレターを書こうと。
定年退職を機に、保は夜間中学に通い始める。だが老齢のため物覚えが悪く、気付けば5年以上の歳月が流れていた。文字を書いては消し、書いては消し。それでも、少しずつ歩みを進めていく保。そして、ひたむきな保の姿を見守る皎子。
2人はすでに結婚35年目を迎えていた……。
『35年目のラブレター』のみどころ
主人公・西畑保を演じたのは、国民的スター笑福亭鶴瓶。メガホンを取った塚本連平監督は、脚本を作成する段階から保を演じられる俳優は鶴瓶さんしか考えられなかったとのこと。監督からの熱烈なオファーに応えるかのような、愛らしく繊細な演技は必見です。
そして妻・皎子役には、デビュー以来、第一線で活躍を続ける原田知世。小気味良い関西弁も耳に心地よく、明るくて優しさに満ちた皎子を体現しました。
また若かりし頃の西畑夫妻を演じたのが、重岡大毅と上白石萌音。出会いから結婚まで、そして保の重大な秘密を知ることになるまでの行程を情感豊かに演じています。共演には江口のりこ、徳永えり、ぎぃ子、本多力、辻本祐樹、安田顕、笹野高史、くわばたりえなど、個性豊かな面々が集結。
“関西あるある”なボケとツッコミもさりげなく散りばめられ、ほっこり笑えるシーンも見どころのひとつとなっています。
ささやかな日常の中にある幸せを丹念に紡ぎながら、観る人を温かな気持ちにさせてくれる本作。特に印象的なのが、主人公が手紙を書くシーンです。
覚えたばかりの文字を、ひとつひとつ丁寧に綴っていく。パソコンやスマホで文字を“打つ”ことが当たり前となってしまった昨今ですが、鉛筆と便箋を前に、己の気持ちと向き合う姿に心を掴まれてしまう人も多いことでしょう。
それと同時に、実在の西畑保さんが定年後に夜間中学で学び直したように、人生において“遅い”ということはないんだなぁということが、しみじみと伝わってきます。この映画は家族の物語であり、人が秘めている可能性の物語。老若男女問わず、あらゆる世代の人に観てほしい一作です。
『ウィキッド ふたりの魔女』音楽と魔法に心躍る傑作ミュージカル映画
魔法と幻想の国・オズを舞台に、2人の魔女の友情を描いた名作ミュージカルを完全実写化した『ウィキッド ふたりの魔女』。
誰よりも優しく聡明でありながら、緑色の肌を持つために周囲から疎んじられているエルファバ。そして、美しく野心家のグリンダ。オズにあるシズ大学で出会い、大学の寮でルームメイトとなった彼女たちは、最初は反発し合いながらも、互いの本当の姿に気づいていく。
ある日、偉大なオズの魔法使いから魔法使いとしての才能を見出されたエルファバは、グリンダとともにエメラルドシティへと旅立つが……。
主演を務めるのは、エミー賞やグラミー賞、トニー賞と数々の受賞歴を持つシンシア・エリヴォと、グラミー賞の常連かつ世界的なアーティストであるアリアナ・グランデ。パワフルかつキュートなパフォーマンスの数々には、心躍ること間違いなし。
本作は、「第97回アカデミー賞」において、衣装デザイン賞、美術賞の2部門で最優秀賞を受賞。細部まで作り込まれたビジュアルも見応えたっぷりですよ。壮大でファンタジックな傑作ミュージカル映画です。

(C)2025「35年目のラブレター」製作委員会
<作品情報>
35年目のラブレター
2025年3月7日(金)から全国東映系にてロードショー
出演:
笑福亭鶴瓶 原田知世
重岡大毅 上白石萌音
徳永えり ぎぃ子 辻󠄀本祐樹 本多力 江口のりこ 瀬戸琴楓 白鳥晴都 くわばたりえ 笹野高史 安田 顕
監督・脚本:塚本連平
音楽:岩代太郎
主題歌:秦基博「ずっと作りかけのラブソング」(UNIVERSAL MUSIC / AUGUSTA RECORDS)
書籍:「35年目のラブレター」著:小倉孝保 / 講談社
制作プロダクション:東映東京撮影所
企画:アットムービー
配給:東映
(C)2025「35年目のラブレター」製作委員会
公式サイト https://35th-loveletter.com/

(C)Universal Studios. All Rights Reserved.
<作品情報>
ウィキッド ふたりの魔女
2025年3月7日(金)から全国ロードショー
出演:シンシア・エリヴォ アリアナ・グランデ ジョナサン・ベイリー イーサン・スレイター ボーウェン・ヤン ピーター・ディンクレイジ with ミシェル・ヨー and ジェフ・ゴールドブラム
監督:ジョン・M・チュウ
製作:マーク・プラット デイヴィッド・ストーン
脚本:ウィニー・ホルツマン
原作:ミュージカル劇「ウィキッド」/ 作詞・作曲:スティーヴン・シュワルツ 脚本:ウィニー・ホルツマン
日本語吹替版:高畑充希 清水美依紗 海宝直人 田村芽実 入野自由 kemio ゆりやんレトリィバァ 塩田朋子 大塚芳忠 山寺宏一 武内駿輔
原題:Wicked
配給:東宝東和
(C)Universal Studios. All Rights Reserved.
公式サイト https://wicked-movie.jp/
連載情報

Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/