1994年、アメリカへ渡る。そこで知った人間としての「でかさ」-廣道純(プロ車いすランナー)インタビュー

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ニッポンチャレンジドアスリート・廣道純(プロ車いすランナー)インタビュー(2)】

このコーナーは毎回ひとりの障がい者アスリート、チャレンジドアスリート、および障がい者アスリートを支える方にスポットをあて、スポーツに対する取り組み、苦労、喜びなどを語ります。

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廣道純(ひろみちじゅん)
1973年、大阪堺市生まれの42歳。高校1年の時、事故で脊髄を損傷し17歳で車いす生活を始める。1994年から世界各国のレースに出場。1996年、大分国際車いすマラソンで日本時初の総合2位に輝き、2004年、日本人初のプロ車いすタンナーに。パラリンピックにも4大会連続で出場。陸上800メートルでシドニーで銀、アテネで銅メダル、北京、ロンドンでも入賞を果たす。現在も現役の車椅子ランナーとして活躍中。

-その後国内の車いす陸上大会に積極的に出場を重ねた廣道は、もっと上の目標、日本一、世界一を目指すようになる。陸上の車椅子レースに打ち込み、たちまち頭角を現した廣道選手、競合と呼ばれる先輩たちを目標とし、追いつき、追い越していったが、1994年、21歳の時に突然、アメリカ行きを決意した。

廣道 国内のトップ選手が集まるいろいろな大会で上位に入れるようになった時に、そろそろ日本一を目指したいな、自分も日本一になれるんじゃないかなと思った時に、日本一の選手を目標にしていたらいつまでも追いつかない、じゃあ、日本一よりもレベルの高い世界一を目標にしたら、日本一に追いつけるんじゃないかと思って突然、たまたまその当時世界記録を持っていたアメリカ人のジム・クナーブという選手に会いに行こうと決意して彼が出るかもしれないというボストン・マラソンにエントリーしました。
行ったら会えるんじゃないかという思いでアメリカまでノコノコ出て行ったら本当に世界チャンピオン・ジム・クナーブがその大会に出てたんですね。

-廣道はクナーブ選手とはその時が全くの初対面だった。英語もまだ片言だったが、廣道は気にせず、突進した。

廣道 世界チャンピオンがレース後、たむろしてしゃべっていたんですね。そこに「エクスキューズ・ミー」とカタカナ英語で割り込んで入って、「プリーズ・チーチ・ミー!」、もう、本当に誰でもわかる簡単な単語を並べて話したら、一人でノコノコとアメリカまでやって来たということをたぶん、不憫に思ったんでしょうね。
世界チャンピオンが名刺を差し出してくれて、「じゃあ、日本に帰ったら連絡して来い、イン・イングリッシュ」って最後に英語だぞ、日本語わからないから英語で連絡して来い、と言って名刺をくれたんです。

-感激した廣道は帰国後すぐに英会話学校に入学。クナーブ選手に国際電話をかけ、英語力がアップしていることをアピールすると、なんと、アメリカからファックスで練習メニューが届くようになった。

廣道 最初はファックスのやりとり。夜中に「ヘイ! ジュン今何時だ?」って時差わかっているくせに、夜中だというのをわかっていて起きろって電話をかけてきて、電話でアドバイスをもらうというやりとりが続きました。
そこから練習に来ないかと誘われるようになり、ホームステイでしばらくうちに来ないかっていうようなことで年に何回かアメリカへの行き来が始まったんです。

-クナーブ選手に教わったことで、最も印象に残っていることは?

廣道 世界チャンピオンがこれまで教えてくれた先輩たちと違うと思ったのは、スケールのでかさですね。
人としてのスケールのでかさ。日本人で英語もできなくてどこの誰かもわからないという無名の選手が「教えてくれ」と言ったことに対して、本当に連絡取り合ってきちんと教えてくれて、ホームステイで行った時には、「お前に教えたことを日本に帰国したら日本のみんなに教えるんだぞ」っていうくらい心が広かったです。
全部包み隠さず教えてくれて、それでも俺はお前たちに抜かれないぞ、という強さも同時に見せてくれていたので、「だから世界一なんだな」というのを思いましたね。

-車いすレースの世界チャンピオン、ジム・クナーブ選手の教えを受けた廣道は競技に対する考えも大きく変わった。

廣道 出会って一年後に自分の中でもすごく変わったんですけれども、世界チャンピオンのために、教えてくれたのだから速くなって恩返ししなくてはいけない。自分のために勝とうとそれまでは思ってたんですけれども、世界チャンピオンのためんに頑張らなくてはいけないと思うようになって、練習量も増えましたし、試合であきらめかかっていた時の考え方が、「ここであきらめたらいかん」という思いに変わったりもしました。

(4月25日~5月6日放送分より)

ニッポンチャレンジドアスリート
ニッポン放送 毎週月曜~金曜 13:42~放送中
(月曜~木曜は「土屋礼央 レオなるど」内、金曜は「金曜ブラボー。」内)
番組ホームページでは、今回のインタビューの模様を音声でお聴き頂けます。

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