中尾孝義、城島健司、掛布雅之、そして金本知憲。
かつてプロ野球界を沸かしたスター選手4人が手塩にかけて送りだした逸材が、きのう7日発表された5月の月間MVPを獲得しました。
育成経験がある野手としては史上初の快挙。
また、6日のオールスター中間発表でも、ヤクルト・中村を抜いてセ・リーグ保守部門の1位へ躍進、阪神の次世代のスター候補として、期待は高まるばかりです。
きのうのロッテ戦ではチームが敗れ、自身も4タコとはいうものの、原口の5月はすごかった。
打率はリーグトップの3割8分0厘、ホームラン5本、17打点は見事というしかありません。
2009年ドラフト6位で帝京高から入団。
プロ入りに際し、球団へ「ぜひ、獲ってほしい」と強力にプッシュしたのが、阪神の東日本担当・中尾孝義スカウトでした。
帝京高3年の夏に甲子園出場を果たした他は、これといった実績はありません。
天性の勝負強さ、強肩などとともに、中尾さんがアピールしたのは人間性です。
ただ、まじめというだけでなく、チームをうまくまとめていた。
そんなところも見逃さない。
2012年オフ、腰を痛めたことが原因で自由契約から、支配下登録された時も「ケガをしていても、頭は使える。やることはたくさんある。」とエールをおくっています。
野球を始めたのは小学4年生。
高校時代は、自宅がある埼玉県寄居町から2時間かけて通学しています。
勉強はもちろん、野球でも人一倍の練習をこなし、帰宅後には、お父さんが自宅裏につくった打撃ケージで、ティーバッティングを続けていた。
この時、パートナーをつとめたのはお母さん。
深夜まで原口家からは、打球音が響いていました。
一方、幸運だったのは、原口の入団時、城島が阪神へ在籍していたこと。
入団時は、城島2世という声もありました。
腰やひざを痛めて2軍でリハビリ中の元メジャーリーガーへ、原口は必死に教えを乞う毎日だったとか。
普通の若者なら気後れするほどのビッグネームです。
でも、「うまくなりたい」という一念が原口を駆り立て、いつしか城島と自主トレを行う関係になりました。
純粋で野球一途、平田コーチは「あんな好青年は見たことがない。結婚するのなら、あんな男がいい。」と笑いながら話すほどです。
今シーズン、1軍昇格時には、城島へ報告し、さらなる激励のメッセージを。
きっと「もっとうまくなる」と誓ったことでしょう。
加えて、掛布2軍監督の存在も大きかった。
マシン相手に必死でバットを振る原口に「マシン打撃では、フォームが身につかない。それなら、素振りをしたほうがいい。」とアドバイスを与えた。
今春のキャンプでは安芸組といわれた2軍スタートでしたが、掛布2軍監督の推薦に、金本監督がすぐさま応えた。
阪神ファンがいうところの、ツルの一声人事。
4月27日、3年ぶりに支配下登録へ復帰すると、当日には1軍初出場のチャンスを与えられ、初ヒットを放った。
翌日は初打点をマーク。
あとは、シンデレラボーイとして、レギュラーとなりました。
5月の24試合中、23試合でスタメンを確保。
今季の阪神のスローガン、超変革は原口のために用意したか-と思えるほどです。
(原文)青木政司
6月8日(水) 高嶋ひでたけのあさラジ!「スポーツ人間模様」