花粉症歴20年の筆者は、人間以外でも花粉による不快な症状が出るのか気になっていて、複数の獣医師に15年ほど、症例も含めて聞いてきました。
結論からいえば、猫や犬でも花粉症になります。ただし、その症状は人とは異なることも。今回は、これまでの取材から得たペットの花粉症についての知識をお伝えします。
くしゃみ、鼻水……!?
鼻水やくしゃみ、人によっては咳など、呼吸器に症状が現れることが多い花粉症。マスク姿でクシュクシュ言いながら動物病院に取材に行っては、「スギとヒノキ花粉の時期はツライんです。同じように花粉症で来院する猫や犬はいますか?」と聞き続けてきた筆者ですが、「ペットではまずいないね」という返答が、実は10年ほど前まではほとんどでした。
ところがここ5~7年くらいで、「花粉症の猫や犬も増えているよ」と聞くようになったのです。
とはいっても、人間のように呼吸器症状が出る犬はあまりいないそうです。くしゃみや鼻水の症状が出るとすれば、猫のほうが犬よりは多いとか。
猫や犬の花粉症は、主には皮膚に症状が出るタイプがほとんどのようです。その診断は「花粉症」というよりは「花粉をアレルゲンとする、アレルギー性皮膚炎」と、多数の獣医師は下しているのが実際のところ。
人間同様、「アレルギー体質」のペットが増加しているのかもしれません。
猫や犬だって痒い!
人では花粉症によって目が痒くなりますが、猫や犬も目の周りの皮膚が痒くなるケースが少なくないようです。
目をショボショボしていたり、前足でこすっていたり、壁などに顔をこすりつけていたら、花粉症かもしれません。
眼球を引っ掻いてしまうと、結膜炎や角膜炎になる危険性があるので注意が必要です。
同様に、後ろ足などで体をかくのも、アレルギー性皮膚炎を発症したサインの可能性があります。
皮膚炎は早期に治療を開始して、悪化させる前に痒みによるつらさから愛猫や愛犬を一刻も早く救ってあげたいもの。かくことで皮膚の炎症が強くなると、細菌などの二次感染の原因にもなります。ペットに痒がっている様子が見られたら、早めに動物病院へ連れていってあげてください。
アレルゲンを探る血液検査をすると、スギ、ヒノキ、ブタクサなど、複数の植物の花粉がアレルゲンだと特定される犬や猫も珍しくないと聞きます。
とくに、猫はブタクサのアレルギーが多いようなので、晩夏から秋ごろの花粉症にも注意したほうが良いでしょう。
ちなみに筆者も、呼吸器症状に加えて皮膚症状が出るタイプ。花粉の飛散開始をまずは頭皮がキャッチするようで、頭皮が痒くなります。皮膚科で相談したところ、低刺激性のシャンプー剤の使用と保湿による頭皮ケアが重要なのだとか。
猫や犬も同様で、保湿によって皮膚のバリア機能を保ち、アレルゲンの皮膚への侵入を減らすのが効果的だそうです。ペットでもセラミド配合の保湿ローション(ペット用)を使ってのスキンケアを推奨する獣医師も少なくありません。
いわゆる「免疫力アップ」によって、アレルギーに強い体づくりも有効です。獣医さんと相談しながら、腸内環境を整える乳酸菌などを取り入れる選択肢もあるでしょう。
ペットのための花粉対策とは
アレルギー対策といえば、まず、アレルゲンとの接触を遠ざけること。
終生室内飼育の猫といえど、外出帰りの飼い主の髪や衣服についた花粉や、部屋の窓から風に乗ってやってくる花粉に接触しないわけにはいきません。
もしペットに花粉のアレルギーがありそうだったら、飼い主さんは玄関前で可能な限り花粉を落としてから入室しましょう。花粉が付着しにくい素材のコートや洋服をチョイスするのもおすすめです。
窓を開けている室内で過ごす猫や、散歩に出かける犬には、洋服の着用も有効策のひとつ。ナイロン素材など、花粉を通しにくい素材を選ぶのが賢明です。可能であれば、花粉の飛散が少ない時間帯に換気や散歩をすると、なお良いでしょう。
ペットが過ごす部屋には、花粉除去機能のついた空気清浄機を使ってあげたいものです。
ひとつにアレルギー反応が出ているときは、ほかのものにも敏感に反応しやすいといいます。人間も含めて、ハウスダストやホコリなどにも、ふだんは反応しなくても急に反応する例が少なくないとか。花粉症の時期は、こまめな掃除も大切になりそうです。
掃除といえば、「床掃除用の使い捨てシート」を使って愛猫を撫でて、花粉を除去しているという友人を知っています。これはなかなかの花粉対策だと、感心しました。
アレルゲンとするペットも珍しくない、スギとヒノキの花粉シーズンはこれからが本番。
今年はぜひ、ペットの様子もよく観察してあげてください。
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ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!
著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。