3月6日に開幕するWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)。現役メジャーリーガーでメンバーに加わったのは、アストロズの青木1人。やや、小粒な印象は否めないところでしょう。
守りのスタイルを表明しているだけに、キーマンといえば、御年、78歳の権藤投手コーチというのがもっぱらの評判です。
権藤コーチは、「相手が強くなればなるほど燃える」のが身上。これまでにコーチのオファーがあったのも、近鉄、ダイエー、横浜とすべてチームが低迷していた時期。「こんちくしょうの気持ちを常に持っていた」という反骨の野球人です。
侍ジャパンの投手コーチに就任して約1年。きっかけは意外なことでした。2015年プレミア12の準決勝で、韓国によもやの大逆転負けを発した際、権藤さんは評論家。新聞のコラムなどで、ありとあらゆる大批判を展開しました。おそらく、歯に衣を着せぬ物言いが届いたのでしょうか。今回、WBCコーチのオファーとなりました。
権藤コーチにしても、日の丸を背負うことは初体験。独自のダンディズムでいつもクールです。しかし、孫以上の年齢差がある大谷、菅野など、ゆとり世代の投手のハートをアッという間につかんでしまった。とにかく信奉者が多いことに驚かされます。
自身は現役時代、中日で1年目の61年、69試合に登板して35勝19敗の成績で、新人賞、沢村賞に輝きました。新人としては史上初。しかもそれ以降、35勝以上をあげた投手は出ていない。連投に次ぐ連投で権藤、権藤、雨、権藤の流行語が誕生したのは、有名な話です。
「(当時の監督)濃人さんは、戦争で召集体験がある。ぼくだって、望んで投げていたわけではない。命まではとられない。稲尾や杉浦だって、完投した翌日も投げているだろう、と言われてきた。もし、あの時、ぼくがコーチなら絶対にあんなローテーションで投げさせはしない」
と振り返っています。また、酷使が響いて現役生活が短かっただけに、「厳しいトレーニングはイジメだ」が持論。
今回、当初はメンバーから落選することが濃厚だった阪神・藤浪を「絶対に入れてほしい」と強力にプッシュしたのも権藤コーチだったとか。藤浪もチームのコーチの言うことは、あまり聞かないと評判ですが、「すごく興味があります」と、権藤コーチにだけは素直に耳を貸す。この起用が吉と出るか、凶と出るか。
権藤コーチは、
「抑えのピッチャーこそ、全幅の信頼を置かなければいけない。替えては絶対にダメ。もし、打たれたら、監督、コーチの責任ですよ」
と話す。藤波を抑えに使おうということでしょうか。
いずれにしても、さい配など、指導力を不安視される小久保監督だけに、権藤コーチの存在は頼もしく映ります。
1月26日(木) 高嶋ひでたけのあさラジ!「スポーツ人間模様」