結びの一番は、日本中のため息が漏れるような、あっけない幕切れでした。立ち合いから防戦一方で、あっさりと押し出されました。
勝った嘉風は「仮定の話」と前置きして「左が使えないのでは」と話しています。
春場所で負傷した左大胸筋と上腕にはテーピングを施され、かなり痛々しい姿でした。
稀勢の里は、
「相手が強いから負けたんじゃないか。相手が上回った。」
と振り返っています。大関時代は、負ければ無言が当然。貴乃花や朝青龍など、歴代の横綱も、敗戦の際にはしゃべらないがお決まりでした。
囲み取材で口を開いたことが、この日、一番のニュースだったかもしれません。
普段はけっこう、じょう舌です。
顔なじみの担当記者へは、
「どうして、毎日、同じことばかりを聞くの。」
と笑いながら話すこともあります。
ただし、横綱へ昇進後は周囲が気を遣って、取材中でもこのあたりで-と打ち切ってしまうことが…。
稀勢の里はもっと話をしながら、コミュニケーションを図りたいという、見かけとは対照的な一面があるのです。
2012年初場所で大関へ昇進後、33場所で初日の敗戦は6度。内、3度は9勝6敗で、14年初場所は、7勝8敗と負け越しています。
過去のデータを見ると、スタートでつまずくと良くありません。
西岩親方(元関脇、若の里)は、
「残念。横綱本人が関取衆と稽古をして(出場するか)オッケーを出した。だから、けがは理由にならない。関係ないでしょう。でも、あと1週間、(初日までに)欲しかった。」
と本音を語っていました。いくら、部屋で調整をしていたといっても、リハビリ程度の内容で、関取衆とは、実質5日間の稽古をしただけです。
急仕上げは否めなかったが、言い訳はできません。
もし、今日2日目、連敗するようなことがあれば、休場する可能性もある。
そんな事情を考えると、先場所の千秋楽以上にプレッシャーがかかる一番。
相手はこれまで、17勝3敗と分がいい、東2枚目の隠岐の海ですが、生命線の左を使えるかが、カギになります。
5月15日(月) 高嶋ひでたけのあさラジ!「スポーツ人間模様」